第九話
ぼんやりと外を眺めていると、ヒラリと蝶が目の前を横切った
フワリ、ヒラリと少し離れたところを飛び回っている蝶を見ているとジリジリと入口から体が外に出始めていた
そこへ、二匹目の蝶が飛んで来て鼻の上に止まった
捕まえようと前足を動かすとヒラリと飛んで行ったのを見て、自然に体が動いて蝶を追いかけて外に駆け出した
しばらく追いかけまわして結局見失い走って喉が渇いたので川辺で水を飲んでいると、何ともいえない鳴き声が聞こえた後自分に向って勢い良く駆けよって来る何かを見つけた
思わず後ずさると後ろ足が水に触れ、その冷たさに思わず叫び声を上げた
慌てて川から出ると、すぐ近くで荒い息遣いが聞こえた
何故か恐ろしくなって急いで駆け出したが、すぐに追い付かれて飛びかかられる
一度は何とか躱したが、すぐに圧し掛かられてしまった
必死にジタバタ手足を動かしていると首の後ろに噛みつかれ、その瞬間体の力が抜けた
突然、体の上にあった重みが消えた
「また、お前か!」
「そっちこそ!」
怒鳴り声が聞こえた後、急いで声のした方を振り向くと喧嘩が始まっていた
決着は呆気無くついた
顔に傷のあるのが情けない声を上げて満身創痍で逃げ出して行った後、フワフワの毛に突進すると何故か荒々しく全身舐めまわされた
「俺が折角・・・」
あらかた舐め終わると何か呟いたが聞こえなかったので、取りあえずフワフワの毛に額をこすりつけた
お日様の匂いを嗅いでいると体がムズムズして来たので、フワフワの毛に体をこすりつけた
あまりの心地良さに思わず声を上げると、唸り声が聞こえると同時に圧し掛かられた
あっという間に首の後ろにかみつかれ、次いで来た痛みに首を振って暴れると目の端にフワフワの前足が見えた
フワフワの前足に噛みつくと口の中に血の味が広がり、頭の上から小さいうめき声が聞こえた
体が離れた瞬間、背後に爪を出した本気のパンチをくりだしたが、サッとかわされ走り去って行った
しばらくすると水の音が聞こえて来た
体を舐めて綺麗にしていると、自分からふわりとお日様の匂いがした