~お茶会~
次の日。
ぽかぽかと心地よい日差しが降り注いでいる。
こんな日はゆっくり昼寝する…
なんてことはなく、私達はお茶会の準備で大忙しだった。
「オリアナ、お菓子の準備はちゃんと出来てる?」
「ちゃんと指示はしたので、殆ど出来上がっている筈ですよ」
「意外と準備は順調ね」
テーブルや椅子のセッティングも終わり、もうすぐ昼にさしかかっている。
お菓子も大分出来上がっているようだし、屋敷に戻っても平気そうだ。
「じゃあ、中に入ろうかな」
私とオリアナは、屋敷の廊下を歩く。
「それにしても、ヴァレンティーナ様。よく思いつきましたね」
「我ながら凄いよね。お母様にも感謝してほしいくらいだわ」
うわ、自画自賛と呟いてるが放っておこう。
ここの公爵領では、あまり特産品がない。
というか、殆どない。
それでも、他で栽培しているものより、少し質が良いっていうのが多いので、今回はそれを使った。
例えば、テーブルクロスにはシルク、お菓子には蜂蜜など。
特別なものが大して何もないと思うと、
「なんか悲しい…」
地味に落ち込むヴァレンティーナであった。
昼食を食べ終えた後。
私達は公爵夫人達の来訪を待っていた。
お母様は優雅に椅子に腰かけている。
汗の一つもかいていないと思うと、苛立つ。
といっても、私も使用人に力仕事は任せてるから、汗はかいてないけどね。
「ねえ、母様。僕もいないと駄目なの?」
側にいたニコラスが言った。
ちなみにお兄様はというと、勉強があるのでお茶会には来ない。
ニコラスも本来ならいる必要はないけど、私は強制参加なので、ニコラスも強制参加だ。
「駄目だよ、ニコラス」
「可愛いからいなさい」
私とお母様は必死に止めた。
どちらもどうでもいい理由だ。
思い切り否定されて、ニコラスは膨れている。
「ちっ、最悪…」
ニコラスが小声で呟いていたが、気のせいだよね?
うん、周りにいる皆、何も反応してないから、気のせいだよね。
自問自答を繰り返している内に、公爵夫人達が来た。
「グランメル公爵夫人。この度はお招き頂き、有り難うございます」
「こちらこそ、わざわざご足労いただけて、光栄ですわ。立ち話もなんなので、どうぞおかけください」
完璧な猫かぶりで、お母様が挨拶をした。
こういうところは、凄いなー。
「レベッカ様。こちらの可愛らしい方々は?」
アンダーソン家のリリー様が言った。
「私の娘と息子ですわ」
「娘のヴァレンティーナ・グランメルと申します」
「ニコラス・グランメルです」
にっこりスマイル。
緊張したけど、ちゃんと言えて良かった。
「初めまして、リリー・アンダーソンです」
リリー様はお母様と仲がいいからかもしれないけど、陽気な雰囲気を醸し出していた。
「ソフィ・ガルシアと申します」
ソフィ様は、お母様達と歳が同じくらいなのに、すごい美少女だった。
しかも、肌が白くて、儚げな雰囲気だ。
「ジェシカ・レンティーヌですわ」
レンティーヌ家のジェシカ様は、というと、とにかく美人。
美しいとしか言いようがない。
「そういえば、私も息子を連れてきましたの。レベッカ様のお子様達とよかったら遊ばせて貰えないかしら?」
「あら、そうでしたの!是非遊ばせて頂きたいわ」
ジェシカ様の提案で、ジェシカ様の子供のシルヴェスター様と遊ぶことになった。
いたことには気づかなかったが、シルヴェスター様も子供だけど、なかなかカッコいい、というか美形だった。
そういえば、ゲームの攻略対象にいたような…、
と考える。
「シルヴェスター様、初めまして。ヴァレンティーナと申しますわ」
「ニコラスです。よろしくね」
間が開かないよう、すかさず挨拶したが、返事はなかった。
「……」
え!?
ニコラスと二人で顔を見合わせる。
未だに返事はない。
完全に無視だけど、私達に敵意はなさそうである。
どういうこと???
脳内はクエスチョンマークでいっぱいだった。
とにかく、ずっと無言という訳にはいかないので、話すことにした。
「シルヴェスター様は、確か私と同い年ですよね。あまり、年齢が近い人が周りにいなくて。
お話できて、嬉しいですわ」
「…」
えー!ガン無視!
「そうだね、姉さん。仲良くして欲しいな」
「…」
地味にショックである。
「あ、そうそう。このお庭の花。庭師の方々が端正込めて作ってくれたんですわ。綺麗ですよね」
「…」
「…そうだ。このお菓子、美味しいからよかったらどうぞ」
「ね、本当美味しいですわよ」
「…じゃあ、一つ頂きます」
焦りまくったが、話を変えまくった甲斐あって、やっと反応してくれた。
もぐもぐと食べている。
「どうですか?」
「美味しい?」
「…ホントだ、すごい美味しい」
笑顔で言った。
初めての笑顔!!
子供でも美形が笑うと、絵になっている!!
「このクッキーは私も大好きですの。公爵領にある、美味しい蜂蜜を練り込んでいて、程よい甘さでいくらでも食べられますよね」
私とニコラスももぐもぐと食べる。
う~ん、やっぱ美味しい!!
「あ、あの、ヴァレンティーナ様、ニコラス様さっきはすみません。よく考え事すると、周りの音が聞こえなくなって」
「いえ、全然平気ですわ。よかったら、私のことはヴァレンティーナと呼んでください。折角だから、お友達になりたいわ」
「僕も、ニコラスでいいから。あと、シルヴェスターって呼んでいい?それに、姉さんはいつもうるさいから、少し静かな方が落ち着くし」
え、うるさい?
よく言われるけど、そんなにうるさい?
「ふふっ、よろしくね。ヴァレンティーナ、ニコラス」
シルヴェスターの微笑みはいつ見ても、見惚れてしまいそうだった。
今回のプロフィール紹介はちょっと前に登場したあの人です!
カーティス・ローヴァン
→ヴァレンティーナの婚約者・金髪に青い目・子供の今でもイケメン