84 誓いのちゅーを
インターハイが終了した夜。
勇太ファミリーも茶薔薇学園柔道部もみんな、東京にもう一泊した。今夜はみんな、それぞれの夜を迎える。
左腕を痛めたカオルは連盟で紹介された病院に行った。診察結果は全治3週間。骨や腱には問題ないということ。
パラレル市に帰ってから精密検査する。
最悪は逃れたけれど、カオルは片腕しか使えない。梓が付き添うと言い出して茶薔薇学園の人間も了承した。
茶薔薇が宿舎にしているホテルのロビーで、勇太がみんなの労をねぎらった。
またも女性が集まってきた。
戦いが終わったあとに合いそうな、前世の静かなパクリ歌を1曲歌った。疲れたみんなは、早々とひとり、またひとりと部屋に帰っていった。
まあ、カオルに対する仲間の気遣いでもある。
ホテルの広いロビーの隅のテーブルで、勇太、カオル、ルナ、梓の4人になった。
「みんな、改めてありがとうな」
「お疲れカオル」
「個人戦で優勝できなかったけど、すごく濃い大会だった。3人のおかげだ」
みんなで笑った。
「さ、梓がこっち泊まるけど、俺とルナは予定してたホテルに帰るよ。今更キャンセルもできんしね」
「ああ、ルナも勇太も気をつけてな」
勇太がカオルに握手しようとすると、ルナと梓に違うでしょと言われた。
「ほら勇太、私にプロポーズのあとしてくれたみたいに・・」
「ん?・・・」
ぼそっと梓。「キスしてあげて・・」
聞こえなかったカオルは、ぽかんとした顔をしている。
梓とルナは、立って勇太とカオルとは反対方向を向いた。
「な、なんだみんな」
「可愛いぞ、カオル」
カオルをゆっくり立たせ、勇太が正面からカオルの腰に軽く手を回した。そして引き寄せた。
「遠目だけど見てる人にいるのに、は、恥ずかしいぞ、勇太」
「目、閉じてよカオル」
「・・・・うん」
目を閉じて、ちょっと震えているカオルの唇に勇太はキスをした。
「ん」
ルナと梓も、振り返って勇太とカオルのキスを見ている。笑顔だ。そこに嫉妬はない。
まあ梓もルナも、いずれこの4人で4Pをする気でいる。
裸の付き合いになる相手だと思ってるし、勇太とカオルのキスくらいでは動じない。
それに本気で良かったと思っている。
カオルが目を開けたら、梓とルナが拍手しようと構えたときだ。
「カ、カ、カオルがー、ゆーた君とちゅーしてるうー!」
ムードをぶち壊す大声を上げて、接近してきた男子、のような女子がいた。
不知火マイコだ。なぜか彼女の後ろにハンディカメラを構えたテレビクルーまでいる。
彼女は茶薔薇学園が泊まっているホテルに勇太がいると聞いて、突貫してきた。
「あれ?あの人の仲間って、今日中に北海道に帰るって言ってたような・・」
不知火マイコだけは東京に泊まる。
彼女の仲間は川崎空港から、札幌行き最終便で帰った。しかし知名度が高い彼女は頼まれた仕事があった。
全国ネットのテレビで、インターハイ特番が今日と明日に組まれている。
今日は高校サッカーの人気選手と一緒に、ゲストとして生中継が待っている。
時間はない。
なのに、今を逃したら2度と勇太と会えないのでないかと不安になって走ってきた。
テレビクルーは下っ端の人で、不知火を追いかけてきた。いい迷惑だ。
カオルとエロカワ勇太のキスを見てパニクってわたわたする不知火。
カメラを回すテレビクルーは、キスシーンが撮れて、これならプラスかなと思っている。
ただ、ガチに時間がない。
「そうだ、勇太君も一緒にテレビに出ましょう。そして私にも公開プロポーズをお願いします」
「いえ、お断りします」
勢いで、自分にもプロポーズさせようとした不知火の作戦は一瞬で砕け散った。
だけど帰ってくれない。
「どうしよ、ルナ」「うーん、いい手がある」
ルナの提案で不知火とLIME交換をしたら事態は鎮火した。
「LIMEを勇太君から聞いてくれたってことは、私に好意を持ってくれてるってことですよね。必ずパラレル市に会いに行きまーーーす。あああゆうたくーーん」
今度こそテレビクルーに引っ張られ、叫びながら去っていった。
思い込みが激しいキャラは、パンのウスヤの臼鳥麗子だけで十分だと思った勇太だった。
「なんだったんだ、不知火さん・・」
「それよりカオル、こっち向きなよ」
「ほら、カオルちゃん」
「なんだ、ルナ、梓?」
ルナがカオルにちゅっとした。その次は梓がカオルにちゅっとした。そんで勇太も再び軽くちゅっとした。
びっくりしたカオルだったけど、だんだんと笑顔になった。
「へへへ」「ははっ」「ふふふ」「あはは」
ルナと勇太でホテルに戻ったときは、もう10時だった。
梓とカオルは念のために、明日の朝イチで2人だけパラレル市に戻って病院にいくという。
ルナと勇太は、東京観光をして最終のリニアモーターカーで帰ることにした。
「予定外の2人だけのお泊まりになったね、勇太」
カオルと勇太のキスを見ても、怒らないどころか自分もカオルとキスしたルナ。
上機嫌だ。
部屋の電気を消して、ちゅっとした。その気になってしまい1回だけナニかをした。
こうやって、東京最後の夜がふけていった。




