3月27日(日)妹と協力して女の子を攻略!?
☆☆☆
見られた。
エロゲーしているところを、妹に。
……って最悪だァァァァァァァァァ!!!!!
恥ずかしい死にたいマジかよおいよぉ!!
それにこの状況……
「で? これは何かしら?」
椅子に座り脚を組みながら、エロゲーの18禁シーンのCGをビシッと指さしている妹に、床に正座し尋問されている兄。
……って、どんな構図だよ!!
「これはだから……」
「頭が高い!」
慌てて頭を下げる。もうこのフィールドは、完全に穂波様の支配下に置かれたようだ。
「えっと……恋愛アドベンチャーゲームです……」
「……対象年齢は?」
「じゅ……18才以上……です」
「アンタ今いくつかしら?」
「……16です……」
何だ何だよ何ですかこのザマァ!
兄の威厳とかプライドとか、完膚なきまでにズタボロじゃねぇか! 我が家のボロ雑巾の方がまだ形保ってるわ!
もういっそ殺してくれよ! 一思いにグサッと! 言葉のナイフじゃなくて本物のナイフで!
「これ、アンタの年齢でやって良いものかしらって違うよねそうよね!? ……それをアンタときたら……」
「お、お前には関係ないだろ! なんでお前にそんなこと言われなきゃなんないんだよ!」
「そ、それは……そうだけど……って違う!」
「グッ!」
椅子の上で組まれていた穂波の脚が、俺の頭を踏み付けた。
「私が言いたいのは! アンタがなんでそんなにゲームに依存してるかってことなの!」
グリグリグリと、力を入れて頭を踏み付ける穂波。
……って、この状況はヤバイ! 超ヤバイ!
何がヤバイって、だって穂波の脚が、長ズボンのパジャマで輪郭が分かりづらいけど、俺好みの美脚が……
頭を踏み付けてきてるんだぞ!!
ガバッ!
転がるように穂波の踏み付けから逃れ、脚が届かないもっと遠くへ正座し直す。
――ヤバイ、ちょっと興奮し……
だからダメなんだって!
アイツは妹アイツは妹アイツは妹……
い、妹に踏まれて興奮するなんて、最低最悪の暴挙、変態の極みだぞ!
好みの脚で踏み付けられるなんて、脚フェチにとっては最上級至福だけど、いかんいかんいかん。相手は妹なんだ、自重しろこのバカ兄!
こんな兄の情けない姿に若干怪しむような視線を送ったが、穂波は再び椅子に脚を組んで座り、続けた。
「妹としてわね、いくらどうしようもない兄貴とはいえ、ゲームの女の子相手に「一生幸せにする」とかほざいてるのを聞くと、さーすがに心配になってくるわけ。べ、別にアンタが一生2次元の女以外に彼女できなくても私にはなんの関係もないんだけどね、それでも、こんな気持ち悪い兄がいるってことは私にとっての一生拭えない汚点になるの。わかる? わかるわよね? わかって」
「はい、わかりました……」
本当に情けない……
何も言い返せないなんて、俺はヘタレだ。
ちょっと前まではカッコ良い兄貴でいる自覚があったのに……
「……で、何でアンタはこのフィクション女にそこまで依存しているのかしら? 依存症治すのに協力してあげるから、正直に話しなさい?」
……だからこの状況で笑顔はやめてくれ! ガチで怖いから! 穏便に協力する気ゼロだろお前!
「えっと、それは……」
ニコニコニコ。
ほほ笑む穂波。
……目が笑っていないし、気のせいかギリギリという歯軋りのような音がする。
穂波の笑顔は可愛いはずなのに、この笑顔は可愛い通り越して憤怒が伝わってくる。その笑顔、俺にとっての恐怖の象徴に認定するぞ? 頼むから普通に怒ってくれ。
笑顔の重圧に耐えられず、俺は正直に全てを話すことにした。
「……俺さ、前言ったろ? お前に何回惚れかけたと思ってんだって。……このままじゃ本当に危ないから、その……、ゲームの女の子に逃避して、シスコンを回避しようと思って……」
「な、な、なっ……私に、ほれ、ほれぇ…………………………っ!?」
赤化して石化した穂波。
口がポカンと半開きで、言葉を失っている。
「本当に、本当に危険だと思ったんだ。それでゲームにのめり込むうちに、だんだん依存が強くなって、リアルとゲームの境が曖昧になったりして……」
「じゃ、じゃあ、香苗や茜ってのも、ゲームの女の子だったわけ?」
「ああ……。リアルの女子には縁がないからさ……」
死にてえ……
何でこんな恥ずかしいこと暴露しなきゃいけねえんだ。
兄としても男としても、完全に地に堕ちたな……
「わわわわわかったわよ!」
「え?」
突然椅子から立ち上がり、真っ赤な顔のまま仁王立ちをした穂波。
「私が! アンタが、かの、かか彼女作るのに協力してあげるわよ! そうすれば良いんでしょ!?」
「って、えぇぇぇ!?」
突然何を言い出すんだ俺の妹は!?
何でいきなり俺が彼女作る話になってるんだ!?
「ちょっと待て穂波。何で俺に彼女? さっぱり意味がわからないんだが」
「だから、アンタが私に……ほれ、ほれ惚れちゃいそうだから、それが嫌だからゲームの女に依存したんでしょ!? だったら、3次元にちゃんとした彼女作れば良いじゃないのって言ってるのよ!」
「ああそういうことか……ってはぁ!? お前それ本気で言ってるのか?」
「ほ、本気よ! 私が華麗にプロデュースしてあげるって言ってるの! それとも不満!? 私じゃ不満だとでも言うの?」
「いや、不満っていうか……」
もうやめてくれ……
これ以上、兄を惨めにしないでくれ。
2次元に依存してるのとエロゲーやってるのがバレた上に、彼女作りに協力してもらうとか……
どんだけカッコ悪い兄貴なんだよ俺は!
「……ねえ、私たちってさ、……恋人同士になるのは、やっぱりマズイよね……?」
穂波は少ししおらしくなった。さっきまでとは一転、悲しそうであり自らを嘲るような笑みを浮かべている。
「……ああ。やっぱり、兄妹同士ってのは……色々と……」
日本には兄妹同士の恋愛や性行為を禁じる法律はないが、結婚はできない。民法でそう決まっているんだ。人並みの幸せですら、叶えるのは難しいだろう。
「……そうよね。じゃあ……、とりあえずアンタが彼女作りなさい!」
「お、おう…」
……はっ!? 思わず頷いちまったじゃねえか!
でもまあ……
確かに、彼女はともかく好きな人くらい作っておかないと本気で危ないかもな。完全に妹ルート入る前に、手を打っておかないと……。
恋、かぁ……
気が重いよ、ホント。
もう完全に妹ルート入ってるだろこのシスコン……
と、もう一人の自分が脳内で呟くが、無視することにした。
おまけ:
作者お気に入り、穂波のセリフ集~第1章Part1~
「べ、べつに、追い掛けて欲しくなんてなかったんだからね! そ、それをアンタが勝手に……」
「ア、ア、アンタどーゆーつもりなの!? ししし失恋の弱みに付け込んで、く、く、……口説こうとするなんて!」
「一応、礼は言っておくわ…… ありがと」
「ああ、あ、あ、…… あり、ありがと……」
「べ、別に! たまたま早く起きたからであってその、あの…… そ、そうよ! アンタの分も作ってやるって言ってるの! 悪い!?」
「そこまで言うんだったら…… 作ってあげてもいいわよ…… 毎日」
「もう、そんなにがっついちゃって…… よ、よっぽど美味しかったんだ…… ありがと……」
「放って置けないって…… またいつものお節介癖? ……ま、まあ別に、アンタのそういうとこ嫌いじゃないけど……」
「……ま、まあ、なかなか良い夢だと思うわ。だから…… が、頑張ってね……」