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あいまいっ!  作者: 遠山竜児
第2章
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3月29日(火)元カレ<兄貴

「ええ!? なんでぇ!?」

「別れたってマジかよ!?」

 私の衝撃発言に、2人とも目を丸くした。

「べ、別に、理由なんてないわよ。 飽きたからフってやっただけなんだから」

 嘘。

 幸せの真っ只中だったのに、ある日突然電話越しでフラれたんだ。

「マジかよ……あんなにのろけていたのによ」

「穂波ちゃん心変わりしすぎ~。容赦ないね~」

「……あんなつまらないヤツ、一緒に居ても退屈しかしないもの。もっと良い男探すことにしたわ」

 つまらなくはなかった。

 退屈もしなかった。

 ホントは一緒に居たかった。

 けど――

 もう大丈夫。

 あの夜、兄貴が慰めてくれてから、あんなヤツの事なんてすっかり忘れていたんだから。

 むしろ、兄貴のことばっか考えたりしちゃって困ってる……

 そっちのほうが大問題だわ。

 今日だって、朝起きたら兄貴に見つめられていて、なぜかそれが嫌じゃなくて、でも恥ずかしくて兄貴と会話できなくなって……

 そもそも!

 なんでアイツは私の寝顔見つめてたのよ!

 やっぱりそれって、私のこと好……

「でもでも~、穂波ちゃんの元カレって、写真見せてもらったけどすっごいイケメンだよね! しかも年上で背高くて、空手やってるから体のほうもイイ感じなんでしょ? 抱かれたいボディ、的な?」

「な、何いやらしいこと聞いてるのよヘンタイ!」

「アイタ!」

 隣のヘンタイにはチョップをお見舞い。

「穂波が不良に絡まれてたところをソイツが助けてくれたのが出会いなんだろ? 男気あるじゃねえか。ったく、うらやましい出会いだぜ」

「まるで白馬に乗った王子様だね! こんな優良物件、手放しちゃって良かったのぉ?」

 手放すも何も、手放された側は私だ。

「未練なんてないわ。大事なのは「出会い」より「その後」、だもの」

「さっすが、クラスのアイドルは言うことが違うぜ。今度俺にも良い男紹介してくれよ~」

 颯姫はスリスリと擦り寄ってきて、

「穂波の兄貴とかよ」

 爆弾発言を投下した。

「…………は、はあ!? ななななんで私の兄貴なのよ!」

「だって、カッコ良いじゃねえか。穂波の話聞いてきた限りじゃ、妹想いの良い兄貴だぜ」

「バッ、バ、バッカじゃないの颯姫は! いつ私がそんな話したのよ! だいたい、兄貴のどこがカッコ良いわけ!? 全く思い付かないんですけど!」

 ……大嘘言っちゃった。

 兄貴は本当はカッコ良くて、でもそんなこと認めたくはなくて、でもでも……

「小学校の頃、俺と穂波が悪ガキ共に泣かされてたときに助けに来てくれたろ? あれはポイント高かったぜ~」

 蒼とは中学校からだけど、颯姫とは小学校から一緒。私の家に何度も来たりしているから、颯姫も兄貴も互いに顔見知りだ。

 兄貴は颯姫の事を「妹の友達」くらいにしか認識してないけど、颯姫のほうは、「穂波の兄貴ってカッコ良いよな~」などと私によく言ってくるんだ。

「助けに来たって言っても、結局ボコボコにされて手も脚も出なかったじゃない」

「いーんだよそれで。複数の悪漢に妹とその友達を護るため1人で立ち向かう兄貴――それだけで燃えるだろ!」

「……まあ……あの時は確かに、カッコ良くなくもなかったけど……」

 私がまだ小さい頃だからうろ覚えな部分もあるけど、あの時の想い出は……

 一生忘れないくらいの、素敵な想い出になっている。

「だろだろ! ボコボコにされても何度でも立ち上がってさ、最後まで俺ら護り抜いたしよ! なあ、穂波の兄貴俺にもくれよ~」

「私も私もー! 穂波ちゃんのお兄ちゃん欲しいですぅ!」

 今度は蒼までも、フォークを持ったまま挙手をして身を乗り出してきた。

 まるで兄貴を競りに出しているみたいだわ、この状況。

「はあ? なんでそこでアンタが出てくるのよ」

「だってだってぇ、穂波ちゃんのお兄ちゃん、穂波ちゃんに顔が似てるじゃん?」

 …………この際似てるかどうかは置いといて、

「…………どーゆーこと?」

「だからぁ! 私の大好きな穂波ちゃんに顔が似てるからぁ、なんかコーフンするってゆーかぁ!

 お兄ちゃんと結婚して、穂波ちゃんに私のことお姉ちゃんって呼ばせて、最終的にはお兄ちゃんと私と穂波ちゃんでスリーピ……」

「こ、この発情メス犬! なな、なーななななんて事を抜かしおるかなそなたはぁ!?」

「アッハハ! 口調変わってるよ――ってだからグーは痛いって! パーとかムチなら大歓迎なんだけど、あでもグーも良いかも……って痛い!」

「この色欲魔! 歩く猥褻物! ア、アンタみたいなヘンタイに!

 私の兄貴は……絶対絶対絶対絶対ぜーったいにあげないんだから!!

 私の兄貴は、私が認めた女にしかあげないの!!」

 ……ってええ!?

 わ、私何言ってるの!?

 これじゃまるで……

「……そーかそーか。……穂波、やっぱりお前……」

「ブラコンだったんだねってキャー! そこまでお兄ちゃんのこと愛してるんだー! 萌えるぅー!」

 うんうんと納得顔で頷く颯姫に、腕を組んで悶える蒼。

「ちっ、ちが……」

「あげないんだから! って、可愛いこと言うじゃねえか。

 そうだよな? 大好きな兄貴をこんなドM女にはあげたくねえよな? 大好きな兄貴をよ」

「娘を嫁に出したくないお父さんみたいな感じだね! 愛するが故の束縛? 的な!」

「ちちち違うぅぅぅ! 違うの! こ、これは口が滑ったというかなんというか……」

「口が滑って本音を言っちゃった、ってか?」

「ごまかさなくて良いんだよぉ? いつもはお兄ちゃんの悪口ばっか言ってるのも、愛情の裏返しだったんだね!」

「ちが……うって言ってるの!」

 ドンッ!

 立ち上がってテーブルに両手をたたき付けて、

「わ、私は別に……兄貴の事なんて、なんとも思ってないんだから!!」

 ……また嘘ついちゃった。

 ……でも、言えるはずないじゃない!

 最近は兄貴の事、異性として意識するようになってきちゃったの……なんて!

 ……ブラコン治したい。

 早くちゃんとした彼氏が欲しいよぉ……

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