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戯れの物語  作者: もち
第一章~絶対なる指導者~
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二話~不思議な穴~

連続で改稿申し訳ありません。


原因不明の傷の治療を受けてから早五日。

あれからは健康そのものであり、翌日からは再び他の孤児と同様の集団行動へと戻っていた。

ロクシスの書斎へ泊まりはしたが、それはあくまでも治療の為であり特別なのだ。

本来ならば毎日でも泊まりに行きたいぐらいだが、それでは他の者もそれに続き収集がつかなくなるだろう。

それを幼い身であれど十分に理解しているからこそ、わがままなど言わずにいられる。

逆に言えば、わがままを言うことそのものに罪悪感を感じているわけでもある。

ロクシスの書斎でも行っていたが、様々な書物を読み漁り得てきた知識はルルアから子供らしさを奪ってきた。

まだまだ夢を見ても良い年齢であるというのに、既に現実を知り限界を知り自身を知ってしまったルルアは半ば諦めているのかもしれない。

ここは、カラマ共和国。

人間であれば誰でも受け入れる寛大な国家であり、そしてそれ以外を受け付けない迫害の国家でもある。

そして、ルルアはそれ以外に該当してしまう。

見た目で言えば、ただ耳が人間よりも長いだけの違いだが国から見れば決定的な違い。

ルルアの種族はカラマ共和国から迫害される対象であるエルフなのだ。

同じ孤児達から隠すこともなく向けられる嫌悪感や影で語られる自身の悪口は、つらくないと言えば嘘になるが、精神的にも成熟しているルルアにとっては十分に耐えれるものであった。

それでもここでの生活が楽なわけではないが、保護してくれているロクシスや、極少数ではあるが、ルルアを受け入れてくれる仲間たちのおかげで毎日を楽しく過ごすことができている。


「…寒い。」


そんなルルアは夜の暗闇の中、孤児院の外で空を見上げていた。

頭上一杯に広がる大空の更にその上に光る数多の星。

それらを純粋に綺麗だとは思うが、如何せん今の季節は寒気が酷く夜は特に冷え込む。

もちろん、出来る限りの厚着はしているが長時間外に居れば自ずと体温も下がってくる。

そんな思いをしてまで何故寒空の下に居るのか。

一言で言えば父の帰りを待っているのだ。

より詳しく言うならば、木々や川の汚染の原因の調査に行った父の帰りを、ということになる。

事はもうすぐ日も暮れるぐらいの時刻、孤児の一人が毎日手入れをしている花畑が枯れていたことから始まった。

ルルア自身もその花畑が好きで毎日とは言わないもののよく観察していたのだが、昼間見た時には確かにしっかりと可愛らしい花をつけていたというのに、夕暮れ時になると前述した通りに枯れてしまっていた。

自身が育ててきた花々が枯れてしまったことに手入れをしていた子供が泣きじゃくってしまったが、ルルアにはその子供よりも花の異常な生命力の無さに注目がいってしまった。

確かに気温や季節により花の咲くタイミングに違いがあり、更に一日の間に咲いては閉じるを繰り返す花も存在している。

だが、それらはあくまでも生きており、生命力そのものが減少することはあり得ないのだ。

だとすれば、今回花が枯れたのは何かしら外部からの要因が考えられることとなる。

ここまで考えたものの、それが何なのかなどさっぱり見当もつかないルルアであったが、ふと視線を上げた先で考え込む仕草をしていたロクシスを見ていると何か掴んだのではないだろうかと思えた。

普段は書斎で仕事をしている時間だというのに、どこかへ行ったきり帰ってこないのだから実際にそうなのだろう。


「…怪我とかしてないですよね。」


言いようもない不安に襲われ、不安を口にしてしまうのは仕方ないのかもしれない。

それでもルルアは、ロクシスの帰りを待ち続ける。

もしも怪我をしているのならば、得意の治癒術で治すのだと意気込み、けれどもそんなことが無い方が良いんだと思いなおしながら。

一方でロクシスはと言えば、孤児院からは遠く離れた荒野に佇んでいた。

ルルアの心配は杞憂であったようだ、怪我らしい怪我など見られない。

だが、信じられないものを見たかのように目を見開き周囲を見渡している。


「ここには最近まで大きな森があったはずですが…。」


ロクシスの立つ大地は草木など一切なく、干からびたかのような荒れ果てた大地と化していた。

先程の言葉が正しければ、孤児院の花畑と同様に短時間で木々が生命力を失い枯れていったのかもしれない。

同じ原因なのだと決めつけるのは早計かもしれないが、この異常な現象を目にすればどうしても繋げて考えてしまう。


「何にせよもう少し先ですね。」


どうしても独り言を呟いてしまうが、ルルアもそうであったように不安に襲われたが故なのだろう。

ロクシスが目指す地まではもう少しだがその進行方向には得体のしれない不気味な雰囲気が漂っているように見える。

あくまでも勘でしかないが、こういった時の勘とは意外に正確なものであることをロクシスは長い人生の中で学んでいる。

であれば、危険回避の為にも先には進まない方が良いに決まっているが、もしもこれが後々、教会や孤児院などにも影響するものだとしたら。

そう考えれば、逃げることなどできない。

全ての人間の為に行動するという、崇高な考えなどない。

ただ、大切な人々の為だからこそ危険を孕んでいようと先に進むことができるのだ。

渇いた喉を潤そうと唾液が頻繁に出てくる。

それを大きな音をたてて飲みこむと、意を決し理力を身体へ巡らせ身体強化を行う。

自然に身体強化が行われる辺り、ロクシスの術士としての実力がうかがえる。

そのまま、荒れた大地から大きく跳躍し一般人では真似できないような速度で目的地へと駆けていくが、進めば進む程に大地に力が感じられない。

もしかしたら円形上にこの現象は発生しているのではないかと推測してみる。

もちろん、検証している時間などない。

ロクシスの記憶が確かであればここから少し進めば小さな村が見えてくるはずだ。

異常事態に村民は逃げ出してしまったかもしれないが、安否の確認をしておくにこしたことはない。

だが、そのような考えは必要なかった。

村があるであろう場所には大きな穴がぽっかりと空いていたのだ。

更には、その中心地からはおびただしい程の放射性物質が蔓延しており、それらは目で見ても分かる程に濃度の高いものであった。

だからであろう、放射性物質を求める魔物がその大きな穴へ群がり今なお集まりつづけている。

中がどうなっているかなどと考えたくはなかった。

だが、同時にこの穴を塞ぎさえすればこの異常現象も収まるのではないかと考えもした。

正常な思考で考えれば原因そのものを取り除かなくてはいけないとすぐに気付きそうなものだが、この時ばかりはそこまで頭が回らなかった。


「悠久の時を生きる古の土の意志よ、ここに集い全てを呑みこむ濁流と化せ。ガイア・クリーヴァ!」


その為、ロクシスの取った行動は自身の最大の魔力を用い理術の上位互換となる理法を放つことであった。

ガイア・クリーヴァ、最上級の攻撃力を誇る土属性の攻撃理法だ。

全てを飲み込む土砂崩れと表現すれば最もわかりやすいだろう。

その影響範囲や威力は凄まじく、村一つならば簡単に殲滅できるほどである。

これならば、確かに大きな穴を塞げるかもしれない。

だが、その影響が出る前に一つの光が大きな穴から凄まじい速さで飛び出しどこかへ飛び去ってしまった。

ガイアクリーヴァを放った影響ですぐに動けないロクシスだが、その光事態は視認できた。

そして、その向かった先も。


「あちらは!?…早く追わなくては!…くっ!?」


咄嗟にその光を追おうとするが、ガイア・クリーヴァにより消費した理力の大きさに立ちくらみを起こしてしまい、タイムラグが発生した。

その間に光は霞む程度にしか見えなくなり、更には放射性物質を求めて集まった魔物の群れが、ロクシスを敵意ある視線で睨みつけているではないか。

見れば、大きな穴はガイア・クリーヴァの効力で塞がれているようで、既に放射性物質の放出は止まっている。

となれば、魔物の敵意も納得できる。

だが、それに付き合う必要性などロクシスにはない。


「その飢えを癒す得物はすぐそこに、全てを喰らい再び活力を得よ。ガイア・アブソーブ!」


徐々に魔物に取り囲まれつつある現状だが、ロクシスが放った理法は逆に都合がよかった。

ロクシスを中心に円形状の魔法陣が敷かれると、眩い光を放ち始める。


「一瞬で果てなさい!」


それは正真正銘一瞬だった。

理法陣が瞬間凄まじい光に包まれると、周囲の魔物は皆が痩せ細りそのまま息絶えたのだ。

これが土属性の理法に名を連ねるガイア・アブソーブの効力だ。

理法陣内で大地を踏みしめている者皆の生命力を奪うという、荒れ果てた大地での行使が最も効果的な限定的な理法ではあるがその威力は見てわかる通り凄まじいものだと言える。

これで全ての魔物が片付いたわけではないが、周囲の邪魔な魔物はこれで掃討できた。

連続で理法を行使したことでひどく疲労感を感じるが、すぐさま身体強化を施し、来た道を急ぎ戻る。

光が向かった先は孤児院の方角だったのだ。

嫌な予感を胸に今出せる全力で駆けていく。

教会で、孤児院で暮らす子供たちが無事であることを願いながら。

読んでいただきありがとうございました。

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