95 柔道部の合宿が始まる
夏休みも残すところ10日。
マルミ、タマミ、キヨミの提案で決まったパラ高柔道部の夏合宿が始まった。
部員の10人全員が参加。
パラ高も進学校なので塾の夏期講座を予定していた面々もいるが、男女比1対12の世界。
勇太が参加すると聞いた親の方が、参加命令を出している。
ちなみにオール女子合宿なら、親は夏期講座を優先しろと言う。
そんな現代日本だ。
◆
「よーし。学校の合宿所に荷物を運び込むぞ」
今回の勇太は副部長兼、料理係。
部長のルナ以下、部員達には練習、疲労回復に集中してもらおうと決めている。
現在は朝の8時。タイムスケジュールは着替えたら昼の12時まで練習。そして勇太の昼ご飯。
午後は水泳部の好意により、プールの時間と昼寝。
少し涼しくなった夕方にまた柔道の練習をして、勇太が作った晩ご飯を食べて就寝。こんな予定だ。
勇太は、全力でみんなのサポートをするつもり。
体育館の畳敷きから、這いずり回って柔道の基礎トレ。
「お願いします!」
「うし!」「よし!」「おっしゃ!」
部長ルナの掛け声とともに、練習開始。
なぜか他の部活から見物がいるが、それもお約束。
まずは秋の新人戦を見越して、ルナ、マルミ、タマミ、キヨミの有段者4人で乱取り。
勇太は残り5人、白帯組の投げ技の練習台になった。
実際に思い切り投げさせて、タイミングと感覚を養わせようと思った。
下手なやり方は怪我の危険性もあるが、勇太は女神印の回復力の出番だと思っている。
肩の脱臼までは許容範囲だ。
「う、うりゃっ」
「こらっ、そんな浅い踏み込みじゃダメ」
サイガナナ1年生、162センチに背負い投げをさせてる。真剣指導だ。
「は、は、はいっ」
「そうそう、そんな風に腰に俺を乗せて、完全に背中に担いで」
「は、はい。ぐぬぬぬ」
勇太が自分で少しジャンプしてサボートあり。
「今だ、投げろ!」
「やああああ!」
斜めの体落とし気味だが、今度は勇太を投げた。
ぱーん、と畳の音が鳴って受け身を取った勇太の上に、勢い余ったサイガが倒れそうになった。
勇太を避けようとしてバランスを崩したサイガが、勇太のはだけた胸に頭を突っ込んだ。
勇太、しっかりキャッチ。
「ほら~、しっかり押さえ込みの体勢に入らなきゃ。こんな倒れかたしたら、逆に捕まっちゃうぞ~」
「あ、は、ひゃい」
「やり直し!」
「え、えっ、はい、やります」
サイガは、パニックだ。だけど指示されるままに、勇太を投げて袈裟固めに移った。
投げから押さえ込みへの連動技を指導されるのは初めて。そのコーチが勇太だ。
勇太は多忙で、練習する機会も意外と少ない。免疫が足りない。
鼻血が出そうだ。
インナーなしの勇太の柔道着をしっかりつかめと、笑顔で怒られて、勇太の胸に親指当たる。
男子へのセクハラを恐れて踏み込みが甘いと、背中で密着せよとドキドキ指令。
投げることができたあとは極めつけ。のし掛からないように倒れようとしたら、やり直し。
寝技の型に入ったら終了かと思えば、下から抱き留められた。30秒は、離しちゃいけないそうだ。
下から脱出を試みる勇太がエロ可愛いくて、故意に頬を密着させても怒られなかった。
男子を襲っているような錯覚に興奮してしまった。
期待して柔道部の入部テストを受けたが、ちょっと刺激ありすぎ。
勇太と、こんな接触やセック●をやって平気な顔ができるルナ部長は、まさに魔王だと思っている。
スマホを構えているギャラリーがいる。
勇太にあ~んしてクッキーをしてもらっただけで、知り合いから電話ありまくりだった。
この密着コンボに対する反応が怖い。
そういう訳で、残りの4人も必要以上に汗をかいた。
午前11時。
「は~い、あとは俺を投げたときの感覚を忘れないように、ペアになって型の反復練習ね~」
「うす!」「はい!」
「じゃあ俺は、昼ご飯の準備するね~」
「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」「はい!」
「ははは。そんなに期待しないでよ。メインは家から持ってきた唐揚げ。今からソーメンゆでて、おにぎり握るからね」
「男子おにぎり・・」
「・・あ、あの手でニギニギ?」
「あとで莫大な請求書がくるとか?」
統計では、男子の手料理を振る舞われる女子は、220人にひとり。
男子おにぎりを実食した女子は280人に一人。
部活合宿中の男子手料理はデータなし。
そもそも現代日本では、運動部合宿に男子が混じることはない。
優しく距離感も近い勇太に、ダメ元で合宿参加を頼んだマルミ、タマミ、キヨミの三姉妹。さすがにNGかと思っていた。
OKが出たときは、3人して驚愕した。




