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カオス
腐臭
銀の鋒と錆び付いた赤黒い液体
痛みも悲しみも愛も夢も彼等には残らない
「………殺されるくらいなら…殺してやる…」
影。微かな光の中で足掻くちっぽけなそれ。
透明な液体は出尽くした。
もう怖くない。もう恐ろしくない。
何が一番恐ろしいかと言われればこう言うだろう
自分が怖い
いつか自分は自分でなくなるだろう
混沌の世界に不した我に嘆き死すだろう
そしていつか呪い殺したくなる
愛するものを奪った命を守れなかった自分を
少女は金時計をしていた
腰まである白銀の髪を揺らして
真紅の瞳は鋭く 幼く あどけなく
だけど 躊躇わず貫いた 心臓はやはり赤く
曰く 彼女 紅姫と…。
「…東子」
細い黒糸がくすぐったかった。
唇が熱く残る 感触。人のもの。
少し甘い、メロン味のリップクリームだ。
「ごめんね 水君…おこしちゃったあ?」
彼女の笑顔の先。
つやつやと輝く彼女の唇。
制服のポケットから先の見えたリップクリーム。
sweet melon と書かれた棒状のもの。