第10章:フローレスのジレンマ
みなさん、こんにちは!
ついに第10章をお届けします。楽しんでいただければ幸いです!
応援していただけると大変嬉しいです。
コスタリカよりご挨拶申し上げます!
Pura Vida!
朝の太陽が小屋の隙間から差し込み、ローズの顔を照らしていた。彼はゆっくりと起き上がり、ベネシアの新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
「んん……」
目をこすった。
「そうか、今日はその日だ」
(あの王女たちはどんな人たちなんだろう?)
ブーツを履きながら考えた。
(エリザベス女王の娘たちなら、みんなを斬首したくなるような性格じゃないといいけど……)
居間に出ると、焼きたてのパンとハーブティーの香りが迎えてくれた。
「おはよう、ローズくん。朝食を作ったよ」
リリアは輝くような笑顔で挨拶した。
「ありがとう。いただきます」
ローズはそう答えると、テーブルに着いた。
「召し上がれ」
彼女はそう言うと、彼が食べる様子を見つめた。ローズはパンをひと口噛み、少し躊躇してから口を開いた。
「ねえ、リリア……考えてたんだけど」
「ん? 何を?」
彼女は顎を手に乗せ、優しい眼差しで彼を見つめながら尋ねた。
「急いで仕事を見つけなきゃいけないってことだ」
(ズン!)
リリアの笑顔は一瞬で消えた。彼女の表情は曇り、目を細めた。
「え?」
「いや……いつもあなたの頼りにばかりいるわけにはいかないだろう」
ローズは空気の変化に気づかず説明した。
「あなたを助けたいんだ。ここに立っているだけじゃ無力に感じる」
(それにネックレスを探すためにも動かなきゃな)
「……」
リリアはうつむき、青い髪が顔を覆った。
「え? リリアさん?」
ローズは不安になった。
「どうしたんだ?」
「ねえ、ローズくん……」
彼女の声は小さく、傷ついたように聞こえた。
「自分のベッドを買うために働くように言ったから?」
「え?」
ローズは、会話の展開に戸惑い、まばたきをした。
「バカ!」
リリアは立ち上がり、怒りと悲しみで頬を赤く染め、ローズが言葉を紡ぐ間もなく小屋から走り去った。
「えっ?!! えっ?!!」
ローズはパンを手に、その場に立ち尽くした。
「何があったんだ?」
(怒ったのか? なぜだ? わからない……何か悪いこと言ったか?)
「ニャー」
フェリックスは床から、無言の裁きをもって彼を見つめた。
「彼女を追いかけたほうがいいか?」
ローズは猫に尋ねた。
「ニャー……」
フェリックスは、まるで頭の回転の遅い子供を相手にするかのようにため息をついた。
(はぁ……)
「猫の言うことがどうしてわかるのか、自分でもわからない。でも、お前の言う通りだな」
ローズは小屋を出て、辺りを探し始めた。
「リリアさん! どこにいるんだ?」
ついに、小川近くの柳の木の下に座っている彼女を見つけた。彼が近づいても、彼女は彼を見ようともしなかった。
「バカ」
「リリアさん?」
「バカね……ローズくんバカ!」
「リリア、どうして怒ってるんだ?」
ローズは頭をかき、本当に困惑した様子だった。
「バカ」
「それだけか?」
「バカ」
ローズは諦めの息をつき、彼女の隣に座ってしばらく黙っていた。
(これ、初めて会った時を思い出すな……長い時間が経ったのに、彼女のこと何もわかってないんだな)
「バカ……」
彼女は繰り返したが、声は弱かった。ローズはさっきの彼女の言葉を思い出した。
(ああ……ベッドの件か? まあ、そういうことか。そう考えると納得できる……彼 女は俺が自分のそばから離れたいと思っているんだな)
「ねえ、リリアさん……」
「……」
「あのな……ベッドを買うために仕事を探してるわけじゃないんだ」
リリアは耳を少し動かして、聞き入っていた。
「ただ、自分の金を持って、迷惑をかけずに家計を助けたいだけだ。遠くで寝るためのベッドを買うなんて、まったく考えてもいなかった……」
ローズは顔が熱くなるのを感じた。
「えっと……あそこに寝るのが慣れちゃったんだ」
リリアはゆっくりと頭を振り、まだ少し涙目だった。
「誓う?」
「え?」
(やっぱりそれだったのか)
「ああ、誓うよ」
「本当? 本当に?」
「ああ……」
「じゃあ……」
リリアは突然、嵐の後の太陽のように笑顔を見せた。
「許してあげる」
「ああ……」
ローズは安堵と疲労でため息をついた。
(でも、何も悪いことしてないのに……)
「さあ、行きましょう!」
リリアは元気よく立ち上がり、ローズの腕を引っ張った。
「今日は王女様たちが到着する日よ。準備をして、おめかししなきゃ」
「え? 俺も行くのか?」
「もちろん! 紹介できるかもしれないわ。とても可愛い子たちよ」
彼女は優しい口調で言った。
「ああ……ああ……」
ローズはそう呟きながら、小屋へと引きずり戻された。
(やっぱり、女ってわからないな……)
________________________________________
一時間後、ローズとリリアはベネシアのメインストリートに到着した。
そこは人であふれていた。街中が音楽と花と旗で賑わっていた。ローズは王国の正門を見上げ、胸に奇妙な痛みを感じた。それは人混みのせいなのか……それとも何かが起こりそうな予感なのか……。
ベネシアの巨大なオークと鉄の門が、厳かなきしむ音とともに開き、宮殿への道が現れた。群衆は歓喜の咆哮をあげ、バルコニーからは紙吹雪が降り注ぎ、歓迎のトランペットが空気を震わせた。
「リリア様……はあ……!」
カオリが駆け寄って、息を整えた。
「カオリ、遅いわ」
リリアは異様に厳しい口調で叱った。
「ごめんなさい。え? ローズ? ここで何してるの?」
「リリアに呼ばれたんだ」
ローズは答えたが、その声は遠くに聞こえた。
「みんなー!」
アンバーがいつもの元気いっぱいで群衆の中に現れた。
「ごめん、昨夜遅くまで起きてたんだ、へへ!」
「静かに」
リリアは水平線をじっと見つめながら命じた。
「来たわよ」
純白の光でできているかのような白い馬に引かれた金色の馬車が、中央通路を威風堂々と進んでくる。ローズは身を乗り出してよく見ようとした。
「ああ、来たわね。どうしたの?」
ローズは言葉を止めた。突然のめまいが、見えない槌で殴られたように彼を襲った。
(え?)
世界が回り始めた。
(どうしたんだ……? 頭が……ちっ、気絶しそう……何が起こっている?)
突然、千年のこだまのような歪んだ声が、彼の頭蓋骨に直接響いた。
「カ……ア……エ……プリン……エ……ア……オ……エネ……マイ……アル……カ……ア……エ……」
「え? プリン……何だ?」
ローズは両手をこめかみに当て、歯を食いしばった。視界がぼやけ、群衆は形のない色の斑点へと変わった。
「馬車の中で……」
今度は恐ろしいほど明瞭な声でそう言った。ローズは仲間たちを呼びかけようとした。喉が乾いていた。
「みんな……聞いてくれ……」
リリア、カオリ、アンバーは直立不動の姿勢で、王室の一行をじっと見つめていた。彼らは若者の苦悶の囁きを聞き逃していた。
「馬……車……が……そ……こ……に……」
(俺の鎧たちか?)
ローズは背筋を電気が走るのを感じた。痛みは耐え難いほどになった。ローズは息を切らし、体を震わせながら、立ち続けるのに必死だった。
「ちっ、ねえ……みんな……」
(聞こえないのか?)
(フラッ!)
世界が真っ暗になり、ローズは石畳の地面に倒れ込んだ。
「ん? 何か言った、ロ……?」
カオリが振り返り、目を見開いた。
「えっ!! ローズ!」
リリアもすぐに振り返り、意識を失って横たわる若者の姿を見て顔色を失った。
「リリア様、ローズが気絶しました!」
「ローズくん!」
リリアは身をかがめ、震える指で彼のバイタルサインを確認した。
「傷はない……ただ気絶しているだけだ。でもなぜ? なぜ今?」
「遠距離魔法攻撃か?」
アンバーは警戒しながら尋ねた。
「いいえ、敵対的なネクロフローの痕跡はないわ」
リリアは絶望的に呟いた。
「リリア様、儀礼です!」
カオリが警告した。
リリアは馬車を見やり、それからローズを見た。彼女の顎が危険な決意で硬直した。
「深淵の支配」
瞬く間に、ローズの体は空間の歪みに吸い込まれ、空中に消えた。
「リリア様!」
アンバーが息を呑んだ。
「何をしたのですか?」
「はあ……ネクロフローの領域に閉じ込めたわ」
リリアは額に浮かんだ汗を拭いながら言った。
「でも、長くは維持できない。絶えず私のフローを消耗してしまうわ」
「リリア様、急いで!」
(ローズ……)
三人の舞姫は護衛に加わり、城へと向かって出発した。ローズが運命の呼び声を聞いたその場所を後にしながら……。
この章をお読みいただき、誠にありがとうございます。
これから起こることに、ぜひご期待ください。
お楽しみに!
Pura Vida!




