第十一話
「どうしたの?」
私の初めての発情期以来どうも様子がおかしい今は目の前で項垂れている、フワフワの頭を眺めながら首を傾げた
さっきまでいつも通り胸元の毛に顔を埋めてお日様の匂いを思い切り吸い込んだ後、すりすりと額を擦り付けていた
「あーあのさ」
頭の上から聞こえた戸惑ったような低い声に顔を上げると、目が合った
しばらくそのまま見つめ合っていると、鼻先をペロリと舐められた
嬉しくて尻尾をピンと立てながら、目の前にある少し高い鼻先を舐め返すと何故か項垂れてしまったのだ
確か一緒に昼寝をしていたはずなのに、心地良さに目を開けると私の毛繕いをしていた
獲物を狩るときはいつも以上に気合いが入っていて、大物を仕留めてくる
分ける時は大きい方を私に食べさせて、ジッと満足そうな顔をして見ている
時々は、額を擦り付けてくることもあるのだ!
それに、ベッタリくっついていても怒らなくなった!!(これ大事)
それに、それに!
ああ、これ以上は勿体ないから心に仕舞っておこう
低い唸り声が聞こえて来て、ハッと我に返った
「お前、何か良くないことを考えてないか?」
「え?毛繕い嬉しいとかベッタリくっつくの嬉しいとか」
「うわあぁぁ・・・」
「どうしたの?」
始めて聞く情けない声を上げてまた俯いたフワフワの頭を舐めると、勢い良く顔を上げた
「わっ」
「俺さ、今まで尽くされるばっかりだったから」
「あ゛?」
うっかり、威嚇音が出てしまったが、フワフワの尻尾が体を優しく撫でる様に動いたのでつい気持ち良くて喉が鳴った
「恥ずかしいけど、止められないものなんだな」
そのまま、頭を優しく舐められた
「あの時、通りがかって、気付けて、助けられて、本当に良かった」
「いつもずっとありがとう」
寄り添い合い、互いの体に尻尾を巻き付けてしばらくジッとしていた
昔母親に寄り添っていた時のように穏やかな、でも少し甘酸っぱい不思議な思いが心を満たしていた