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出会い

 まだ夏本番でもないっていうのに少し走るとじわりと汗がにじみ出て不快指数がはね上がる。

それでも私には走り続けなければならない理由がある。

その訳はいたってありがち。

今日は前期試験の最終日だというのに、朝起きると間に合うか間に合わないかの瀬戸際だったからだ。


私の家から駅までの間には古くからこの土地を守り続けている神社がある。

神社の周りはちょっとした森のようになっていて、なかなか通り抜けしようなどとは思えない雰囲気である。

本当だったら駅までは直線距離でものの3分で行くことができるはずだが、この森があるせいで15分もかけて駅まで行くことはめになる。


よし。ここを通ろう。


いつもならこんな道なき道を通ろうなんて思わないのに、今日はなぜか神社に思いが引き寄せられる。

遅刻を気にしてというよりは興味本位でこの道を選んだという感覚の方が強いが、神社を通って行けば好奇心を満たすこともできるしテストに間に合うかもしれない。

一石二鳥だ。



神社の敷地内に入ると辺りの喧騒が全く聞こえなくなる。気温もアスファルトに囲まれた外の世界とはだいぶ違い、低くさっきまで火照っていた肌も少しずつ冷やされていく。風が吹くと肌の熱を奪って心地良い。


傾斜の緩い上り坂を登り終えると、神社の境内が見えてくる。それほど立派ではないが手入れの良くされた小奇麗な境内だ。

誰かが投げたお賽銭が賽銭箱の横に落ちている。

勝手に通らせてもらっては悪いと私は手を合わせることにした。


通らせてください。もしよろしかったらテストに間に合い、合格点がとれますように。

若干図々しいかなとは思ったけれど、そう祈ってみた。


一通り祈り終わると、右足の隣に置いたバッグを取ろうとしゃがむ。


私の足元には一匹の綺麗な猫がいた。大きな瞳でこちらの様子をうかがっている。


ブルーがかった灰色の毛をした美しい猫だ。毛の長さは短いが、とても滑らかな毛並みをしている。

猫相手に言うのも変だけど、とても美人。



「おいで」


そう言うと、猫はツンとそっぽを向いてしまった。

やっぱり猫は気位の高い動物らしい。

そんなところがかわいいのだけれど。


猫を触るのを諦め荷物を掴むと駅へ向かうために猫に背を向け歩き出す。


にゃーと私を呼びとめる声が聞こえた。

振り返ると、さっきの猫が私の足にすり寄ってきた。


わーかわいい。

ちょっと懐いた。


私は猫の頭をそっとなでる。


猫は猫パンチを繰り出してくる。

私はそれを華麗によけて、突っつき攻撃をしかける。


猫も負けずに猫パンチ


私も負けずに突っつき攻撃


何度目かの私の突っつき攻撃の番になった時、猫はヒラリとそれをかわす。


私の人差し指は空を切る。


あ、飽きられたかぁ

残念



「…俺以外の人間に触らせているところ、始めて見た。」


振り返ると、そこには薄浅葱色の着流しを着た一人の美青年が立っていた。

青年だとわかったのは「俺」と言ったからで、もし何も言わずに現れたのなら、女性だと間違えそうな程、美しい人だ。

その美しすぎる青年に、猫は最高に可愛らしいそぶりで甘える。

その行為に答えるように、青年は猫を抱きあげる。

猫は安心しきったように身を預ける。


学校に遅刻しそうだったことも忘れ、私はまるで恋人同士のような2人をボーっと眺めていた。


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