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戯れの物語  作者: もち
第一章~絶対なる指導者~
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十五話~簡単クッキング~

久しぶりの更新です。

ルルアの朝は早い。

太陽がまだ顔を見せてもいない時間に起きると、前日から成り行きで寝泊りすることとなった家から外へ出て森を散歩へと出かける。

朝の清んだ空気を嗜好品を楽しむように体内へ取り入れると身体を大きく伸ばしストレッチが開始される。

全身の筋肉や理力を確認するかのように、その全てをほぐしていくその行程がルルアは好きだった。

自身に宿っている力を実感できるからなのだと捉えているが、実際にはどういった理由なのかはわかってはいない。

いつも並行思考の一部ではこういった答えのない問いをしているが、結局は答えがないのだから終わりのない思考を繰り返すはめになる。

それも並行思考の修行と思えばそれで良い。

また別の思考がそう捉えて深くは考えないようにしているのだから不思議なものだ。

やがて、身体が完全に温まったのを確認すると再び散歩を再開し、同時に山菜が取れないだろうかと森の中の散策も行っていく。

予め用意していた小さな袋はあったのだが、予想以上に取れてしまい、いつの間にか袋がパンパンに膨れ上がっていた。

他にもルルアの周囲でふわふわと浮かんでいるものもあり、理術で浮かしているのだろうが、力の無駄遣いのようにも見える。

結局、戻ってきた時には数日はおかずに困らない程度の量となっていた。


「あれ…ルル?どこ行ってたの?」


寝ているであろうレムとアルテアを起こさないよう静かにドアを開けて帰ってきたのだが、既にレムは起きていたようだ。

もっともまだ寝ぼけているようで、頭が上下に動いており少し気を緩めれば再び眠りに落ちそうにも見える。


「散歩がてら山菜を取ってきたんです。朝食ができたら呼びますのでまだゆっくりしていて良いですよ。」


「うん…そうする。」


「あっ、ここにある材料はどれでも使って良いんですか?」


「いいよ~おやすみ~。」


返事したレムは、そのままキッチンの近くのソファーに倒れこみ、しばらくすると寝息が聞こえ始めてきた。

おそらくレムも朝食の準備に来たのだろうが、生憎ルルアはそれを譲るつもりはない。

ほぼ強制的に連れてこられたこの家だが非常に快適な環境であり、だが払えるお金も持っていないのでせめて料理ぐらいはと思っての行動である。


「さて…とりかかりますかね。」


材料は、先ほど採ってきた山菜の一部と、トリプノクスと呼ばれる草食の巨大な魔物を燻して作られたベーコン、そのトリプノクスの大きな卵とパンだ。

油を引いた大きめなフライパンへベーコンを三枚入れると、それだけで香ばしい匂いが漂い、朝起きて何も食べていないルルアのお腹を刺激する。

それも当然、トリプノクスの肉は非常に柔らかく美味として知られどの部位でも高級品として扱われる食品としては一級品のものなのだ。

卵には滋養強壮の効果があり、味もまた濃厚でしつこさのない一品という、身体のどこかしらに毒素を持つことの多い魔物としては珍しい存在だ。

焼かずとも十分に美味である為、このまま食べてしまいたい衝動に駆られるが当然そんなことはしない。

お腹の虫を鳴らしながら強火で焼いていき、焦げ目が付いたところで裏返しにする。

同時に卵をベーコンにかからないよう三つ入れ、フライパンに蓋をし、焦げ付かないよう火力を弱めに調整すると山菜へ取り掛かる。

しんなりするまで茹でて、簡単なおひたしでも作る予定だ。

だが、この家唯一のかまどはベーコンの調理で使っているので使えない為、小さな鍋に水を適量入れ、理術を用いて一瞬で沸騰させる。

少々反則染みた行為だが、せっかくの力を使わないという選択はない。


「良い匂い。」


と、ここで後ろから声がかかる。


「結局起きてしまいましたか。」


「こんな匂いがしたら寝てられないよ。」


「それもそうですね。おはようございます、レム。」


「おはよ、ルル。」


どうやら、ベーコンの匂いで睡眠欲よりも食欲が勝ったようで、ルルアと同じようにお腹の虫を鳴らしている。

髪もぼさぼさのままだが、気にしてはいないようだ。


「お客さんにご飯作らせちゃってごめんね。朝はどうも弱くって。」


「いえいえ、こちらとしては宿代代わりにやってることですのでさせてもらわないと困ります。」


「真面目なんだね~。これから一緒に仕事していく仲なんだし気にしなくて良いのに。」


既に決定事項であるかのように話すレムだがルルア自身はそれを了承した覚えはない。

とはいえ、それを伝えたところでまた流されて終わりとなりそうな気しかしない。

魔物の討伐をしているということもあり、しばらくは力を付ける意味でも共に行動することも悪くはないと判断し、その旨を深層心理でのんびりとしていたメリアーヌへと伝える。

どうやら、彼女も起きたばかりでまだ頭は働いていないようだがあっさりと了承がでた

一人で行動するよりも安全性があがるのだから当然と言えば当然だが、このカラマ共和国においてはルルアがエルフであることを隠しう通す必要はある。

そういった意味では自由な振る舞いはできないことがデメリットと言えるだろう。

もっとも、その程度のデメリットならば対したことはない。

よって、最終的な判断として二人の討伐依頼に参戦することを決意する。

ただし、一つだけ確認しておくことがある。


「そのとこなのですが、ギルドでの活動はやはり登録などが必要なのでしょうか?」


ギルドへの登録は氏名はもちろん年齢や性別、人種なども事細かく管理され、虚偽の申請をしようにも登録そのものに国からの証明書が必要であったりと非常に難しくルルアには到底通りそうもないものなのだ。

これで必要だと答えが返ってくればこの話は無かったこととにするしかなくなる。


「ん~。登録してなくても協力者ってことでなら問題ないと思うよ。知り合いに夫婦で活動してるグループもあるんだけど、旦那さんだけ登録してるっぽいし。」


どうやら、問題はないようだ。

考えてみればギルドへ接するのは依頼の受付や完了報告ぐらいで数も少なく、それを全員で行く必要もないだろう。

稀に依頼の失敗報告もあるかもしれないが、結局のところ登録している人物がそれを受けることとなる為、協力者がいくらいようがギルドはその全てを把握できないというわけだ。


「登録したくないの?」


「私って結構面倒なこと嫌いなんですよ。」


「ふ~ん。」


質問しておきながら対して興味のないような返事を返すレムだが、その視線を辿っていけばベーコンを凝視していることに気づいた。

嘘をついたりごまかしたりするのに苦手意識がある為、ベーコンに気を取られていたことはありがたかったが、その凝視している目がギラギラと輝いていて怖く感じてしまう程であった。


「…ご飯にしましょうか。アルテアさんを起こして来てもらえますか?」


「は~い。」


元気に返事をするレムは、ご飯が楽しみでしょうがないのか鼻歌を歌いながら階段を駆け上りアルテアを起こしに行く。

その間にルルアも朝食の仕上げをしてしまう。

会話している間に茹で上がった山菜を冷水でキュッと引き締め、軽く味付けをすると白ごまを上から振りかけておひたしの完成だ。

続いてフライパンから止めどなく香るベーコンの焼き加減を見て丁度良いタイミングだったのでそのまま皿へ盛り付ける。

卵は少し硬めではあるが半熟に出来上がっており非常に美味しそうだ。

後はパンを三人分オーブンでサッと焼きあげると全ての行程を終了だ。

贅沢を言えば何かしらのスープが欲しかったが、調味料が不足していてまともなものができそうになかった為に今回はお預けだ。

それでもテーブルの上に並べられた朝食はしっかりとしたものであった。


「ルル~起こしてきたよ~。」


「今できたところですのでバッチリですよ。それからアルテアさん、おはようございますと初めまして。昨日から成り行きでお世話になることになりましたルルアです。ご一緒に討伐依頼を受けるようになったようなのでよろしくお願いします。」


「ん~よろしく。」


ルルアの挨拶にどこか適当に返すアルテア。

昨日は出会いが何とも言えないものであったので、あまり見てはいなかったのだが、随分と長身で顔も整っている。

髪の色は光り輝く金色で、その容姿と合わせて王子様だと言われても不思議ではない。

だが、恰好に無頓着なのか無精髭が生えており、更に言えば昨日の二日酔いに苦しむ姿を見ている為、だらしのない部分だけが目についてしまう。

何にせよようやくアルテアと会話できたルルアだが、その態度に少しばかり納得がいかない。


「あまり驚かれないんですね?」


「何で驚く必要があるんだ?」


「見ず知らずの他人が突然一緒に行動するとなると、普通は怪しむものじゃありませんか?」


「レムが連れてきたんだから大丈夫だろ。」


どうやら、アルテアの性格は随分と豪快なようだ。

懐が深いとも言えるかもしれないが、別の視点でみれば適当なのではないかとも思える。

そう考えていると、さっそくレムがベーコンにかぶりついていた。


「それで納得されるのであれば私は良いのですが…とりあえず食べましょうか。私たちの分までなくなりそうですし。」


「そうだな。ってか旨そうだな。」


「これぐらいは普通にできると思いますが?」


「俺もレムも肉の丸焼きぐらいしかできねえぞ。」


「…ここでお世話になる間は私が食事を作りますね。」


「そうしてくれると助かるな。」


ようやく始まった朝食の時間は孤児院でのものとはまた違う騒がしさの中でのものとなった。

主にレムの食欲による騒がしさではあるが。


「ところで何で家の中でまでフードつけてるんだ?」


「お二人の名前が愛称で本名を隠しているように、私も顔を隠しておきたいんです。」


「ふ~ん。まあいいけどな。」


「…聞いておいてそれはないと思いますが。」


「なんだ、問い詰めてほしかったのか?」


「そういうわけではなくてですね…いえ、もういいです。何故か疲れます。」


周りが見えていない程に真っ直ぐな性格のレムに、幾重にも捻くれていそうなアルテア。

この二人との共同生活に不安を覚えてしまうが、正体がばれずに済んだのだからと前向きに捉えることにする。

まずは、お互いの実力の確認をするべきだろうと食事をとりながら思考するルルアであった。

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