3月28日(月)妹が可愛くて仕方ない
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認めてやろう。
俺はシスコンだ。
妹のことが大事で大事で仕方ない、変態シスコン野郎だ。
……なんて、やっぱり開き直れない。
常識的に考えて、シスコンはマズイだろシスコンは……。
そんな事を言っておきながら、妹がブラコンであることを嬉しく思ってたりする俺は、どうやら本物の変態らしい。
「ちっくしょう……、何でアイツは妹なんだよ……」
俯せに寝ているベッドが、ギシギシと軋む。
――腹立つ。
恋したい相手がすぐ側にいるのに、恋することが許されないということが。
見た目だけなら、最初から好きだったさ。そこらのアイドルなんか目じゃないくらいの整った顔に、色ツヤ形全てが俺の好みど真ん中な美脚。サラサラとした美しい黒髪に、庇護欲をそそられる華奢な体躯。
見た目だけなら、いつまで見ていても飽きないほどの可愛さだったんだ。
――けど、知ってしまった。
内面もすごく可愛いやつなんだということを。
強がりで素直じゃないところも、かと思えば感謝の気持ちをきちんと伝えてくれるところも、照れ屋なところも焼き餅焼きなところも料理上手なところも、その全てが――
「――ったく、こんなこと考えてるからダメなんだよな。……俺はシスコンじゃない俺はシスコンじゃない俺はシスコンじゃない」
……決して、現実から目を背けているわけではない。暗示をかけているのだ。自分に言い聞かせることから始めようって奴だ。
昨日俺は、穂波から「宿題」をもらった。俺が知っている女の子の中から、彼女にしたいやつを選んでこい、と。高嶺の花でも何でもいいからとにかく選べ、という御達しだ。
「――無茶言うなよな、まったく……」
今日の昼になっても、「宿題」はできなかった。別に、周りに良い女の子がいないわけじゃない。俺の学校は女子の見た目レベルが高いし、進学校だからか大人しめの良い子が多い。部活の女子も、一部例外はいるが、好感が持てるやつばかりだ。けど……
リアルの恋って、しようと思ってするものじゃないだろ。
ギャルゲープレイするのとはわけが違う。自分の意思で誰かを好きになるんじゃなく、いつの間にか好きになっていた、っていうのが本物の恋だろ。
――でもまあ、恋をするためのきっかけくらいは自分で作れるかもな。女子と話す機会を増やせば、そこから発展して誰かしらを好きになるかもしれない。
「部活のやつらとかクラスの女子に、積極的に話し掛けてみるか……」
宿題はそれまで未提出でいいや。今ここで、彼女にしたい女子をピックアップしろとか無理だし、とりあえずは……、明後日の部活で、実践しよう。
――けど、穂波は……、俺に彼女ができても、何とも思わないのかよ……。
俺はぶっちゃけ……、アイツに彼氏ができたら嫌なんだけど……
「――って、死ね死ね死ね死ね俺死ね! 何でそんなこと考えちまうんだよ! シスコン過ぎるだろこのバカ兄!」
今だから言えるが――
穂波が彼氏とイチャイチャ電話しているのを聞いたりすると、俺は激しく嫉妬してしまうのだ。彼氏に対して穂波はいつもデレデレだったし、俺には見せてくれない態度を他人にとっているのが非常に気に喰わない。
以前は自覚がなかったのだが、今考えてみると――
俺、昔からシスコンだったろ。
――って、いい加減妹離れしろよバカ野郎! 気持ち悪過ぎるんだよクズが!
――ああけど、穂波に彼氏……、やっぱり不愉快だ……
そんな風に、ベッドの上でジタバタ葛藤していると……
ブルルルル。
枕の横に置いてあるケータイが、メールの受信を告げた。
[Date] 3/28 13:16
[From] 阪内大介
[Sub] 鳴くんお願い!
明日の合コンなんだけど、男子のキャンセル1人出ちゃったから鳴くんに来て欲しいんだ(>_<)
鳴くんの分のお金は、僕が半分くらいなら払っても良いから…
だからお願いo(><)o
――合コン?
そういえば先々週、大介からそんなメールをもらったな……
合コンとか興味なかったから断ったけど。
しかしこれは……
「チャンスだろ」
あまりにもタイムリーな報せ。
神の悪戯か、悪魔の罠か……。
良い予感も悪い予感もしたが、とりあえず――
OKの返事を、大介に送っておいた。
「破壊神は少女のために」という小説も連載開始しました!
よかったらそっちも読んでみてください!