第十九話
( なあ・・・ )
( そろそろ、気付けよ! )
( お邪魔しまーす )
そっと見上げてジィッと見つめると、嫌そうにしながらも抱き締めている腕の力を緩めてくれた
《いち兄ちゃん、にー兄ちゃん、さん兄ちゃん、久し振り!》
それぞれの顔みながら声をかけると、それぞれ少し驚いたような顔をした
( 分かるんだー )
《 そのままだね! 》
いち兄ちゃんは、つり目に無愛想な口元
にー兄ちゃんは、たれ目なのに眉間に皺があって、表情豊かな口元
さん兄ちゃんは、たれ目でいつも微笑んでいる口元
髪の色も、目の色も同じなのに全く雰囲気の違う整った顔が並んでいた
《 分かりやすくて、迷えなかった! 》
私の言葉に、3人揃って項垂れた
〈 もう、いいだろう? 〉
( はっ? )
( 何言ってるの? )
( 珍しく待ってたのにー )
《 もう少し、話たいな? 》
私の言葉に抱き締めている腕に僅かに力がこもり、悲しそうな顔になったのを見て何故だか嬉しくなった
ちらりと兄ちゃんたちの方を伺うと、完全にいじけてしまったいち兄ちゃんをにー兄ちゃんがなだめ、それをさん兄ちゃんがニヤニヤしながら見ていた
兄ちゃんたちがしばらくこちらを見ないことを確認してから、眉間に皺を寄せ始めてしまった私を抱き締めている人に視線を戻した
思わず緩んだ顔で見上げると、不機嫌そうに細めていた金色の目が驚きに見開かれた
《 ちょっとかがんで? 》
〈 あ、ああ 〉
首を傾げてお願いすると珍しく口ごもったが、すぐにお願いを聞いてくれた
確かこういう時に言う言葉があったのを思い出して声に出してみた
《 愛してる、ずっと一緒にいようね! 》
驚いて固まっている隙に、近づいていた顔に向って伸びをして口付けた
途端に恥ずかしさが込み上げて来て、すぐに離れて顔を隠すために抱き付いた
丁度目の前にいい匂いのする首が見えたので、ついでにすりすりしていると、我に返ったらしく力一杯抱き締められた
〈 先に言われてしまったけれど、俺も愛してる 〉
《 うん! 》
〈 ずっと一緒にいような! 〉
《 うん! 》
( うわあぁぁ! )
( 煩い!男だろっ! )
( 2人とも、泣き過ぎじゃないー? )
いち兄ちゃんの叫び声とにー兄ちゃんの怒鳴り声、さん兄ちゃんののんびりした声が聞こえた気がした