第七話
「さっさと答えろ」
さっき後ずさって出来た距離をあっという間に詰められる
「えっと、狩りの練習してたら真っ直ぐな尻尾の・・・に尻尾が短いって笑われて悲しくなったから花を見に行ったら、大きな耳の・・・に耳が小さいのは可哀想ねって言われて悲しくなって走り回ったら喉が渇いて噴水に水を飲みに行ったら、キラキラの目の・・・に体中の匂いを嗅がれた後、後ろから押されて噴水に落ちたの」
「う・・・、何でそれを言わない!」
鼻に皺を寄せて牙を見せながら怒鳴られた
「だって」
物凄く怒っているのが分かって悲しくなって視線を下げると、足元の地面が僅かにえぐれていた
「あいつらめ、俺に直接言えば良いのに・・・」
「やっぱり、昔皆と・・・」
「おい、俺の質問に答えてないぞ」
「え?」
反射的に下から恐る恐る顔を見上げると、呆れたような低い声が聞こえた
「俺に怯えてどうするんだ」
優しく頭を舐められてプルプル震えていた体から力が抜けて、喉が鳴った
「で、お兄ちゃんっていうのは?」
「えっと、噴水から上がって水を払って、乾かしている時に会ったの」
「大変だったな、で?」
言葉の合間に優しく頭を舐められて喉が鳴る
「体を乾かすために塀に上って日向にいたら、お兄ちゃんが寄って来て、『濡れているけど、どうしたの?』って聞いて来たの」
「それから、ちょっと話をして帰りも危ないからって途中まで送ってくれた」
「ん、それだけか?」
「そ、それだけ!」
「本当に?」
低い声と尻尾が地面を打つ音に、身がすくんだ
「えっと、八つ当たりされて可愛そうにって舐められてすりすりされたけど」
「何!?」
「気持ち悪くて顔を引っ掻いて、走って逃げちゃった、折角心配してくれたのに・・・」
「顔を引っ掻いた・・・やっぱり、あいつか」
「え、会ったことあるの?」
「縄張りをウロウロしてるやつがいたんで追っ払ったときに、何か言ってた気がするな」
「手加減なんてしなきゃよかったな、で、その後お前は何をしてたんだ?」
目を瞑って爪を出したり、引っ込めたりしながら呟いていたと思ったら、急に話しかけられて驚いた
「え?」
「ここら辺は俺の縄張りだ、お前から他のやつの匂いがしたら気付くさ」
「うっ、気持ち悪かったから川でバシャバシャしてから戻りました」
「あー、川に落ちたって言って、物凄く情けない顔して帰って来たときか」
「うぅ、乾かせなかったから仕方なく・・・寝床が湿ってごめんなさい」
「ああ、いいさ、へえー」
何故か急に機嫌が良くなって全身を舐めまわされたが、気持ち良くていつの間にかフワフワで温かいものに寄り掛かって眠ってしまった