~入学式~
話は少し飛んで、学園の中等部に入学する話です!
時間の流れとは速いもので、もう学園に入学する年になった。
「ヴァレンティーナ様、起きてください」
私は、オリアナの起こす声で目が覚めた。
今日はビビアント学園の入学式。
前世でいう中学校の入学式だ。
入学するちょっと前に、家庭教師の先生に終わったのは、この学園の仕組みについて。
ここ、ローヴァン王国では、貴族の子供たちは、ビビアント学園に行くことになっている。
中等部と高等部があり、中等部は13才からで、
高等部は16才からだ。
貴族の子供たちは、高等部は、義務づけられているが、私が通い始める中等部は別に行かなくてもいい。
貴族は、たいてい家庭教師を雇っているからね。
ちなみに、高等部は貴族でなくても、何かに秀でていて、国の許可を貰えれば、通うことができる。
オリアナも許可をもらって、今は15才だから、来年には高等部に進学できる。
設定忘れそうだけど、乙女ゲームのヒロインも私が高等部に入学するとき、同時に入ってくるはずだ。
そういえば、攻略対象の人が誰だかわからない。
いや、まあカーティス様は絶対だろうけど…。
自分で考えておいて、落ち込んでしまう。
とにかく、なんとかなるようにしないと…
「はやく支度を整えてください!」
考えようとしたところで、オリアナの雷が落ちた。
怖い…。
「わかりましたっ!」
「はあ、もう…。時間がないので、これは移動中に食べて下さい」
オリアナから、バスケットを渡される。
「これって、サンドウィッチ?」
「よくわかりましたね」
食いしん坊だな、と呆れた顔をされてしまう。
流石に匂いでわかったんじゃなくて、籠に入っているのと、軽さでわかったんだからね。
急いで玄関に向かい、馬車に乗る。
王都の中心地から少し離れたところにあるので、数10分で着く。
楽でいいね~。
今日の入学式は、前世の場合は、保護者同伴だけど、ローヴァン王国は、入学する生徒とその使用人だけ。
まあ、入学式といっても、軽く学園のことについて、説明されて、あとは資料をご覧下さいみたいな感じ。
その後は、普通にパーティーをする。
終わったら、寮があるから、入る人は、部屋に行って、制服に着替える。
寮に入らない人は、家に帰宅するみたい。
ちなみに私は、寮に入る。
そういえば、攻略対象のことだけど、カーティス様は絶対そうだろうし、他に思いつくのは、シル…シルヴェスターかな。
あと、この国には、第二王子、第三王子もいるから、多分そうなんだろう。
でも、問題なのが、第二王子のダニエル様は側妃の子で、第三王子のウィリアム様は、カーティス様と同じく、正妃の子で、どっちも同い年であること。
二人には、王宮に行ったときに、会ってるんだけど、なんかめんどくさそうな性格してた…。
失礼だけど。
考え事をしていると、着いたので、馬車から降りる。
周りにはたくさんの人がいて、立っているだけでも、気疲れする。
「えーと、中等部と高等部は授業を受ける校舎は別々。渡り廊下で繋がっているようです。入学式があるのは、体育館。これは、学園で一つだけで、そのあとのパーティー会場も一つしかないそうです。ちなみに、奥にある寮は、隣接してはいるものの、男女で分かれているそうです。」
オリアナがパンフレット的なものを見て行った。
「へえー」
「体育館はこっちです。ちゃんと着いてきて下さいね。終わったら、寮の部屋で待っているので。ちなみに、ヴァレンティーナ様のクラスはC組だそうです」
「わかったわ」
周りの目があるので、ちゃんとお嬢様言葉を使った。
めちゃくちゃ面倒だ。
「…えー、最後にー。皆さんは本校の生徒として、
誇りを持ち、学園の恥にならないように行動を心がけて下さい。以上で終わります。起立!礼!」
ハゲた校長の長い話が終わり、次はパーティー会場に行く。
皆、席を立ってぞろぞろと向かっている。
私も行くかー。
パーティーが始まった。
といっても、先ほどから、たくさんの人に話しかけられている。
すごい疲れるな…。
「ヴァレンティーナ様。お久しぶりです」
「あ、ウィリアム様。お久しぶりです」
「少々、お話をしたいのですが、よろしいですか?」
「はい、勿論」
第三王子のウィリアム様が来たので、話をしていた人に挨拶をして、その場を去る。
ウィリアム様に着いていくと、庭に出た。
「はあ…」
ため息を吐いたきり、話をしないので、沈黙が場を支配する。
「あの…」
「だるいわー」
「え?」
あまりにも気の抜けた返事に困惑する。
「疲れないの?」
「えー…」
「めんどくさくない?」
「えー…」
マイペース過ぎて、話に乗れない。
最初に会ったときですら、こんな感じだった。
一方的に話されるだけなので、ある意味面倒なのだ。
「ヴァレンティーナって名前、長いじゃん」
「あー、まあそうですね。両親につけてもらいましたので、気に入ってはいますけれど」
なんだ、名前の話かー。
「だから、ティーナって呼んでもいい?俺のことはウィルでいいから。あと、敬語も面倒だし、まあ、いつも通りで」
「は、はい…。じゃあ、ウィル…?」
「これから仲よくしような、ティーナ」
二人で握手をかわす。
何故かわからないけど、仲良くなった…?
「あれ、ヴァレンティーナ?」
「あ、シルだ。久しぶりー」
植物の影から出てきたのはシルだった。
隣にウィルがいたので、驚いたようだ。
「今取り込み中だったかな」
「別にたいしたことないよ」
「レンティーヌ公爵家のシルヴェスター様ですよね」
「はい、第三王子殿下。名を覚えてくれて下さり、光栄です」
「堅苦しい挨拶は、不得意でして。ティーナ同様仲良くしたいなと」
「ええ、是非」
「じゃ、シルって呼ばせてもらうから、俺のことはウィルで。普段通りに話していいから」
「では、ウィル。よろしくお願いします」
「こっちこそ、よろしくな!」
何でか息ぴったり、ハイタッチをしていた。
にしても、敬語から、雑な話し方への切り替え方が速いな…。
「そういえば二人は何組だったのか?」
ウィルに尋ねられる。
「私はC組だったよ」
「僕は、B組」
「へー。俺はティーナと同じでC組だったんだ」
「一緒で良かった。でも、シルとは離れちゃうのか~」
「残念なことにね」
「まあ、仕方ないな」
私の学年はA組からE組までの、5クラスがある。
クラスが多いから、知り合いと一緒になれただけでも、運が良いのかな。
「僕はそろそろ中に戻るけど、二人はどうする?」
「俺らは、終わるまでここにいるよ」
「そっか。じゃあ、またね」
シルは私達に別れを告げると、体育館に入って行った。
「ていうより、何でシルはなんで庭なんかに来たんだ?」
「モテるからじゃない?あれだけ外見が良いんだし」
「お互い大変だなー。俺もいろんな奴に話しかけられるし」
「あんたの場合、見た目がどうこうって問題じゃないでしょ」
「ひどいなー」
ウィルと他愛ない話をしているうちに、パーティーは終わった。
シルヴェスター・レンティーヌ
→レンティーヌ公爵令息・銀髪・碧眼・美形・
愛称はシル
ウィリアム・ローヴァン
→ローヴァン王国の第三王子・黒髪・青い眼・
カーティスとダニエルの弟・マイペース・
愛称はウィル