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第二十二章:軍団の編成

ラインハルトは毎日の訓練を終えて射撃場へと足を運んだ。


「遅くなりましたっ」


慌てて中には入ると、そこには彰久が片手で大型のリボルバーを撃っている最中だった。


右手に持った黒いリボルバーを撃ち続ける彰久の姿を、ラインハルトは少し茫然と見ていた。


何処か後姿が夜叉王丸と重なって見えたからかもしれない。


彼の後ろには夜叉王丸達とジークルーネ、クレセントがいた。


「ラインハルト。何をぼーとしているんだ」


夜叉王丸に声を掛けられてラインハルトは慌てて我に返り歩み寄った。


「いえ。ただ、師匠と何となく似ていたので」


「私が伯爵様と似ているなんて、光栄だよ」


彰久は苦笑しながら振り返った。


「彰久さんは、銃を撃つのに慣れていますね」


「昔、外国に出張で長期住んでいたからね」


ラインハルトは納得した。


「おい。それよりお前は射撃を練習しろ」


ダハーカに小突かれてラインハルトは慌てて射撃台に立ち懐からエンフィールドNO.2を取り出した。


「それは、エンフィールドだね?」


「えぇ。知っているんですか?」


「私の友人だった男が、クラシックな銃に詳しくてね」


「これ改造してあるんです」


シリンダーの部分を延長させた上でバレルなども強化して、357マグナム弾も撃てるようにしたと話すラインハルト。


「それじゃ、一緒に撃つかい?」


「はい」


二人は357マグナム弾を装填した。


そして構えて同時に発砲した。


彰久の弾は4発が胴体部分に命中した。


ラインハルトの弾は頭の部分に2発、胴体に3発が命中した。


「やっぱり君の方が上手いね」


「いえ。僕もまだまだです」


「あぁ。お前は、まだ半人前だ」


ダハーカが笑いながら叱る。


二人は、その後も射撃を繰り返した。


ジークルーネの方は、射撃を止めて二人を見続けていた。


その途中で毒舌を吐いたりしては夜叉王丸に怒られて逆切れしてクレセントに抑えられて喚いた。


暫く射撃を繰り返しているとジャンヌが夕食の準備が出来た事を伝えに来たので、今日の訓練は終わった。


夕食の間、ラインハルトと彰久は互いに話を盛り上げて、それを皆は優しそうに見つめていた。


夕食が終わった後、夜叉王丸は自室へと戻り一人で酒を飲んでいた。


「・・・・・ふぅ」


ロック・グラスを置いて息を吐いた。


ふと夜叉王丸は軍団の事を考えた。


天魔大戦から数十年が経ち、天界との諍いは無くなった。


しかし、油断は出来ない。


天魔大戦で大勢の部下が命を落とした。


前々から軍団を立て直そうとは考えていたし、演習の折にも良い相手が居たら勧誘するつもりでいたが、ジークルーネとクレセントの登場で出来なくなった。


「・・・近い内に軍とかに行って、探して見るか」


近頃は、骨のある奴らが減ったと感じながら夜叉王丸は明日にでも軍に手紙を書いて勧誘の事を話そうと思った。


翌日の朝、何時も通り低血圧の夜叉王丸はジャンヌに優しく起こされて眼を覚まして顔を洗い、食卓の場へと向かった。


既に朝食の準備は出来ていて、皆も座っていた。


「遅いわよ」


ジークルーネが椅子に踏ん反り返りながら文句を言ってきた。


「・・・・・・・」


夜叉王丸は低血圧のため頭が回らずに無視して椅子に座り食事を開始した。


他の者も食べ始め、ジークルーネも文句を言いながら食事を始めた。


真夜達は食事を終えると直ぐに鞄を持って学校へと向かった。


食事を終えて片付けた後、ラインハルトも学校へと行き、夜叉王丸達はバロンへと向かい何時も通りの日常を始めた。


バロンに着いた夜叉王丸は昨日の内に考えていた軍団の勧誘について軍に送る為に手紙を書き始めた。


「何を書いているんですか?」


彰久が興味深げに聞いて来た。


「軍の事だ。俺の軍団は人手不足だから、そろそろ新しく編成しようと思って骨がありそうな奴を勧誘する許しを願う為に書いている」


夜叉王丸は皇子なのだから、そんな手紙を書かなくても良いと思ったが、筋を通すのだろうと思い言わなかった。


「その手紙を誰に送るんですか?」


手紙を書き終えた夜叉王丸に彰久は聞いた。


「先ずは陸軍のビヒモスだ」


陸軍はビヒモスが治める軍団で、天魔大戦でも数多くの天使軍を蹴散らした軍団であり主力軍だ。


「次に海軍、空軍に送る」


3軍から許しを得たら、勧誘を始めると夜叉王丸は言った。


「なるほど」


彰久は納得した。


「さて、鵺」


夜叉王丸は鵺の名を呼んだ。


すると何処からともなく黒装束に身を包んだ鵺が姿を見せた。


ジークルーネと彰久は鵺の姿に驚いたが、鵺はまったく無表情だった。


「鵺。この手紙をビヒモスに届けてくれ」


「承知しました」


鵺は夜叉王丸から手紙を受け取ると懐に仕舞い、一礼してから姿を消した。


「い、今の方は・・・・・・・・・?」


「あいつは鵺。こいつに絶対的に誓う影さ」


ダハーカが鵺の事を説明した。


「何だか気味悪いわ」


ジークルーネは嫌な奴だと言った。


「あいつにはあいつの良い所があるんだ。悪口は言うな」


夜叉王丸はジークルーネを窘めた。


セブンスターを取り出して銜えジッポ・ライターで火を点けた。


一仕事終えた煙草は美味いと思いながら煙を吐く。


ジャンヌは厨房でコーヒーを淹れておりヴァレンタインも一緒だ。


「あ、そう言えば美夜ちゃんを迎えに行くの忘れていた」


「あらあら。今頃、美夜はベルゼブルに可愛がられながら飛天さんを怨んでるわよ」


リリスが面白そうに笑った。


「まぁ、忘れていたと素直に謝るしかないか」


夜叉王丸は、バロンを閉めてから迎えに行こうと思った。


その間、リリスの予想は的中しており美夜はベルゼブルに可愛がられておりベッドから起き上がれなかった。


「・・・・ひ、てん、さん、・・・・・うらむわ」


ベッドに身体を預けながら美夜は枯れた声で怨み事を養子に言ったのは言うまでもないだろう。


昼食の時間になったが、バロンには未だに客が居ないのは最早、日常と化したと言っても良いだろう。


その間、夜叉王丸は新しい軍をどうするかについて考えていた。


元の軍団は、資金が足りなかった事から初戦などで苦戦を強いられたり、兵站を思うように運用する事が出来なかった。


そのため敵軍から物資を横取りしたりとしてきたが、今回は資金もある。


それを考えると大々的に軍団を一から作り直すのが良いだろうと判断した。


『先ずは骨組み的な組織図を考えてから他の奴らの意見を聞こう』


夜叉王丸は紙に組織図を書き始めた。


先ず生き残りが多い部隊から組織を書く事にした。


一番、被害が少なかった部隊はダハーカが指揮する奇襲部隊。


飛竜に乗り天魔大戦でも大きな戦力となり手柄を立てたが、被害は少なかった。


『今の数よりもう少し欲しいな』


今の人数よりもう少し多くしようと考えた。


次に被害が少ないのは砲兵部隊だった。


茨木童子が指揮する部隊で主に後方から砲で相手の陣地などを攻撃していたので、被害は少なく済んだが、砲の威力・距離などが問題であるのを痛感させられた。


こちらの部隊は砲など新しい兵器を運用できるようにして、更に自己防衛の兵器も強化するべきだ。


3番目は密風部隊。


鵺が指揮する隠密部隊で総力戦では、殆ど表立って戦う事はなかったのだが、白兵戦での戦いもあり多くの者が命を落とした。


鵺の報告では、白兵戦での武器や戦いが少なかった事から被害が多いという事であったから白兵戦と武器の改善をする。


残りの部隊は壊滅に近い状態であった。


突撃部隊、戦車部隊、騎兵部隊、弓弩隊、この4つは、最も被害が大きく突撃部隊などは生き残った兵が30人ほどで残りは全員が討ち死にした。


戦車部隊と騎兵部隊、弓弩隊も同じではあるが、敵の戦車や騎兵が重武装で魔術などの援護などもあり被害が多かった。


『この4つの部隊は、新しく改造して強化するべきだな』


残った兵から詳しく状況を聞きながら、改善しようと決めた。


更に他にも新しい部隊を幾つか作ろうと考えた。


兵站、情報、機動、斥候など他の軍団にはあるが、自分の軍団には無かった部隊を作ろう。


それが大戦で戦い死んだ戦友達の為に出来る唯一の償いであると夜叉王丸は考えた。


しかし、それと同時に遊撃隊を作ろうとも考えた。


遊撃隊があれば、挟み内にも出来る。


それを任せられると者となれば・・・・・・・・・・


『・・・・草神彰久』


獣、獣人である草神彰久を長に新たな遊撃隊を作り上げれば、恐らく戦いにおいて明らかに有利に立てる。


獣人の部隊なら並みの兵より強靭であるし、サバイバルなどでも有利に立てる。


『まぁ、先ずは他の奴らを集めて会議を開かないと分からんな』


というかその前に何人の兵が自分の軍団に集まるかという事が問題であると夜叉王丸は考えた。


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