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あいまいっ!  作者: 遠山竜児
第1章:曖昧な兄妹
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3月22日(火)妹とデート…?

 時刻はすでに夜の9時。

 リビングのテーブルで、かりんとうを食べながらテレビを見ているところに――

 穂波が、ドアを開けて入ってきた。

「おっ、なあ穂波、『デビル・ブレイカー』の劇場版が明日から公開だってさ」

 俺は先程テレビで流れていた映画のCMでそのことを知ったので、やってきた穂波にそのことで話し掛けてみた。

「へえー、明日なんだ。じゃあ早く観に行きたいな」

 お、あんがい普通に答えてくれたぞ。

 普段なら「あっそ」と興味なさ気にスルーするはずなのに。やっぱり昨日から俺に対してそんなに尖らなくなってきてるな。

 穂波は俺の向かい側の席に腰掛けると、テーブルの上にあるかりんとうをポリポリと食べ始めた。どうやら小腹が空いていたのでやってきたらしい。

「穂波も観に行く予定なんだ」

 穂波の雰囲気が柔らかいのを感じ取ったので、俺は話を続けることにした。

「んー、観に行きたいけど、デビル好きな友達あまりいないから、1人で行こうかな~って感じ」

『デビル・ブレイカー』とは、某人気少年誌で連載中の漫画、及びそれを原作としたテレビアニメのことである。若い世代にかなり人気のある作品で、小学生から高校生まで男女ともにファンが多い。俺と穂波も小学生の頃から愛している作品なのだ。

「そっか。意外だな、女子でもけっこう好きな人多いと思ったんだけど」

「まあ、原作好きな人はけっこういるんだけど、アニメは見てないらしいのよね」

「なるほど。そういうことか」

 デビル・ブレイカーのような5年以上も続いている少年マンガ原作のアニメは、マンガが高校生まで人気があってもアニメだと対象年齢がグッと下がる傾向にある。俺の高校でも、原作を集めている人は多くてもアニメは見ていないという人はけっこういた。

「で、そういうアンタはどうなの? 誰かと観に行くわけ?」

 かりんとうをかじりながら、穂波が探るように聞いてくる。何となく尋ねてみたというよりは、俺の動向が気になっているといった感じだ。

「え? あ、ああ…… 俺も行きたいんだけど、一緒に行く友達がいないからどうしようかな~って。1人で行くのもつまらないし、誰か一緒に行ってくれる人がいればいいんだけどな」

 その返事を聞いた瞬間、穂波の顔が一瞬明るくなった。ような気がした。

「そ、そう。 えーっとじゃあ! ……あの…… その……」

 今度は顔が赤くなってきてるぞ? どうした?

 見ると穂波は、かりんとうを指先で転がしながら、小さく俯き何やらモジモジとしている。何かを言いたいんだけど言えない、そんなもどかしい感じで。

 こ、これは、もしかして――

 じゃあ一緒に見に行こう! ってなるパターンか!?

 ……いやいやまさか。

 穂波が俺と、なんて……

 あ、ありえんだろ……

 いや待てよ、やっぱりそうなのか……?

 最近何だかやけに俺に優しいし、誰かと一緒に行きたいって言った俺に気を使ってくれたのかも。もしくは穂波も1人じゃつまらないから、仕方なく兄貴でも誘おうかな~って思っているんじゃないか。だとしたら……

 一緒に行くのも、良いかもしれん。

 ほら、穂波ならデビル・バスターの話も合うし、兄妹なんだからたまには一緒にどこか出掛けるくらい自然なこと、そう自然なことなんだ。俺も1人で映画行くのなんてつまらないし……

 穂波はまだ、モジモジとしている。

 さすがにここまできたら、いくら女心がわからないと言われる俺でも丸わかりだ。

 だったら、兄としてここは空気を読んで……

「なあ穂波…… 明日暇だったら、い、一緒に……映画観に行かねーか?」

 モジモジしてる穂波かわいい…… と思う気持ちを超必死に押さえ込み、俺のほうから誘ってみた。

「ほえっ!?」

 穂波は驚きのあまりか、かりんとうをテーブルに落っことし間抜けなリアクションをしてみせた。

「い、いやまあ、1人で映画観に行くのもつまらないし、穂波も観に行きたいんなら一緒に見に行くのも良いんじゃないかな~って」

「え、え、え、えーっと、い、一緒!? 私と!?」

 ボンっ! と爆発音が聞こえてきそうなくらい、穂波は急速に顔面を赤化させた。

 そんなに動揺されると、こっちまで顔が赤くなってしまう。

「べ、別に深い意味はないさ。まあ、穂波が嫌ならいいけど……」

「いいい嫌じゃないわ!」

 突然声を張り上げた穂波に驚いて、今度は俺が、持っていたかりんとうを手から零した。穂波はすぐに我を取り戻し、俺の発言を強く否定したことをごまかすように続ける。

「ままままあ? 私も1人で映画行くなんて寂しさ極まる行為はしたくなかったワケだし? アアアアンタが! どーうしても一緒に行きたいって言うなら、や、やぶさかでないっていうか、つまり、い、行ってもいいけど、私は別に好きでアンタとデ、デートに行くんじゃないってことよ!」

 ――ん!?

 呂律ろれつが回っていなくて聞き取りにくかったが、今けっこうな爆弾ワードがあったような……

「えっと…… 別に『デート』までは言ってないんだけど……」

「え!? 私、デ、デェェ☆※±×÷≠≦¥℃♀#@§%!?!??????」

 穂波の言語が人外のそれになった。

 ついでに顔面も、赤→白→朱→蒼白→紅と目まぐるしく変化していく。

「お、おい落ち着けって!」

「このヘンタイっ!!」

「グハァァァ!!」

 かりんとうを額に投げ付けられた。至近距離から、おもいっきり。

「な、何するんだよ!?」

 痛い。おでこがものすんごく痛い。

「うるさいうるさいうるさい!! このバカ兄!!」

 穂波は耳まで真っ赤にした顔で椅子から立ち上がり、ドンドンと足を踏み鳴らしながらリビングを出ていってしまった。

次話かその次の話で、新キャラ登場させます!

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