第八話
何だかムズムズして目を開けると、入口から光が差し込んでいた
欠伸をしながら伸びをする
不意に隣でまだ丸くなっているフワフワの尻尾がピクリと動いた
最近は暖かくて寒さで目が覚めることも無くなってきた
寝る時にベッタリくっつくと尻尾で追い払われ、仕方ないので少しだけ離れて丸くなるのだが、すぐに寂しくなってそっと尻尾だけ近づけた
それなのに、すぐに気付かれて尻尾で払われてしまいどうすることも出来なくて、尻尾が力無く地面に落ちた
中々眠れなくてもぞもぞと体を動かしていると、隣から尻尾で地面を叩く鋭い音が聞こえて来た
「ご、ごめんなさい」
小さく謝ると情けなさで耳が後ろに倒れた
「全く、暑いだろ」
少し優しい低い声が聞こえると同時にフワリと空気が動き、背中がほんのり温かくなった
慌てて隣を見ると、すぐ近くにフワフワな毛が見えた
「さっさと寝ろ」
「うん!」
ぼんやりと寝る前のことを思い出しながら、フワフワの尻尾を見つめているとやはり何だかムズムズして来た
地面を転がりまわって気を紛らわせていると、いつの間にか起き上がってこちらを見ていた目と目が合った
「しばらく、外に出るな」
「なんで?」
訳が分からなくて聞き返すと、フワフワの尻尾をゆっくり動かしながら不機嫌そうに目を細めた
「どうしてもだ」
「・・・わかった」
ジィっと見つめられて渋々返事をすると、頭を軽く舐められた
さっと離れて行くのが物足りなくて、思い切りフワフワの毛に突進した
お日様の匂いを思い切り吸い込んで額をこすりつけていると、前足で邪険に払われた
「狩りに行ってくる、外に出るなよ」
文句を言おうと顔を上げると、もう一度外に出ないようにと言い聞かせられた
「・・・わかった」
外に出られないのは悲しかったが、いつも以上に一緒にいてくれるのが嬉しくて、その日はたいして気にならなかった
次の日も同じように念を押されて、ゴロゴロと地面を転がって気を紛らわせていると目の前をヒラリと蝶が横切った
どうやら、迷い込んで来たようだ
嬉しくなって追いかけまわしている内に入口近くまで来てしまい、追いかけていた蝶はヒラリと外に飛んで行ってしまった




