第一話
目の前でじゃれあって遊んでいる兄弟たちをジッと眺めていると、穏やかな日差しと心地よいそよ風に思わず欠伸が出た
そろそろ決着がつきそうなので思い切り伸びをしてから声を上げた
「次、私の番!!」
じゃれあっていた兄弟たちが動きを止めると、こちらに集まって来た
「誰が遊んでくれるの?」
もう順番が来たのかと尻尾をピンと立てて兄弟たちを見上げた
「昼寝はちゃんとした?」
「良く寝ないと大きくなれないよ?」
「遊んで欲しかったら早く大きくなれよ」
兄弟たちが次々話しかけて来た
結局遊んでもらえないことに気付いて落ち込んでいると、兄弟たちが揃って私に背を向けた
「全く・・・」
「遊んだらちゃんと寝るんだぞ?」
「遊べばいいんだろー」
聞こえた声に思わず倒れていた耳を立てた
「ありがとう、お兄ちゃんたち!」
耳だけ私の方に向けていた兄弟たちの尻尾が目の前でゆっくり揺れた
「わーい」
簡単に捕まった尻尾に文句を言おうと顔を上げると、掴んだ尻尾の兄弟が前足で軽く頭を叩いて呟いた
「不意打ち・・・」
何故怒られたのか分からないので、今度こそ文句を言おうと口を開けると目の前を尻尾が横ぎった
先ほどと違い中々捕まらないので、気合いを入れて一鳴きすると兄弟たちが尻尾を自分の足元に巻き付けてしまった
「爪は駄目・・・」
「爪なんて出してない!」
「ほら、自分の手を見てみろ」
「あれ?」
優しく言われて自分の手を見ると、しっかり爪が出ていた
「すぐに夢中になって、爪出すよなー」
「ごめんなさい」
「まあ、間違いではないから・・・」
「うぅ、ごめんなさい」
「誰も血、出てないから大丈夫だぞ」
「うっ、お昼寝して来ます」
兄弟たちの言葉に、夢中になって尻尾に噛みついたことや思い切り爪を立ててしまった時のことを思い出して、急に居心地が悪くなり逃げるように兄弟たちから離れた
「気を付けて・・・」
「あんまり遠くに行くなよ」
「見えるところで寝ろよー」
後ろから聞こえる兄弟たちの声に適当に返事をした
「わかった!!」