1 前世の始まり
私の名前はレナータ・バレンタイン。
……いや、今はオフィリア・クロード。
今から三十年前、私はごく普通の女子高生だった。
けれど、ある不運な事故で命を落としてしまった。
あの日も、いつものように学校へ向かっていた。
その途中、突然、目の前の景色がぐにゃりと歪み始め——そして、私は意識を失った。
次に目を覚ましたとき、そこはどこまでも白い世界だった。
上下の感覚も、時間の流れも分からない。
ただ、目の前には見覚えのない人物が、なぜか土下座をしていた。
「本当にすまない!」
唐突な謝罪に困惑しながらも、私は冷静に現状を把握しようとした。
「えっと……とりあえず、状況の説明をしてもらえますか?」
するとその人物は、額を床に擦りつけたまま震える声で言った。
「そ、そうだな……。まず、名乗らねばなるまい。
私の名は久遠。時と永遠を司る神だ。」
「……神、ですか?」
「うむ。本来、私は時空の歪みを即座に修復し、被害を最小限に抑える使命を持っている。
だが、今回は対応が遅れてしまい——その結果、あなたを巻き込んでしまった。」
久遠は悔いるように目を伏せる。
「本来なら、あなたが通るはずだった場所に、ごく小さな時空の歪みが発生した。
しかし、その兆候が現れてから崩壊するまでの時間があまりにも短く、
私の力でも間に合わなかったのだ。」
久遠は悔いるように目を伏せた。
「本来なら、あなたが通るはずだった場所に、ごく小さな時空の歪みが発生した。
しかし、その兆候が現れてから崩壊するまでの時間があまりにも短く、
私の力でも間に合わなかったのだ。」
彼の声は深い後悔に満ちていた。
それは言い訳ではなく、ただ純粋に——自らの過ちを認める言葉だった。
私はしばらく黙っていた。
死の実感はまだ薄く、代わりに胸の奥に小さな穴が開いたような感覚だけが残っていた。
「……つまり、私はあなたのせいで死んだ、ということですね」
久遠は顔を上げずにうなずいた。
「そうだ。あなたの魂はまだ、寿命という糸を使い果たしてはいなかった。
本来なら、今もあなたは生きていたはずだ。
これは、完全に私の落ち度だ」
沈黙が落ちる。
白い世界の空気は静まり返り、私の心臓の鼓動だけがかすかに響いていた。
やがて、久遠は静かに言った。
「——償いをさせてほしい。
あなたの魂を、別の世界へと転生させよう」
私は小さく瞬きをした。
「転生……?」
「そうだ。
けれど、それは“やり直し”ではない。
あなたが歩む新たな人生——それは、あなた自身の選択の先にある未来だ。
私はただ、その舞台を整えるだけにすぎない。」
久遠の瞳には、どこか哀しげな光が宿っていた。
その優しさに触れた瞬間、胸の奥が温かくなる。
「……もし、転生できるのなら」
私はそっと言葉を紡いだ。
「今度こそ、楽しく生きたいです。
誰かに必要とされて、たくさんの人を笑顔にできるような、そんな人生を。
……聖女みたいに、清くて強くて、長く生きてみたい」
久遠は驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかに微笑んだ。
「——その願い、確かに受け取った。
あなたの魂は強く、澄んでいる。
ならばきっと、どんな世界でも光を見出せるだろう」
白い光が静かに世界を満たしていく。
私はゆっくりと瞼を閉じた。
次に目を開けたとき、そこには——
青空と鐘の音、そして、新しい私の人生が待っていた。
読んでくださった皆さま、ありがとうございます。
この物語は、ひとりの普通の女子高生が、神の過ちによって命を失い、
聖女として転生し、再び生を受ける——という物語です。
レナータとして戦い、オフィリアとして生きる彼女の姿には、
「どんな状況でも、希望と光を求める心」を描きたくて書きました。
聖女としての戦いのシーンや、神とのやり取りには、少し荘厳で重い描写もありますが、
それもまた彼女の成長や再生の象徴だと思っています。
読者の皆さまが、物語の中で少しでも光や希望、そして楽しさを感じていただけたら幸いです。
また、応援や感想をいただけると、とても励みになります。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
そらより




