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魂の繰り手  作者: 名隙亮
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第二話

やっと異世界転生タグが回収できます?

 自力転移が成功してしまった俺は、今アルテミシア王国の王都をぶらついている。

 街の中心にはベルサイユやノイシュバンシュタインにも負けないほど立派な城が鎮座し、人々も活気に満ちている。立派なフルプレートに身を包んだ騎士やローブを身にまとい手に杖を持った魔法使い然とした人が、街のあちこちで見受けられるとここが異世界だと実感する。

 ……つい読んでいた小説で主人公が初めて街にたどり着いたときの描写を引用してしまったが、実際にそのとおりだと思う。もちろんそれは俺がその小説に似た世界をイメージしたからではあるが、まさにイメージ通りだった。

 この世界には俗に言う魔法のような技術、操霊術そうれいじゅつがあるためか、元の世界より俺の存在に気づく人がいる。決して多くはないが気づいた人はなぜか皆そろって驚愕の表情を浮かべた。

 一方で、俺以外の人型の霊体(同類)を見かけていない。獣型や昆虫型はそこら中にいるのになぜか人型だけが一体も見つからなかった。もしかしたら俺が驚かれたのはその所為かもしれない。ほとんどがそこらへんを自由気ままに飛び回っているが、中には驚愕の表情を浮かべている人のそばでおとなしくしているものや、杖の宝玉の中で丸くなって眠っているのもいる。小説と完全に同じとは思っていないが、表現されていないものに触れると優越感というか、なんだかうれしくなる。小説自体がまだ始まったばかりのため知っていることが少なく、それに伴って相違点を感じることも少ないのだが。


    ++++


(さて、これからどうするかな?)


 こちらに来てしばらくは馴染みのない風景に少し興奮してあちこち見て回ったが、見続けていて楽しいかと聞かれれば否というほかない。この世界の観光名所のようなところは知らないので行ってみる事もできない。元の世界同様、主体性に制限がかかるのが暇の原因になっているのは間違いない。

 ふと、帰ってしまおうかという考えが頭をよぎった。ところがいくら思い浮かべても転移が発動する兆しはなく、うんともすんともいわない。……もともと音はしていなかったが。

 何度か試した結果、帰ることはできないと結論が出た。そもそも、やることがないからこっちへきたのに、帰って如何にするということになる。こちらの世界よりは娯楽が多いかもしれないが、無理を通してまで帰りたいと思うほどでもない。何より、俺はこの世界を1%も知らないのだ。新しいことを知るにはこっちの方がいいだろう。……決して負け惜しみなんかじゃない。

 先ほど転移を試していたときから、少しずつではあるが俺の意思と関係なく霊体からだが動いている。それも一方向に。まるで何か見えない力で引っ張られているかのようだ。少し気になってそちらの方向に移動してみると、いつもよりすんなり移動できる。

 だんだんとその先に何があるのか気になってきた俺は力に沿って移動していった。

 ついた先は結構なお屋敷。ちょっと入るのに躊躇するが、見えない力の方は俺の意思とは関係なく中へ中へと引きずり込んでいく。その気になれば力に逆らって移動することはできるが、近づくにつれてそうすることに嫌な予感がするようになってきた。逆に、近づくべきというやや強迫めいた考えばかりが頭をよぎる。今までにない感覚に少し戸惑いながらも、この先にあるものに対する期待と興奮を覚えていた。

 その先にあったもの、いや、いた人はとても綺麗な女性だった。


(女性になんとなく導かれたって、いつから俺はそんな女好きになったんだ……)


 傍から見ればさぞ見事なorzを決めているのだろう。俺も男だ。決して女性が嫌いとか、まして男がすきなんてことはない。ないのだが、ふらふらとたどり着いてみれば美人さんがいたとか、女好きの勘を持っていると謗られるのは間違いない。


(ま、まあ、誰にも見られていないけどな!)


 開き直ってみても自分自身はごまかせない。今もじりじりと近寄っている。

 ひとつ深い息を吐くと、無理やり冷静さを取り戻し、導かれる先へと目を向ける。

 きらきら光る銀色の髪を櫛で梳かれている少女と女性の間やや女性より、20歳前後の女性と、その女性の髪を梳いている侍女服に身を包んだやや年下の少女。そのどちらも目を見張るほどの美貌を誇り、女性の方は美しさの中にかわいらしさを残し、少女の方は逆にかわいらしさの中に美しさの片鱗を見せる。

 二人とも一目見れば忘れないだろう。俺も今後忘れることはないと思う。だけど……、


(何か、知ってる気がする。一度もあったことないはずなのに)


 そう首を傾げながら導かれるままに移動を続けていると、次第に二人の会話が聞こえてきた。


「お嬢様、今回も残念でしたね。なんとなく今回こそはと思っていたのですが」

「ええ、そうね……。でも、流れたわけじゃないんだから、これからまだまだ先はあるわ」

「その意気ですよ、お嬢様!! 必ずや旦那様のご寵愛を賜り、元気な…………」


 そちらに気を取られている間にいつの間にか女性(お嬢様)に接触してしまったらしい。その瞬間、意識が振り切られるほどの速度で取り込まれてしまった。

 あまりの出来事に呆然となってしまった。気を取り直して今おかれた環境を観察してみる。医者でも医学部の学生でもない俺では体の中といってもどこがどうなっているのか見た感じではわからない。ただ、女性の中はとても暖かく気持ちがいい。……この表現だとなんだかエロく感じるのはエロゲーのやりすぎだろうか?

 春のような暖かさとさざ波に漂うようなゆらゆらとした浮遊感は眠気を誘うのに十分だった。霊体(この体)になってからはじめて感じる眠気に抗うこともできずたちまちのうちに眠りに就いてしまった。


    ++++


 次に目を覚ましたときには外に出ることができなかった。眠りに落ちる前にはかなりがんばれば出られそうだったが、今ではどうがんばっても出られそうにない。あまり長い間眠っていた気はしないのだが、こんな激しい状況変化が起こるほどの間眠っていたのかもしれない。眠らなくても良いけど、一度本格的に眠るとやたら長い英雄→皇帝の人みたいなものか? 違うか。

 ぶっちゃけ今の状況に予想がつかないわけではない。だが、現実を受け入れられない心がある。だから水の中に浮いているような圧迫感の有る浮遊感なんて気のせいだし、俺の一挙手一投足にいちいち反応する人がいなかったのに、今では少し動くと少しはなれたところからくぐもった声が聞こえるのも気のせいだ。

 ……はい。今俺は(おそらく)胎児になってます。外では「あ、動いた」とか何とか言って大喜びしているのでしょう。何故推測かというと、目が覚めたら言葉が判らなくなっていたから。……うん。何を言っているのかさっぱりだ。どこかでバベルの塔でも作っているのだろうか?

 現実から思いっきり逃げ出していたが、たぶん胎児の脳では意味を理解できない+俺の知らない言語だからだと思う。異世界に着てまで日本語が使われているなんてありえないのだよ。ちなみに寝る前まではちゃんと意味が通じていた。これは元の世界にいるときからだ。たぶん霊体補正なのだろう。

 定期的に聞こえてくる「ザッザッ」という音がまた眠気を呼び起こしてくる。前の眠りではあまりにも長い寝坊をしてしまった。今度は気をつけ…ね……グゥ。

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