第二話
自分の行動を反省して落ち着いたら兄弟たちの所に戻るつもりで木陰に座ったはずだったのに、いつの間にか眠ってしまっていた
自分の周りの草が倒れていることに気付いて顔を近づけると兄弟たちの匂いがした
私がぐっすり眠っているのを見て狩りにでも行ったのかもしれない
私も狩りに行きたかったのに、置いて行くなんて酷いと尻尾で地面を叩いた
私だって一人で狩れる!・・・えっと、一人でじゃないな、手伝うくらいは!
あれ、おかしいな・・・思い浮かぶのは悲鳴をあげながら、兄弟たちに向って駆ける場面ばかりで地面を勢い良く叩いていた尻尾は段々と勢いを無くしていった
一旦落ち着くと喉の渇きが気になりだした
水を飲むために川辺に移動した
兄弟たちに言われたことを思い出しながら慎重に近づき水を飲んだ
水を飲み終わって顔を上げると、パシャっと水が跳ねる音が聞こえた
音のした方に顔を向けると川の中ほどにある岩の上に何かキラッと光るものを見つけた
良く見るとどうやら、魚が跳ねて岩の上に乗り上げたようだ
これなら私も狩れる!兄弟たちを驚かせてやろう!
一歩踏み出すと前足が川の中に入った
川の水の冷たさに、危ないからまだ一人で川に入ってはいけないと兄弟たちが怖い声で言っていたのを思い出した
思わず後ずさったが顔を上げると、岩の上でキラキラ光っている魚が目に入った
恐る恐る川の中に足を進めた
しっかり川底に足が届いているのを確認して、これなら大丈夫私も大きくなったと嬉しくなって叫んだ
でも川の中ほどにある岩にはまだ届かないので、岩を目指して走った
数歩走ったところで、突然川底が消えて冷たい水の中に沈んだ
無我夢中で手足を動かすと何とか顔だけ水から出すことが出来た
怖くて思い切り叫ぶと遠くから兄弟たちの声が聞こえた
「「「どうして!?」」」
普段濡れるのを嫌う兄弟たちがためらわずに川に向って走って来るのが見えた
「ご、ごめん、な、さぃ・・・」
必死に走って来る兄弟たちに謝ろうと口を開けば、水が口の中に入って来て苦しくなった
一生懸命に手足を動かしたけど段々岸は遠くなって、兄弟たちも見えなくなってしまった
冷たい川の水が毛の隙間からじわりじわりとしみこんで来て、寒くてたまらなくなった