第六話
「そろそろ、言っておかなければいけないことがある」
姿勢を正して座り、ジッとこちらを見ながら真剣な顔をした
「気付いていると思うが」
「聞きたくない!」
穏やかな低い声を、大きな声出して遮った
「それでも、聞け」
静かなのに力強い声に、駄々をこねようと開いた口を閉じた
「それでいい、きっともうながくない」
「そんなの、分からない!」
堪え切れずに叫ぶと、頭を優しく舐められた
「ああそうだな、だがこう見えて結構生きているんだ」
「立派なおじいちゃんだけど、まだっ、痛い!」
前足で思い切り頭を叩かれて、涙目になる
「とにかく言いたいことは、さっさと一人前になれってことだ」
「一人前になれないから、ずっと一緒にいる!」
喉を鳴らしながら額を擦り付けると、馬鹿にするような、楽しそうな声が聞こえた
「全く、教えがいの無い奴だな」
悲しくなって耳を倒すと、フワフワの尻尾が優しく体に巻きついて来た
「きっちり生きろよ」
「一緒にね!」
「楽しいことは一杯あるぞ」
「へえー」
「例えばだな」
「真っ直ぐな尻尾の・・・とか、大きな耳の・・・とか、キラキラの目の・・・うわーん、おじいちゃんの節操無し!!」
「な、なんでそんなとこを・・・あいつか?・・・あ、いや今はそれは良いとして、誰がおじいちゃんだ!」
「痛い!」
珍しく焦ってぶつぶつ呟いているのをボーッと見ていたら、突然前足で頭を叩かれた
「で、その話を誰から聞いたんだ?」
「え?」
「どうせ、聞いたまま言葉の意味も知らずに言ってるだけだろうし・・・」
「えっとね、節操無しって言うのはね、甲斐性無しって意味で、地に足がついていないことだって、大通りのお兄ちゃんが言ってたよ!意味ちゃんと知ってる!!」
目を泳がせた後、顔を洗い始めたのを見ながらも一気に言い切るとバッと顔を上げた
「大通りは危ないから近づくなって言ったはずだ」
低い声と唸り声に思わず後ずさった
「で、お兄ちゃん?」
細めた目でジッとこちらを見つめながら不機嫌そうに尻尾で地面を叩いた