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第五章:戦乙女の求婚

緊急軍議の中で夜叉王丸は事の顛末を詳しくバール王達に伝えた。


「随分と部下思いな頭だ」


バール王は感嘆とした。


「殺すには惜しい男です。それに殺したら部下達が黙っていません」


夜叉王丸は素直な意見を述べた。


「捻り潰せば良いのではないですか?」


アビコールが物騒な事を言った。


「それでは飛天殿が嫌がります」


バール王がアビコールの意見を却下した。


「飛天殿はどう解決を望んでいます?」


「私としては、更生の機会を与えたいと思います」


ウリクス王はなるほどと頷きバエル王も納得した。


「しかし、相手がヤクザ者となると普通の職人や店などでは働かせてもらえないな」


ビレトとザパンはむぅと唸った。


「私としては、我が軍に入隊させて兵士として採用したいと考えております」


「飛天。貴様はまたそのような事を・・・・・・・・!!」


ビレトとザパンの二人は明らかに目くじらを立てた。


「彼らは職がないから山賊紛いの行動を取りました。更生の余地はあります。それに奇襲とは言え、東の兵を一網打尽にした実力は惜しいです」


「流石は飛天殿だ。いや素晴らしい。このバールがお力を貸しましょう」


バール王は胸をドンッと叩いた。


「そのヤクザ者を我が軍が引き取り兵士として鍛えた後で飛天殿の軍に入隊させましょう」


そうすれば問題ないと力説するバール王。


その横でアビコールが悔しそうに顔を歪めた。


恐らくバール王と同じ考えをしていて、それを出汁に夜叉王丸と更に親密になろうとしたのだろう。


しかし、そこはアビコールに一歩後れを取っているバール王。


もう遅れを取らないとばかりに話を進めた。


「私が引き取れば問題ないでしょ?」


口調は穏やかだが、反論は許さないと威圧的な空気が漂っていた。


「・・・・承知しました」


ビレト、ザパン、アビコールは沈んだ声で承知し、ウリクス、バエルに至っては文句がないのか快く承諾した。


「飛天殿もよろしいですか?」


「はい。色々とご迷惑を掛けます」


ペコリと一礼する夜叉王丸。


「いやいや。飛天殿の為ならこの程度は大丈夫ですよ」


夜叉王丸の手を握り堅く握手を交わした。


「立派な兵士に育てて飛天殿に献上致しましょう」


バール王が握手をする場面をアビコールが悔しげに見ているのを夜叉王丸は少し苦笑した。


緊急軍議が終わると夜叉王丸はバール王と一緒に山賊達の元へ行った。


「お前らはバール王が身柄を拘束する事になった」


山賊達は地獄最大の王、バールの名前が出されて瞠目した。


「私がバール王だ。主たちは、これから私の元で軍隊として訓練を受けて貰う」


「主たちのした事は許されない事だが、今回は特別に更正する機会を与えた。よって、これからは心を入れ替えるように!!」


山賊達はバール王と夜叉王丸に心から感謝した。


「これで一件落着だな」


夜叉王丸がセブンスターを銜えて一息いれようとした時だった。


「ちょっと!何が一件落着よ!!」


ジークルーネの怒鳴り声で夜叉王丸はセブンスターを取り落としそうになった。


「あー、お前がまだ残っていたか」


はぁ、と溜め息を吐きながらジークルーネに向き直った。


ジークルーネは泥だらけで擦り傷もあった。


彼女を抑えているシルヴィア、シャルロットも泥だらけだった。


恐らく彼女を抑え込むのに二人掛かりでやって泥試合さながらの乱戦をしたのだろうと夜叉王丸は思った。


「俺からオーディーンの爺に言っておくから安心して北欧に帰れ」


落としそうになったセブンスターを指から出した火で点けながら言った。


北欧神界の主神オーディーンは既に隠居したが、大御所として今でも影響力は北欧を始め各界にも影響がある。


「嫌よ!貴方を倒すまで北欧には帰らないって決めたの!!」


子供のように喚くジークルーネ。


「んな事を言われてもなー。お前の腕じゃ俺には勝てないぞ」


さっき負けたばかりだろ?と言う夜叉王丸。


「黙って!!私は貴方を倒すまではぜぇぇぇぇたいに北欧には帰らないわ!!」


「しつこい女は男に嫌われるぞ」


「貴方に言われる筋合い無いわよ!!」


最もだ、と言いながら夜叉王丸は嘆息した。


「おいっ。皇子様に対して失礼だぞ」


シルヴィアが怒った。


「そうよ。貴方もワルキューレなら少しは潔くしなさい」


シャルロットもジークルーネを叱りつけた。


「貴方達には関係ないでしょ!!放しなさいよ!放せー!!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐジークルーネに夜叉王丸は額を抑えた。


「頼むから大人しくしてくれ。頭痛がする」


はぁ、と溜め息を漏らしたが、直ぐに顔を上げた。


「・・・・シルヴィア。シャルロット。放してやれ」


二人は苦労して捕まえたジークルーネを放す事に渋面を浮かべたが、主人の命令となれば従うしかない。


解放されたジークルーネは腕を組んで夜叉王丸を睨んだ。


「貴方も知ってるでしょ?ワルキューレにとって負ける事は最悪な屈辱」


「あぁ。知ってる」


「私は大勢の前で貴方に負けたわ。し・か・も!剣も抜かず扇でね!!」


「別に剣じゃなくて扇でも勝負は出来る」


「扇なんて、ただ扇ぐだけの道具でしょ!!」


「俺の国では扇術っていう武術がある」


「貴方の国の武術なんて知らないわよ!!」


ああ言えばこう言う形で売り言葉に買い言葉だ。


「俺にどうしろと言うんだ?」


夜叉王丸は早く帰りたいと思いながら聞いた。


「恥を掻いたまま帰るのは嫌。だから、貴方が負けるか私と結婚しなさい!!」


今度こそセブンスターを落として夜叉王丸は固まった。


いや、その場に居た全員が固まった。


「・・・・一つ聞いて良いか?」


少し間を置いてから質問した。


「何よ」


「何で結婚に行き着くんだ?」


「貴方が私を初めて負かした男だからよ」


何を言っているとジークルーネは怒った。


「私を初めて負かした男なんだから責任を取りなさいよ」


何とも自分勝手な事だと夜叉王丸は思った。


「俺はお前と結婚する気も負ける気もない。北欧に帰れ」


夜叉王丸は知らないとばかりに背を向けて歩き出した。


「ちょっと待ちなさいよ!!」


「うるせぇ。俺は帰る。シルヴィア、シャルロット。その女に鎖でも縛り付けて北欧行きの輸送船に乗せて送り返せ」


固まっていた二人は息を吹き返したようにジークルーネを引っ立てた。


「畏まりました!!さぁ、来い!!」


「了解しました!!」


「ちょっと!!私を解放しなさいよ!!」


「黙れ!!この不届き者が!?」


「そうよ!飛天様に責任を取って結婚しろ何て馬鹿もいい所よ!!」


三人は口争いをしながら去って行った。


後に残ったクレセントは夜叉王丸の後を黙って追った。


何だかんだと一騒動が起きて演習は終了した。


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