87 男子の密集地帯と過疎化現象
東京見物をしているうちに、帰る時間が近づいてきた。
見たいところは、パラレル秋葉原から短時間で行ける範囲にない。そこで執事カフェでお勧めされた店に行くことにした。
パフェが売りの店だが、男子同伴限定店。
男女比1対12で強気すぎと思ったが、都会だから成り立つ商売だった。
紹介されたお店に入ると、40人くらいお客さんがいた。ただし、グループとしては6つ。
お店には長袖のシャツを着たハンサム男子が6人。そこに4~10人くらいのハーレムメンバーが一緒にいる。
勇太は、たまにならこういうのもいいと思った。女子は多いけど、みんな自分の群れの男子だけを見ている。
知らない女子には注目されないから、男子の気分が落ち着くのだ。
勇太が転生して約3か月。いつも女子に注目されてきたが、昨日まで3日間のインターハイ会場での視線は尋常ではなかった。
自分で考えていた以上に気疲れしていたようだ。
「ルナ、こういうのは初めて?」
「男の子に連れてきてもらわないと入れない店なんて、縁がないと思ってたもん。初体験~」
そうしていると、この中では少ない4人の女子を連れた男子に話かけられた。
「ご、ごめんね、急に。僕はナラシノ秋。君ってネットで見かけるカフェ店員の坂元さんですよね」
「あ、そうですよ~」
「女性の中に混じって仕事をするって、勇気があるよね。羨ましい」
勇太は、こう言われるのは何となく分かった。梓やルナに色々と予備知識をもらっていた。
秋君は青森県の田舎出身の20歳。
性格は地味らしいが、勇太から見ても中性的で色白のハンサム。
小3くらいから美貌が特に目立ってきて、何度も知らない女性に声をかけられたらしい。
田舎となると男子などゼロ地域もある。ある時から身の危険も感じるようになった。ヤンキー女子にまとわりつかれたこともある。
3人の母親と相談して防犯体制が整っているパラレル青森市に移ったが、市街地の規模が小さいから防犯有効範囲が狭い。
うっかり郊外を1人で歩いていて、特攻服を着た女子数人にいきなり手を捕まれた。
その時、通りかかった4人の空手女子に助けられ難を逃れた。
2歳年上の彼女4人とは、その時からの付き合い。普段から護衛役をしてくれた。
東京には17歳で出てきた。イラストの勉強を希望した。
東京を選んだのは、男子保護の防犯体勢が広範囲で整っている。どこよりも男子が住みやすいから。
空手女子4人はみんな顔に自信もない。身を引く気だった。
しかし秋君の方から正式な交際を申し込み、一緒に東京に来た。常に誰かが付いていてくれる。
言い方は悪いが、横にいる4人もゴツイ。対して他のグループの取り巻き女子は、みんな華やかだ。
しかし秋君は長い経験のせいで大半の女子が怖い。
美女でも危険な人にばかり接してきた彼は、本気で自分を守り続けてくれた4人の女性が好きになり、先月5人で入籍したそうだ。
「へえー、そういう彼女の選び方をする人もいるんだな」
とは返事した勇太だが、奇しくも自分の真横にいるルナが柔道の有段者じゃねえかと気付いた。
現時点では勇太よりも強い・・
ルナは、秋君の彼女達と話している。
『まさかの』モテる男子ゲットというとこで、共通点がある。
「とっても幸せですよ」
「まさか、私達に秋君が交際を申し込んでくれるとは思わなかった」
「ルナちゃんは、ネットのホットランキングによく出てるよね」
「あ、あはは。私も勇太が良くしてくれるのが、今でも不思議ですね~」
ルナはルナで、共感できるお姉様がたと談笑していた。LIME交換もした。
余談ではあるが、かつては日本政府だけでなく、各国の問題点に男子の都会への集中化があった。
防犯カメラ、スマホが充実する前は、ボディーガードが男子を守ってきた。
田舎よりも都会の方が人材が集まりやすかったし、男子のコミュニティーを作って複数女子に住処を守ってもらうこともあった。
ただそれだと、男子が都会に集中して田舎で子供が産まれなくなると懸念された。
かつて江戸幕府の将軍・徳川家綱子制定した『男子貸与の心得』では、身分が低い家に産まれた男子は多数の農村にレンタルされまくった。
なんとなく、昔の人も近親結婚を重ねると子孫が危険なのは分かっていた。
だから、かなり離れた幾つかの村で男子数人がシェアされ、数年ごとに移動させられ、子供を作らされまくった。
そういう切羽詰まった理由から、遺伝子研究は勇太の前世よりも発展している。
今現在は、その心配はない。
人工授精の技術があるため、男子が住んでいない街にいても女子は子供は産める。
だから男子がどこに移動しても、文句は出ない。
あとは、女子の感情の問題である。
秋君とはLIME交換して別れた。2人目の同性友人ができるかも知れない。
ルナと2人でパフェを堪能して、大急ぎで東京駅からリニアに飛び込んだ。
「ごめんなルナ、ちょっと執事カフェやパフェの店で時間食い過ぎた」
ルナはにこにこしている。
「勇太・・」
「なに」
「楽しかったね」
それで十分だった。




