0,始まりの光
この作品には、軽い暴力描写、性描写を含む場合がございます。
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拙い文章ですが、少しでも多くの方に読んでいただければと思います。
燃え盛る紅。
灰の匂いが、鼻孔を埋め尽くし、それ以外の匂いを全て消し去る。
――まだ。まだ人が生きているかもしれない。
自分の中で、既に消えかけている可能性にかけて、少年は紅の中を歩く。おぼつかない足取りで、既に息絶えかけている呼吸で、真っ白な頭で。彼はただひたすらに、歩き続ける。
こんな日だと言うのに、月は青々と輝きに満ちていて、まるで自分を嘲笑っているかのようにも思えてならなかった。
――こんなことになるくらいなら……。
後悔先に立たず、というのはまさにこのことだろう。
身にしみて感じる。
人の気配は、どこにもない。
少年は既に、諦めていた。
こんな炎の中で、生き残ってる者がいるはずがないと。
――僕に……僕に力があれば……。
ふわふわと、宙に浮くような感覚に襲われる。
次第に視界がかすみ、少年はふらりと足を縺れさせ、そのまま地面に叩きつけられた。
――もう……。これで、終わりにしよう……。
手の中に残る十字架を握り締めて、少年は意識を手放す。
直前、まるで、聖女のような白く光る少女の姿が少年の目の前を埋め尽くしたような気がした。
「もう、大丈夫」
その暖かさに包まれるように、少年は、静かに眠りについた。