第十四話
優しい手と声、それからお日様の匂いに思わず喉が鳴った
ひとりになってから、初めて誰かに撫でられたのが目の前の人で良かったと思った
「ありがとう」
嬉しさを優しい手に額を擦り付けて伝えると、微笑んで去っていった
「楽しいことは一杯あるね」
撫でられた心地良さに欠伸が出た
ついでに軽く毛繕いをしていると、突然体が持ち上がった
「何!?誰!?匂いは風下からだったから仕方ないにしても、足音なかった!怖い!」
必死に暴れても逃げることが出来ずに、頭が真っ白になっていると後ろから声が聞こえた
「おい、野良」
その声も体の向きを変えられて合った目も、さっきより怖くは無かったが、楽しそうに冷たく光る目を思い出して体が硬直した
怖くて耳が後ろに倒れ、目を合わせていられなくて視線をそらすと抱きかかえられた
何をされるのか分からない怖さで体を固くしていると、優しく耳の後ろを撫でられた
気持ち良くて思わず体から力が抜けると、楽しそうな笑い声が聞こえて振り返ると優しそうな目をしてこちらを見ていた
目の前にあって思わず舐めてしまった指からは自分の匂いがしているから、さっきまで優しく撫でていたのは間違いなくこの人であっている
「もう怖くないから、もっと撫でて?」
そっと背中を撫で始めた手はやっぱり気持ち良くて、ついつい喉が鳴ってしまう
いつの間にかすっかり腕の中で寛いでいると、上から声が聞こえたので顔を上げた
「野良、うちに来るか?」
( 楽しいことは一杯あるぞ )
この人に付いていくことが楽しいことなのか分からなくて考えていると、顎を優しく撫でられた
「来るか?」
「撫でてくれるなら!」
心地良さに頭をこすりつけると、嬉しそうに笑った後ハッとした顔をして地面に降ろされた
どこからか布を出し器用にたたむと、情けない顔をしながら首に巻き付けた
「今はこれしかないんだ、すまんな」
布からふわりとお日様の匂いがして、思わず巻き終えて離れて行く手を舐めた
「さあ、行くか」
歩き始めた人の後をお日様の匂いに嬉しくなって、尻尾を立てて追いかけた