~甘くて苦い午後~
前回の話で字を間違えてしまいました…(^_^;)
あと、更新も遅くなってしまって、すみません…。
今回はそこまで重要でないので読まなくても平気です。
「ふわぁ~、眠い…」
ベッドに寝転がって、欠伸をする。
今は、昼食を食べ終えた午後。
二日前に王宮に行ってからというものの、刺激がなくて、面白くないし、暇。
沢山ある屋敷の図書室の本を見ていたけれど、計五時間も見ると、流石に集中力が消れて、飽きてくる。
「ヴァレンティーナ様、だらしないですよ」
そう言ったのはオリアナ。
呆れたような視線を投げかけてきた。
失礼だから、もう少し笑顔でその表情を隠せないかな…。
「つまらない、暇ぁー」
「知りませんよ」
酷いな。
オリアナはお父様とお母様、あとニコラスには、超丁寧に接するのに、お兄様や私に対しては遠慮が無い。
そういえば、私よりお兄様の方が、扱いが酷かったかも。
前にちらっと、見ただけなんだけど…
あれは確か、数ヵ月前。
お兄様がオリアナに勉強を教えてもらおうとしていた。
いや、うちに来ている家庭教師の人から、出された宿題を面倒だから、やって貰おうとしていた時だ。
「なぁ、オリアナ。ここのところ、意味わかんないから、教えてくれないか?ああ、口頭で説明されると訳わかんないから、この紙に式を書いて」
と、お兄様がオリアナに数式が書かれたであろう、紙を渡す。
「私は、教えることが下手ですので、他をあたって下さい」
お兄様とは幼馴染みだけれど、公爵家の長男なので、仏頂面ではあるが、どちらかというと遠回しに断りを入れる。
「お前、馬鹿じゃないだろ、俺より。だったら、大丈夫だ。父さんの執務室でティーが今日何をしていたか、長々とした説明をしていたじゃん」
「確か、まだ講師の方がいらっしゃると思います。そちらに訊かれてはどうですか?」
「いや、あの先生苦手なんだよ」
「では、図書室にその事に関する書物があったので、調べれば良いじゃないですか」
「俺、文章を読むの、苦手なんだよ」
「じゃあ、私が紙に式という文字を書いても難しいのでは?それより、私は忙しいので失礼します」
「おい待てよ。俺に勉強するより大事なのか?」
「はい、勿論。野鳥がこの時間帯になるとお屋敷に来るんですよ。その鳥にパン屑をあげに行きます」
などと、野鳥の世話の方がお兄様より大事だと言っていた。
その後、お兄様は宿題をやってもらえないことも、残念がっていたけれど、オリアナに野鳥以下だと告げらたことに気を落としていた。
「…もしかして、お兄様って、オリアナのことが好きなんですか?」
と尋ねたら、顔が赤くなっていた。
口では否定していたけれど、絶対にあれは好きでしょう。
一応、誰にも言わないで秘密にしておいた。
「そういえば、ずっと部屋にいるのも疲れるから、外に行こう!」
「はあ…。これまた急に仰りますね」
「別に良いでしょ。あ、準備よろしくね」
「はぁ…、わかりましたよ」
突然思い付いたことに、二度も溜め息を吐いていた。
それでも、支度を整えてくれたから、やっぱり優しい。
あまり、外に出歩いたり、しないから、楽しみだな。
ここ、ローヴァン王国の都、クレールをオリアナと一緒に歩く。
女子二人だと、危ないのでは?と思うだろうけれど、平民のそこそこ豊かそうな商人の娘の格好をして、お忍びで来ているから、そこまで危険じゃない。
それに、オリアナの剣術や武術はお父様の折り紙つきだから平気。
オリアナは勿論だけれど、私も剣を持っている。
といっても、短剣だけどね。
「あ、あったよ」
少し歩くと、お目当ての洋菓子屋、ソレイユがあった。
ここは、洋菓子を持ち帰ることも出来るし、その場でも食べられることができる。
美味しいし、価格もそこまで高くないから、平民層には大人気。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい!あら、ティーナちゃんとオリアナちゃんじゃないっ」
お店に入れば、リタさんが出迎えてくれた。
リタさんは、旦那さんとこのお店を経営していて、恰幅が良さげな体型で、気立てが良い。
最初に来たとき、愛称のティーと名乗っても良かったんだけど、バレたら不味いので、名前はティーナで通っている。
「ニーナ、ティーナちゃんとオリアナちゃんが来たわよ!」
ニーナはリタさんの娘。
スタイルも良く、綺麗な12歳だ。
「えっ!ティーナとオリアナが!?」
と、バタバタ足音を立てて来た。
見た目は大人っぽいのに、中身はかなり子供っぽい残念な子だ。
「ホントだっ、久しぶり~」
そう言いながら、私とオリアナに抱きついた。
オリアナをチラッと見れば、露骨に嫌そうな顔をしている。
眉ねを寄せて、目は笑ってないし、口元もひきつっているし。
オリアナがボディタッチを好きでないのはわかるけど、もう少し、その表情を変えた方が良いと思う。
「やめて上げなさい、オリアナちゃん嫌がってるでしょ。うちの子ったら、ごめんね~」
なんて言って笑っている母親のリタさんもどうかと思う。
苦しくなってきたところで放して貰い、席に着く。
「うーん、今日はどれにしよう~」
「何で毎度、迷うんですか?さっさと決めてください。次回食べれば良いでしょう」
唸っている私に辛辣な言葉を言ってきた。
「次回がいつになるかわからないでしょ?それに、全部食べたくて、一つに決められないの」
「太りますよ」
「うん、分かってる。あと、金銭面にも余裕無いから、諦めざるを得ないのよ」
わかる?と訊けば、 いえ、全く、と返された。
本当に全部食べたいのに。
私、甘党だし。
「よし、決めた!すみません、」
メニューが決まって、近くにいた店員さんを呼ぶ。
「チーズケーキをお願いします」
「あと、クレームブリュレとマカロンのバニラ二個で」
「チーズケーキとクレームブリュレ、マカロンですね、畏まりました」
そう言って、店員さんは厨房の方へ行った。
「ていうより、ティーナ様。結局一つではなく、3つも注文してますけど」
「いや、マカロン小さいから…」
「その割には糖分高いですよね」
うっ、ちょっとへこむ。
「はい、お待たせ~。チーズケーキとクレームブリュレとマカロンのバニラ2つです。あと、紅茶ね」
「ありがとうございます」
「美味しそう」
このお店では、嬉しいことに、注文をしたら、紅茶かコーヒーがカップ二杯分まで、無料なのだ。
マカロンを口に含めば、甘い味が中に広がる。
美味しい…。
「そういえば、あのピンク色の髪の店員さんって、新しい人?随分と若いけれど」
「そうよ、名前はメルで、年は私やオリアナと同じだわ。彼、外見は良いけど少し派手めでしょ?でも、実際は凄い真面目なのよね~。それに、誰に対しても、優しいし」
「へぇ~」
それにしても、変わった髪色だな。
目は普通の青だけれど、髪はふわふわとしたピンク色。
お菓子にこういうのがありそう…。
「いい加減、変なこと考えるのはやめてください。どうせお菓子でしょうけれど、もう少し表情を隠す努力をしては?」
「えー、オリアナも同じよ。だって、顔が怖いもの。笑ったら良いのに…いや、何でもないです」
途中から、いつにも増して、無表情になって、睨まれたから、笑って誤魔化す。
「…っぷ、二人とも本当に仲良いわね。大道芸の人達みたい」
「心外ですね」
「面白い?じゃあ、これからも頑張ろうかなっ」
「どうぞ、お勝手に」
塩対応だ。
酷い…。
「じゃあ、また来るね」
「ご馳走さまでした」
そう言って、ソレイユを出る。
「美味しかったねー」
「そうですね」
「次、どこ行く?行きたい場所って無い?」
「ティーナ様のお好きなところで構いませんよ」
「うーん、じゃあ、食べ歩き!」
「は?まだ食べるんですか?」
オリアナが鳩に豆鉄砲を食らったような顔をする。
この顔はちょっと新鮮だ。
「オリアナはもう、食べられない?」
「少しなら平気ですけれど…」
私を見た。
大丈夫ですか?っていう目をする。
「私は全然平気だし、行こうか!」
全く…と呟く声が聞こえたけれども、気にしない。
お金も実はまだ存分にあるから平気。
「クレープが売ってるっ!あと、アイスとジェラートもっ!それに、チュロスとシュークリームがっ!」
歩き続ければ、スイーツが売っているお店がかなりあるところに来て、好きなものを見つけた。
一度では無理なので、先に溶けやすい、チョコ味のアイスとバニラのジェラートを頼む。
食べ終えたら、その他も。
オリアナはというと、カップの抹茶アイスを食べていた。
ちなみに、私はコーンね。
「う~ん、美味しいっ!」
「良かったですね。でも、夕食が胃に入りきらなくなりますよ」
「まだ全然食べられるから、その心配は無いよ」
「お前、本当、良く食べるな」
「凄い量ですね」
新しく、聞き慣れた二つの声がした。
その方向を振り向けば、藍色の髪に赤い眼をした少年と、茶髪に青色の眼をした少年が立っていた。
お兄様と…カーティス様だ。
ていうより、この二人暇なの?
「お二方は暇なんですか?もう少し勉強した方が良いと思いますけれど」
うわ、直球!
オリアナは私の思っていたことを、権力のある二人に向かって、涼しい顔で言い放った。
オリアナって、神経が図太いかも。
「お前、失礼な」
「お兄様、もう少し、優しい言葉を言った方が効果的だと思います」
「そうですよ、もう少し頭を回転した方が良いですね」
「お前ら、茶化すな!」
「そんなつもりはありません」
お兄様は少し顔が赤く火照った。
カーティス様はこの恋を知っているみたい。
まあ、端からずっと見ていれば、直ぐに気づくか。
「あー、グリフィン様、頭良くないですからね」
何気なく発言したであろう、オリアナの言葉にカーティス様と顔を見合せ、お兄様を見る。
そうすれば、死んだ魚の目をしていた。
この一言でこんなに傷つくとは…。
可哀想。
「あ、もう行きますね。楽しんでください」
微妙な空気になったけれど、お兄様は話せない状態なので、カーティス様が連れていってくれた。
優しい友達がいて、良かったですね。
そう思った。
「グリフィン様、平気ですかね?突然、あんなになって。体調悪いんでしょうか?」
「もぐもぐ…そうかもね、精神的ダメージも受けたみたいだし」
オリアナの鈍感過ぎる発言に、適当に受け答えしておいた。
普段はそうでなくても、恋愛だと、鈍いのか…。
オリアナって…。
しばらくすると食べ終わり、特に行きたいところもないので、帰ることにした。
お兄様の恋。
成就すると良いですね。
帰り道で、そう願うヴァレンティーナだった。
グリフィン・グランメル
→ヴァレンティーナの兄・藍色の髪に赤色の眼・
王太子の従者をしていて、幼馴染み
ニコラス・グランメル
→ヴァレンティーナの弟・可愛い、将来はイケメンに・金髪翠眼・性格悪め
二人とも、ヴァレンティーナとは二歳差です。
あと、やはり年齢が低すぎるので、また変更させていただきました。