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陰陽師と玉藻前  作者: 橘花
人攫いの妖怪
2/2

雪降る夜の出会い

-陸奥路市 陸奥路高校-


12月に入り、雪が降るようになった。今も、白い雪が降っている。


「はあ、ようやく学校が終わった」


校門に立った高校生。安倍直鷹。頭に積もった雪を掃いながら、寒さに震える。


「全く、手が凍りそうだぜ。役に立たんな、この手袋」


黒い手袋をはめていても、凍りそうなくらい寒い。甲の部分に白い五芒星が描かれた黒い手袋。黒の学ラン。黒のローファー。全身をほぼ黒一色で染まっている。


「さようなら、安倍君」


と、後ろから声を掛けられる。直鷹は振り返ると、そこには車椅子に乗った学校指定セーラー服を着た少女が居た。


「ああ、さようなら。朝川さん」


キャタピラ付きの電動車椅子が、キュラキュラと音を立てながら進んでくる。普通の車輪だと雪に埋まるが、幅広のキャタピラなら問題なく走れる。


「今日も寒いね、安倍君。風引かない内に帰らないと」


「そうだな。風引いたら溜まらんからな。それじゃ」


そう言って二人は分かれる。直鷹は坂を下り、朝川は上っていく。



陸奥路市は中心地に街があり、そこから南には港がある。北には陸奥路高校と中学校があり、東西には山がある。東に行けば東京が直ぐ傍にある。だから、この街ではなく東京に勤めている人が多いのも特徴だ。


「賑わっているな」


中心街はクリスマスな為に賑わいを見せている。そこらかしこにカップルが居り、抱きついて歩いている。クリスマスソングも流れ、直鷹は豪く場違いな感じに襲われる。


直鷹は急いで中心街を抜けたかった。バスに乗ろうと考えたが駄目だ。今日は非常に混む。乗れない可能性のほうが高い為、家まで早歩きで帰ったほうが早く着くと判断した。


直鷹の家は西の山の近くにある。学校から帰るにはまず中心街に行かなければ帰れないややこしい地理だが、普段は店などにも寄れて便利なので助かる。が、こういう時には辛い。



「やっと着いた」


30分ほど掛けて辿り着いた。頭に積もった雪を再び掃い、手袋を外した。中に入り、学ランを脱いで部屋着に着替える。そして、テレビを付けた。


「やっぱり、家は良いよな」


日常。人が何食わぬ顔で過ごす。過ごせる毎日。それが日常だった。


「家が、平安時代の陰陽師。安倍晴明の家柄でなければ」


家のふすまには五芒星。所謂、清明紋が描かれている。


「それと、両親が居れば日常なのだがな。でも、もう居ないか」


その時、呼び鈴が鳴る。直鷹は起き上がるなり、急ぎ足で玄関に向かった。


「あの、直鷹君。これ、作りすぎたから、迷惑じゃなければ貰って」


っと、鍋を持った巫女服を着た少女。幼馴染の草津姫名。近くの神社の娘である。


「ああ、別にかまわないよ。おかずが無かったし、丁度良いや」


匂いでカレーだと直ぐに分かる。おかずを考える手間が省けるし、片付けも楽なので丁度良い。そう思って直鷹はありがたく受け取る。


「それと、今年もお正月はお願いします」


「いつもの手伝いだろ。世話になってるから、それ位はしないと、崇徳天皇だっけ?神様に吹き飛ばれるよ」


「他にも祭ってるけど、主祭神は崇徳天皇陛下だから。怒らせると、風を起こして吹き飛ばす」


崇徳天皇は保元の乱に敗れ、その後怨霊と化して再び京を襲った。今では酒呑童子、玉藻前と並ぶ日本三大悪妖怪の一柱である。


「それじゃあ、明日な。冬休み前最後の学校だから休まんようにな」


「分かってます。直鷹君も風引かないように」


そう言って家の神社に戻っていく。直鷹もドアを閉めた。そして、台所のガスコンロの所に置く。温めようと、つまみに手をつけた所で再び呼び鈴が鳴る。


「何だ?また姫名か?」


疑問に思いながら廊下を歩く。この時間に来るといえば姫名ぐらいだ。だから、覗き穴で確認せずにドアを開けた。すると、


「我の名前は玉藻前。およそ1000年前の誓いを守りにきました」


透き通るような声で言う少女がいた。頭に三角形の尖がり耳、そしてお尻の辺りからふさふさの尻尾を出した、奇妙な少女が立っていた。

陸奥路市は関東地方にある架空の地名として扱います。


それにこの小説、ある意味異色な作品になりそうな予感がする。

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