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32話 スキル総動員

「シンオーガ……やっぱり存在感が段違いだ」


 ライマルは強大な魔物に向かって淡々と進んでいく。まったく怖くないなんてことはありえない。鋼化のスキルをぶち抜かれるかもしれない。そんな恐怖もある。だが、ライマルは試したかった。今の自分の力は、どこまで伸びたのか。この圧倒的な魔物と戦えるほどになれたのか。


 それを証明する時だ――!


 ライマルは走り出した。軍人たちが回避に専念する中を、ライマルが突っ切っていく。


 ジャンプ力と鋼化で砲弾になるッ!


 膝を下げ、ライマルは跳んだ。斜めに飛翔し、シンオーガの顔面に頭を激突させる。激突の衝撃で空中に跳ね上がったライマルは下を見た。シンオーガがよろめき、体勢を崩している。効いた!

 そう思ったのも束の間、敵はライマルを捉えた。左手が振るわれる。


「うわあ!」


 叩き落とされ、ライマルは地面にめり込んだ。怪力を発動して岩盤を振り払い、すぐに穴から出る。

 シンオーガはライマルに狙いを定めたようだ。咆哮し、向かってくる。


「立っている者だけでよい! 放てッ!」


 隊長の指示で、立っていた六人の軍人が剣の切っ先をシンオーガに向けた。水属性魔法、水の槍が放たれる。時間差攻撃だ。全員が少しずつ発動のタイミングをずらして撃ち出す。


 シンオーガの左脇腹に一発目の槍が命中。やや遅れて二発目、三発目と続く。しかもすべての攻撃が同じ部位に集中している。さすが軍人。相当に鍛えられている。


 多段攻撃を受けて、シンオーガの硬かった体表に穴が開いた。そこから猛烈な瘴気が噴き出す。まともに吸ったら意識を持っていかれそうなくらい危険な濃さだ。


 ライマルは距離を取って体勢を立て直す。

 膝を落として構えたが、シンオーガは背中を向けた。咆哮。これまで見せなかった突進を繰り出した。


「うわあああっ」

「ぐふうっ……!」


 軍服のうち二人が振り回した右腕の餌食になった。一人は血を吐きながら宙を舞い、もう一人は体を奇妙な形に折り曲げて地面を転がった。


「がはっ」


 さらに、その先にいた一人もやられた。叩きつけられた右拳で完全に潰されてしまう。あれではもはや原形も残っていまい。


「散開しろ! 固まると全員やられるぞ!」


 隊長の指示で軍人たちが再び散った。彼らの動きにも戸惑いが見える。

 シンオーガが大きく息を吸った。

 強烈な火炎放射が放たれる。周辺一帯をなぎ払うように火炎がなぶる。

 巻き込まれた軍人と一人の冒険者が火だるまになってのたうちまわる。


 相手の動きは弱まる気配を見せない。そもそも抱えている魔力が膨大すぎる。このままではこちらのスキルにリミットが来て負ける。

 何か弱点はないのか。ライマルは必死で探る。

 シンオーガが炎を吹き終えると、ライマルを睨んだ。


 ――来る。


 ライマルは重量化と鋼化、怪力の三つを発動して構えた。

 魔物が地面をえぐりながら走ってくる。


 どこに合わせればいい――?


 受け止めようにも手を合わせられる場所がない。相手が巨大すぎるのだ。


「くそっ!」


 ライマルは踏み込み、相手の拳の下を縫って右足にしがみついた。これでさらに重量化を強化すれば、シンオーガといえど動きが鈍るはずだ。


「はっ!」


 重量化を限界まで発動すると、シンオーガの足が地面に沈み始めた。敵の手が伸びてきてライマルを引き剥がそうとする。ライマルは怪力の効果で、シンオーガの足に巻きつけた腕を離さない。


「誰かーっ! 今だ! 攻撃してくれええええ!!」


 叫んだが、誰も動かない。

 隊長も、部下の軍人たちも、ガーケルたちも、みんなシンオーガに近づくのを恐れている。下手に注意を引きたくない。そんな気持ちさえあるのかもしれない。


 攻撃してくれなきゃ僕の行動は全部無意味になる……!


 引き剥がそうとするシンオーガと、しがみつくライマルの攻防が続く。その場で引っ張り合っているだけだが、ライマルは死ぬ気で張りついている。外から見たらおかしな光景かもしれないが、これでも相手の移動を封じているのだ。この好機に誰も動けないのでは――。


 スッと、横に影が滑ってきた。ドスッと音がして、シンオーガがすさまじい怒声を放つ。相手の上体が大きく傾いた。ライマルは重量化を解除して離れる。


 シンオーガが背中から地面に倒れ込んだ。


「今度こそお願いします!」

「そ、総員、魔法で攻撃せよ!」


 隊長が言って、部下たちもようやく動いた。水属性、氷属性、風属性の魔法が次々にシンオーガを襲う。ダメージが通っているのか、相手も激しく暴れている。


 ライマルは、隣にやってきた影を見つめた。気配を殺して接近し、敵の左足――その親指の爪の間に剣を刺し込んだ少女は、ちょっと得意げな顔をしていた。


「待ってたよ、リーシャ」

「お待たせしました、ライマル」

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