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あいまいっ!  作者: 遠山竜児
第1章:曖昧な兄妹
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3月23日(水)曖昧​な兄妹〔2〕

「バカバカバカ! 兄貴のバカ!」

 穂波が、俺の上から頭を殴ってくる。拳の雨が容赦なく降り注ぎ……

「ちょ、穂波やめ! 痛い! 痛いからっ……?」

 ――っ痛……く、ない……?

 ポカポカとした女の子殴りで、まったく痛くない。肩たたきをするような力加減だ。

「バカ! 大バカ! あんぽんたん! ろくでなし!」

「ほ、穂波…… ごめん……」

「別に良いわよ!」

「へ!?」

 ここまで怒っておいて、謝られても『別に良い』? 赦す気ないから謝らなくて良いってことか?

 と思いきや……

「アンタは大バカだけど…… だけど、兄貴としては、す、好き…… だから」

 そういうことか……

 『兄貴としては』

 その言葉が意味することは、わかっていた。

「俺も、お前のこと大好きだ。妹として、な」

「う、うん…… ありがとう」

 穂波は、嬉しいようながっかりしたような、ホッとしたような物足りないような顔をしていた。

 ――ひょっとして俺も、同じような顔をしているかもしれない。

「じゃあ、とりあえずは……」

「現状維持……様子見ってことね」

「ああ」

 俺は頷いた。

 現状維持、様子見。

 俺達はそうするしかないのだろう。

 お互いに気持ちの整理がついていないんだ。ゆっくり考える必要がある。

 そもそも兄妹同士の恋なんて、問題が多過ぎるわけだし――

 日本じゃ3親等以内の傍系血族は結婚できないうえに、交際するだけでも周りの目を気にしていかなければならないだろうからな。

 もちろん、穂波と両想いになったとしたら、穂波を恋人として護っていく覚悟はある。絶対に揺らがないし、曲げるつもりもない。けど、俺達はまだ恋人未満なわけで……


「穂波、そろそろ俺の上から降りてくれないか?」

「あ、う、うん」

 穂波が立ち上がり、やっと解放された俺もよっこらせっと立ち上がった。

「あ、兄貴ごめんね。その……押し倒したりして」

 頬を赤らめモジモジとしている妹がたまらなく愛おしくなり――

 俺は穂波の頭を撫でた。サラサラスベスベとした髪の感触が心地良い。

「気にするな。大丈夫だから」

「ありがと……」

 穂波は俺と顔を合わせ、ニッコリとほほ笑んだ。釣られて俺も、ニッコリと。

 ――そういえば、妹の頭を撫でるなんて何年ぶりだろうか。また一つ、穂波と俺の『久しぶり』が積み重なった。


 しばらくそうやって見つめ合ってた後……

 穂波はハッと我に返り、

「じゃじゃじゃあ、私、その…… そろそろ夕飯作り始めなきゃね。そ、そういうわけでじゃあね」

 夕飯の支度をするにはまだ早過ぎると思うのだが――

 まあ、そこら辺は突っ込まないであげよう。

 俺も……、やばいめっちゃ恥ずかしくなってき……

「あ、穂波っ」

 ――思い出した。そうだ、すっかり忘れていた。

「これ、買ってきたぞ」

 きびすを返した穂波を呼び止め、俺は近くに転がっている服屋の買い物袋から――

 薄いピンク色の、ロングコートのワンピースを取り出した。

「え!? こ、これどうして……」

「帰る前に、急いで買ってきたんだ。お前、これ気に入ってたんだろ。……あ、一応言っとくけど、物でお前の機嫌直そうとかは考えてなかったからな。なんつーか、この服…… すげえ、似合ってたからさ。お前に着て欲しかっただけだ。もちろん、金はいらない」

 あの時、穂波に電話しても出なかったから、急いで家に向かおうとしたのだが……

 このワンピースのことを、思い出した。穂波に喜んで欲しいのもあったが、試着したときの穂波が、その…… 可愛くて……

 それに、今日の想い出をもう一つ、穂波に持っていて欲しかったんだ。

「え、ええ、えと、えっと…… あり、ありりがと、とう」

「どういたしまして」

 なんか色々と、あの夜を再現しているような気がする。今度の穂波は、俺が差し出した服をまるで高級な陶器を扱うかのように丁寧に受け取った。


 ――兄妹以上恋人未満か……

 悪くないかもしれないな。


 これが問題の先送りだってことはわかってる。俺も穂波も、恋人同士になるなんて望んではいない。

 けど、恋ってやつは人間の思い通りにならなくて……、自分自身の恋心すら、満足に制御できないんだ。


 これから先、俺達の関係がどうなるかなんてわからない。けど、できるならずっと仲の良い関係でいたいと思う。


 当たり前だろ? 兄妹なんだからさ。



~第2章へ続く~

第1章完結しました!

これもひとえに、読者のみなさんのおかげです。

読んでくれている人がいたから、ここまで続けることができました。

作者のような諦め癖が強い人間に、40000文字以上の小説を執筆させたのは、他でもないあなたです。……なんてカッコイイ(?)ことを言ってみました(笑)本当に感謝しています。


一介の高校生に過ぎない作者が書いた文章は、自分でもわかるほど稚拙でした。しかし、文章、表現、話の展開など、他の作者の方々を参考にしながら勉強していきたいと思います。



さて、兄妹以上恋人未満という関係に落ち着いた二人ですが……

第2章以降では、普通の兄妹に戻ろうと奮闘する二人を描きつつ、近親婚やインセスト・タブーについて、もう少し踏み込んだ作品にしたいと思います。関連書などを読んで、できるだけ正確に描いていくつもりです。

あと、新キャラもどんどん出していきたいと思っています。名前だけ出ていたあのキャラとか(笑)



では最後に……

これからもよろしくお願いします!

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