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秘め事

目の前の美青年と猫は私を一瞥すると、そのままクルリと向きを変え立ち去ろうとする。


「ちょ、ちょっと待ってください」


私は特に用があるわけではなかったが、反射的に呼び止めていた。

そのことに自分でも驚いた。


青年は、面倒くさそうに何?と振り向く。

そして何も言わずに口をパクパクさせている私に「お前何?うざい。さっさと消えろ」と不機嫌そうに言うとそのまま神社の敷地の奥へと消えて行った。


「な、なんなんだ。私、なんか悪いことしたっけ」


良く分からないけれど、イライラする人だ。

私は彼が消えていった方をあっけにとられたように見つめる。

イライラするけれど、すごく綺麗な人だったな。



「どうかなさいましたか?」


私に話しかけてきたのはここの神主さんの息子だ。

後を継ぐために勉強しているらしい。

すごく感じの良い人で、近所の評判も良い。


「あ、駅まで近道させていただきたくて…」


「そうですか。なら、この道をまっすぐ、大きなクスノキにぶつかったら右に曲がるともう駅ですよ」


「ありがとうございます。助かります」


私は頭を下げ、教えてもらった道のりを歩き出したところで、さっきの青年を思い出した。


神社の敷地の奥へと進んでいったということは、この神社の関係者だよね…


「あ、あの。この神社に着流しの似合う男の人がいると思うのですが…どなたなんでしょうか」



今まで穏やかに話を聞いていた神主の息子は一瞬嫌悪の表情を浮かべた。

その表情は一瞬にして消え去ったけれど、私はしっかりと確認できた。


「さぁ。私はそのような人物は知りません。きっと参拝客の一人でしょう」


「え、でも、神社の奥に歩いて行ったんです」

私は食い下がった。なぜか、彼はこの神社に関係している人だと確信が持てたのだ。


「お急ぎなのではないですか?近道をしにここへ立ち寄ったのでしょう」

神主の息子はこれ以上の詮索は勘弁とばかりにイライラした口調で言った。


この人は絶対何かを隠している。

これ以上聞いても何も答えてはくれないだろう。

私は仕方なく、もう一度お礼を言うとクスノキを目指し歩きだした。

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