あなたはだれ?
「おーい!」
男の声がむなしく響く。
視界を見渡すと、辺りは闇に包まれており、手足は動かなかった。
男の五感は弱々しく、耳を澄まして聞こえるのは周期的な反復音だけだった。
それは一定の速度で刻んで心地よく、男の不安を沈めた。
だが、反比例するように男の手足の感覚はだんたんと薄れていった。
寒気が増している。絶望が近づいている。
「これじゃあ、無人島と変わらない」
皮肉が出る。それでも、まだ希望はあるはずだと切望する。
「おーい! だれかー! だれかいませんかー!」
だれも……いないのか。
と、助けを諦めそうになった瞬間、男の身体に温かなものが流れ込んできた。
それは温かくて、優しくて、人の温度を感じさせてくれた。
「間に合いましたよ」
病院の手術台で男が輸血を受けている。
救ってくれたのは、献血をしてくれたあなたのおかげだ。