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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

中学時代 ~異質を抱えて苦しむ少年~

作者: 滝瀬

 自分の異質さを理解できず中学に上がった一年目は、部活をしておけば人間関係がなんとかなると思い込んでいた。

しかし、周りは小学校の顔ぶれが多い上に同類が一人も存在しなかったのだ。

 一人だけ孤立したまま二年へと上がり、教室にいても趣味の読書に没頭するようになった。自分の異質さを薄々と自覚しつつ日々を過ごし、時には癇癪を起こして周りに迷惑をかけていた。

避けられている自覚があったので一人でいることが多く、独り言が多かったり思い出し笑いをしたりで「気持ち悪い」という印象ができあがってしまった。

 本を読んで描写される光景を思い浮かべて笑っているだけで、「本読んで笑うなんてキモい」と言われた。

タイトルに恋という文字が入っていただけで、「少女小説を読んでいる」と噂を広げられた。冗談のつもりだったのだろうが、酷く矜持を傷つけられた。ちなみに、その本は図書室に置いてあった児童文庫の推理小説。

 声のボリュームを絞っての独り言も「ボソボソ呟いててウザイ」と言われた。しかし、彼らは友人と話して声が大きくなっていくのに気が付いていない。声の壁ができて授業が聞こえなかったこともしばしばだ。

 彼らの言い分は「誰かと話しているならともかく」だ。それに対して思ったことは、「私語厳禁は常識」である。誰かと話していようがどうだろうが、基本的に授業中は喋ってはいけないと言われている決まりだ。

 自分の異質さに「どうして同じようにできないんだ」と自責し、そのことでストレスを溜め続けていた。

あるカウンセリングの施設で「他人とちょっと違うだけ」と言い聞かされ、「ただ多数に対して圧倒的に少ない」と言われて落ち着くことがせめての救いだった。はっきり指摘された方が何千倍もマシだったのだ。

 二学期に入ったある日、下校しようと廊下を歩いていたら同じ部活の同級生が向こうにいた。こっちを見て何かを企んでいる顔だったので、関わりたくなくて早歩きで通り過ぎようとしたら傘の先端で頬をつかれた。

走った痛みに一瞬は怒りを感じたものの、ふと頭が冷えて「相手をする価値なんて無い」と思って無視し、すぐに帰れる気分ではなかったので図書室へ行った。司書の先生が頬が腫れているのに気がつき、担任へと報告して同級生は怒られた。

彼の言い分は「当たる寸前に止めるつもりだった」だ。それを思い出して、「できもしないことをやろうとするな」と怒鳴ったこともあるが、それ以降は問題を起こさなくなった。

 三年になって独り言も減らし、たとえ何があっても「相手にする必要は無い」と考えて過ごすようにした。しかし、それで気を良くしたのか「俺らがストレス溜めてるの知らないやろ」と同級生が言うようになった。これに対して思ったことは、「こっちもストレス溜めているの知らないくせに、偉そうに言うな」だ。

 また「お前って成長してないよな」と言われたことがある。これに対しては何も見ていないとしか言いようが無い。むしろ、「お前たちの目は節穴か? そっちこそ成長して無いだろ」と言い返してやりたかった。

 授業中は一部の迫力のある教師の授業を除き、ほとんどがお祭り状態だった。一人のお調子者が雰囲気を掻き乱し、それに連れられて男子たちが騒ぐ。そして、それを囮にして女子達はヒソヒソと話をする。それが三年間続いていたのだから、彼らの方が成長していない。

 部活の帰りや授業中に、背後でヒソヒソと話をされるのを聞いては気分が悪くなった。遠まわしに蔑んでいるのだから性質が悪い。

 また、三年間の内で最も酷かった嫌がらせは二つ。

 一つ目は部活中に放置していた傘を折り曲げられ、使用できなくされたことだ。直接ではなく間接的な嫌がらせが怖かった。

 二つ目は水筒の中身を入れ替えられたこと。とてつもなく甘い何かを口にして驚き、気持ち悪くなって口をすぐに濯いだ。もし入っていたのが毒だったら、間違いなく死んでいたことを考えると怖かった。

 担任は生徒のすることには可能な限り関わらず、自主性を重んじるようにしていた。放任的と言っていいぐらいに最後まで対処しなかった。

 今思うに、僕のことを「問題児」を見ていたのだろう。相談に乗りはしても理解してくれていなかったように思う。

 人間は社会という群れを為す動物だ。自分たちと異質なものには、容赦なく暴力を振るうことができる。悪意を持つそれは言葉であり、行動であり、弱者は逆らえず耐えるだけである。

 三年間を耐え切り、高校に入った僕は対人恐怖に囚われていた。他人と関わることを恐れ、新たに三年間を過ごすことになる。

 そして、大学に入って少しずつ自分を変えようと努力を始めた。

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