第12章:塔のエコーと見えない脱出
みなさん、こんにちは
ミンゴです
第12章をお届けします!
楽しんで、たくさん愛を注いでくださいね!
皆さんの応援は私にとって大きな力です。
コスタリカから、 PURA VIDA!
(しっかり守ってあげるから…)
その声は、虚無の中での温かな愛撫だった。真夜中に目を覚ましたローズは、心臓が激しく鼓動しながら起き上がった。部屋は闇に包まれ、高い窓から差し込む月の光だけが薄く照らしていた。
「ここはどこだ?」
彼はささやき、横を見た。リリアは疲れ切った顔で深く眠っていた。
「ああ、そうだった…気絶してたんだ」
彼は彫りの深い石の壁を見た。ここは城の中だ。黄金の馬車の記憶が電撃のように蘇った。
(王女の一人が…私のネックレスを持っている。彼女たちが私を呼んでいた。しかし、今すぐ探しに出れば、廊下を渡る前に殺されてしまう。待つしかない)
ローズは再び横になったが、安らかな眠りには恵まれなかった。ぼんやりとした遠い記憶が、まるで誰かが映画を映し出しているかのように、彼の脳裏に蘇った。
「え? 鎧?」
森の中で女の子の声が言っていた。
「すごく破れている…中に誰かいるの?」
夢の中で日々が過ぎていった。
「今日持って来たものを見て…みんなで分け合うの。聞こえているといいな…」
そして、その口調は恐怖に変わった。
「え? 鎧は…? 中に誰かがいたの…? ああ! ひどく傷ついている…どうすればいい? 大丈夫…私が…しっかり面倒を見るから…」
【翌朝】
ローズは顔に当たる日差しで目を覚ました。体調は良くなっていたが、あの声の残響がまだ頭の中で鳴り響いていた。
(ちゃんと面倒見てくれるのかな? あの声は誰のものだったんだろう?)
「あっ!」
突然の叫び声に思考が途切れた。リリアが隣に座り、目を大きく見開いて涙を浮かべていた。
「起きたのね…」
リリアはそう囁き、ローズは彼女の目に涙が浮かんでいるのを見た。
「ああ…うん。起きたよ」
「すごく心配してたの、ローズくん」
彼女はそう言うと、自分の膝を抱きしめた。
「あなたの心の中で、何かが壊れてしまったのかと思った」
「大丈夫だよ、僕は元気だ。世話してくれてありがとう」
ローズはため息をつき、正直に話すことに決めた。
「リリアさん、昨日…何かが聞こえたんだ。僕の鎧の音だった。王女の一人が僕の鎧を持っている。鎧が僕を呼んでいたんだ」
「え?」
リリアは呆然とした。
「鎧があなたを呼んだの? そんなことありえるの?」
「マインド・ネクロフローのせいだよ」
ローズは説明した。
「それらは一種の自我を持っているんです。馬車の中にいるって警告してくれたんです」
リリアは考え込むように、あごを撫でた。
「なるほど… まあ、ローズくん。自我を持つ遺物を持ち歩くほど、大切な人を守っているとは思いませんでした」
リリアは真剣な顔つきで言った。
「本当? 誰?」
「ミク様です。いつも『騎士』の話をして、誰にも見せない物を持っているんです。でも…」
リリアは素早く立ち上がり、ドアの方を見た。
「今、もっと大きな問題がある」
「でも?」
「ここから出て行かなきゃ、ローズくん。今すぐ。女王様の許可なく君をこの部屋に入れた。もし衛兵やエリザベス様にここで見つかったら、許されない。二人とも反逆罪で処刑される」
ローズは緊張した様子で、頑丈な木製の扉を見た。城はすでに使用人や兵士でいっぱいだろう。
「わかった。それは理にかなっている…でも、どうやって誰にも見られずに逃げればいいの?」
リリアは黙って、窓から裏庭を眺めた。危険な考えが彼女の頭の中に浮かび始めた。
「…もう一度、私を信じて」
リリアはそう言うと、手を差し出した。
「そして、あなたはとても、とても静かにしていなければならない」
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リリアは、額に汗をにじませ、視界がぼやけながら、城の廊下を歩いていた。
(きゃあああ、エネルギーを使いすぎてる!)
彼女は心の中で叫んだ。
ほんの数分前、彼女は彼に厳密な指示を出していた。
「もう一度、私の深淵の領域にあなたを閉じ込めるわ。動かないで、息も荒くしないで。出口まで連れて行くから、そこから命がけで走って逃げなさい、わかった?」
ローズは真剣な表情でうなずいた。
「はい、リリアさん!」
しかし現実ははるかに過酷だった。深層支配が驚異的な速度で彼女の体力を消耗していた。
(うっ…これ以上は持たない…お願い、あと数メートルだけ…横出口まであと少し…)
「リリア! リリア!」
若く、切実な声が廊下の静寂を破った。
「えっ?!」
リリアは驚いて、流れ(フロー)への集中力をほとんど失いかけた。ミクが駆け寄ってきて、リリアが何年も見てい難いような輝きを目に宿していた。
「騎士様を見に行こう、リリア! 急いで!」
「騎士様? でも…今…」
リリアは背筋が凍った。ローズは文字通り、彼女たちの真下、見えない床の下にいるのだ…
「行こう! 母様が森に行く許可をくれたの!」
ミクはリリアの袖を引っ張って、そう言った。
(エリザベス様が許可を?!)
リリアは青ざめた。何かがおかしい。女王様がそんなに簡単に承諾するはずがない。
「ちょっと待っててね。ミク、メインホールで待ってて」
ミクは立ち止まり、リリアをじっと見つめた。
「すごく疲れてるみたいだけど…大丈夫?」
と、心から心配そうに尋ねた。
「え? ええ、大丈夫…」
リリアは無理に笑顔を作った。
「お母さんにさよならを言ってから行くから、応接室に行ってて」
「じゃあ、私も一緒に行くね…」
「ダメ!」
リリアは強く言い放った。
「待合室で待っていてください…」
彼女はより優しく懇願するような口調で付け加えた。ミクは戸惑いながら瞬きをしたが、うなずいた。
「ええ…そこで待っています」
姫が去ると、リリアは壁にもたれかかった。
「うっ…」
深淵の領域がちらついた。
「リリアさん」
ローズの声が、突然、すぐそばから聞こえた。
「キャッ! 動かないで!」
彼女は歯を食いしばって囁いた。
「あの窓から出るわ」
リリアが意識を失いかけている間に、ローズのシルエットが徐々に現れ始めた。
「エネルギーを使わないで、あなたも気絶しちゃうわよ」
「だめだ…庭で見つかる…警備兵がいたるところにいる…」
「ああ、何とかするわ。私を出してくれ、リリアさん」
リリアは彼の目を見つめ、その決意を悟ると、完全にフィールドを解除した。ローズは猫のような敏捷さで窓枠へ飛び移り、リリアが言葉を続ける間もなく、塔の蔦の影へと消えていった。
一方、王室の薄暗い部屋で、エリザベス女王は森の地図を見つめていた。彼女の前に、黒いローブに身を包んだ五人の人影がひざまずいていた。ベネシアの精鋭暗殺部隊である。
「生け捕りにせよ、さもなくば殺せ。あの『騎士』を連れて来い」
女王は冷たい声で命じた。
「見つからないように。影からリリアとミクを追え。その男が存在するなら、娘が渡したものを回収した後、始末しろ」
「承知いたしました、陛下!」
暗殺者たちは煙のように消えた。
数分後、城の正門で、リリアは疲れを隠そうとしていた。ミクはかかとで跳ねながら彼女を待っていた。
「さあ、ミク!」
リリアは森をちらりと見ながら言った。ローズがもう遠くへ行ってくれることを願って。
「はい!」
二人は森へと向かった。彼女たちを執拗に追う一団がいることを知らずに。しかし、危険は王国内だけにあるのではない。
ベネシアから何キロも離れた、山の霧に隠れた場所で、いくつかの影が重い足取りで進んでいた。それは一人でも二人でもなかった。それは組織的な集団であり、そこから発せられる気配はこの世のものとは思えなかった。
森での出会いは、ただ王女と騎士との再会ではなく…大虐殺の始まりとなるだろう。
リリアとミクはついにベネシアの森の縁にたどり端いた。踊り子は木にもたれかかり、肺が焼けるように痛んだ。
「ふう…やっと着いた…」
リリアは息を切らしながら汗を拭った。
「さあ、リリア! 早く入ろうよ!」
ミクは待ちきれずに飛び跳ねながら叫んだ。
「え…でも、せめてちょっと座らせて…」
エネルギーが限界まで低下していたリリアは懇願した。
「でも…」
「騎士は動かないと思う?」
リリアは優しい眼差しで彼女を見た。
「いつも通り、そこで待ってるよ。行く前に果物でも食べる?」
ミクは躊躇したが、お腹がゴロゴロと鳴って裏切った。
「ええ…」
「ちょっとだけ、見張り小屋に入って休んでから行きましょう」
リリアは、自分の体が回復する時間を稼ぐためにそう言った。
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一方、リリアの家に向かう道中、ローズは速足で歩き、途中で出会ったフェリックスが後をついてきた。彼はローズの苛立ちを楽しんでいるようだった。
「クソ猫、家に帰るぞ!」
ローズは唸った。
「ニャー…」
フェリックスは全く無関心な様子で答えると、足を舐めるために立ち止まった。
「チッ…信じられない」
「おや? ローズ? もう大丈夫なの?」
メインの歩道近くで、アンバーの声が彼を驚かせた。
「ええ、もう帰る所だったんだ…」
ローズは平然を装って答えた。
「よかった。じゃあね」
アンバーは手袋を直しながら言った。
「リリアに、ダンサーたちが一週間後に僧侶を迎えるために集まることを伝えてね. 忘れないで!」
「…ああ…わかった」
(僧侶?)
ローズは、アンバーが急いで立ち去るのを見送った。
「ニャー…」
「クソ猫め」
ローズは、今度はあまり気乗りせずにそう繰り返した。リリアが家にいないことは分かっていたので、彼は森の方へ寄り道することにした。胸の奥にある何か、その引っ張られるような感覚が、彼を森の奥へと導いていた。
「ふう…食べ物で買収しないと、俺についてこないのかよ、この猫野郎」
ローズはリリアの小屋を取り囲む森のエリアに到着した。静寂が墓場のように重く、自然とは思えないほどだった。
「リリアさんはどこにいるんだろう? もう到着しているはずなのに…」
ローズは呟いた。彼が彼女を呼び始めると、その声が森の静けさを破った。
「リリアさん! どこにいるんだ?!」
リリアからの返事はない。しかし、木々の梢の間で、いくつかの影が動いた。
「これが女王が話していた騎士か?」
冷たい声が上から囁いた。
「誰が知ってる… お前が遅れさえしなければ、もっと早く追いつけたのに…」
「黙れ、あの鳥が邪魔をしたんだ…」
「ああ、そうだな… リリアは小屋の中にいるのか?」
「わからない… でも、ここにいるのはこの男だけだ。聞いてみるか?」
「バカ言え、味方なら何も教えてくれないだろう…」
「うーん… 殺しちゃおうか?」
「ダメだ。ターゲットじゃないなら、エネルギーを無駄にする価値はない… でも、見てよ。弱そうじゃないか」
「じゃあ… 邪魔だから片づけよう」
鋼の閃光が空気を切り裂いた。腐食性のネクロの気が込められた黒い短剣が、ローズの首筋にまっすぐに飛んできた。千の戦いで鍛えられた本能で、ローズは最後の瞬間、頭を横に傾けた。短剣は木の幹に突き刺さり、木を焼くようにシューッと音を立てた。
ローズは警戒態勢に入り、感覚が危険を叫んでいた。
「お前… 誰だ?」
暗い革の鎧とカラスの仮面を着た人物が、ゆっくりと枝から降りてきて、恐ろしいほど軽やかに彼の目の前に着地した。
「へへへ」
暗殺者は笑いながら、短剣を抜いた。
「やあ、若き騎士様。女王様からあなたを見つけるようおっしゃっていましたが… まさかこんなに若いとは…。鎧はどこへ行った?」
ローズは拳を握りしめた。首飾りはなく、鎧もなかった。目の前にいるのはベネシアの王室執行官であり、世間の目にはただのフローレスに過ぎないのだ。
ここまでお読みいただいた皆様、誠にありがとうございます!
この章をお楽しみいただけたなら幸いです。
第13章の公開でお会いしましょう!
Pura Vida!




