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10話 一目置かれる

「毒竜の討伐、確認させていただきました」


 夕方。

 新たな服に着替えたライマルとリーシャはギルドに赴いた。そこで受付嬢のシーナから報告を受ける。


「上層部の会議では、今回の貢献を鑑みて、お二人をBランクに昇級させることを決定いたしました」

「おー、すごい早い!」


 リーシャの声が弾む。

 登録した段階では誰もがDランクから歩み始める。ガーケルのパーティも、そうやって苦労の末にAランクまで上がっていった。だが今回は、依頼を一つ完遂しただけでいきなりBランクに上がった。これはかなりの昇級速度と言える。


 ……もうガーケルたちと差が一つしかないのか。


 あまりの早さに、ライマルは実感が湧かない。


「ギルドの認定プレートを更新させていただきます」


 シーナが話を進めた。ジノスのギルドに登録した際、首にかける小さなプレートを受け取った。Dランクの白いプレートだった。それを返して、新たに赤色のプレートを手にする。


「毒竜討伐の依頼者はこの街でも有数の資産家です。お二人の話をあちこちに広めているようですから、期待される方も増えるでしょう。引き続きこのギルドで活躍していただければ嬉しく思います」


 穏やかに話すシーナ。

 ギルドに期待されるなんて夢のようだ。そしてこれこそが、冒険者になった時、ライマルが受けたかった言葉だった。


 ライマルは幼い頃、森に迷い込んだところを魔物に襲われた。そこで助けてくれたのが二人組の冒険者だった。男二人のコンビで、一人は盾で敵の攻撃を防ぎ、もう一人のバトルアックス使いが圧倒的な腕力で魔物を制圧する。息の合った二人の戦いぶりに、ライマルは心を奪われた。


 冒険者になりたいと家族に話した時、「お前はのろまだから無理だ」と猛反対を受けた。「盾で味方を守る」と話したら、お前なんかじゃすぐに死ぬと余計に反対された。


 結局、家族の言い分をすべて無視して家を飛び出した。父と母、兄がいたが、誰もがライマルに小言をいう時に同じ言葉を頭につけた。


 ――お前はのろまなんだから。


 ずっと馬鹿にされてきた家から離れることに抵抗はなかった。今も家に帰るつもりはない。

 あの日、カフーのギルドへ向かって走ったライマルの胸の中は期待でいっぱいだった。


 ――あなたを頼りにさせてほしい。


 いつか、誰かにそう言ってもらいたかった。そのために冒険者になる。ライマルに迷いはなかった。

 その後の人生は苦難続きだったが、今ようやく報われようとしている。

 ライマルは首にかけたプレートをしっかり握りしめた。


「皆さんの期待に応えられるよう、頑張っていきます」


 はっきり返事をすると、隣でリーシャが嬉しそうに微笑んだ。


     †


 SSランクの毒竜を討伐したことで、ライマル・リーシャコンビの名はたちまちジノスのギルド内に広まった。

 さらに、これはあまり公な話にはなっていないが、荒くれガランを黙らせたことも評価されている。


「みんなに一目置かれる気分はどう?」

「まだ慣れなくて落ち着かないな……」

「最初はそんなもんかもね。そのうち普通になっていくよ」

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