331 ファミリー総出でマイコの応援
2月20日。早くも勇太の次の仕事、世界柔道が始まる。参加者は、もちろん女子。
期間は4日間。個人戦のみで全13階級。
初日が48、60、63、75キロ級。
2日目が51、66、78キロ級。
3日目が54、69、81キロ級。
4日目が57、72キロ級と、81キロ超級になっている。
『世界柔道』の名前には、勇太の前世も似たものがあった。けれどパラレル世界では毛色が違う。
特に日本人選手に取って、今年と来年の2大会はオリンピック選考会のひとつという意識だ。
高校生の試合と違い、観覧席に入るのは有料。
今回の大会の舞台は隣県で近い。なので今日だけは勇太ファミリー全員で不知火マイコを応援に行く。
来てくれとも言われていない。みんなも行くとは言っていない。
あくまでもファミリーからアプローチするのだ。
パラレル市からリニアモーターカーで40分の距離だ。
マイコは63キロ級だから、初日に登場する。
同階級のエースは前回のオリンピックで金メダルに輝いた25歳の元松サオリ。カオルと似たパワータイプだ。
今回は元松、ミタムラマナミ26歳、マイコの3人がエントリー。国際大会での実績に劣るマイコは、ここから1年間で元松、ミタムラ以上の成績を残さねばならない。
仕事の打ち合わせがある勇太に合わせて、ファミリーの行動開始は早い。
依頼されたのは、日本人選手へのインタビュアーと現場リポート。
だけど外国人選手団からクレームが入り、勇太の仕事は増える。ベスト4に残った選手にインタビュー。プラスしてハグと頬ふにふにをやることになった。
今回は13階級、トーナメント出場者32人。合計で416人。
高校生冬の選手権の時は試合前と試合後の仕事が9割だったから、色々と女の子のリクエストに応えた。だけど、今回は条件が違う。
全員のインタビューなどしていたら、時間が足りない。
「俺に、そこまで需要あるってホントかな」
ルナ「あるよ勇太」
マルミ「あるっす」
タマミ「分かってませんね、先輩」
キヨミ「無自覚」
長谷川三姉妹か嫁ズに加わり、波状攻撃で突っ込まれるようになった。
勇太は海外の格闘技女子に、特に人気だ。
モノをはっきり言うのはパラレル欧米諸国も同じ。ただ、男子が希少な世界だから、男子から何か言われても女子は言い返しにくい。
欧米の柔道女子は骨格も太く「ゴツい」と男子に笑われることが多い。なのに言い返すわけにいかない。
勇太は違う。自分より大きな柔道女子にでも優しい。だから海外の柔道女子にも人気なのだ。
◆
ファミリーの面々は会場に来て、いきなりバラバラになった。
今回の嫁ズの役割は、ルナが勇太の男子護衛官。純子は歌の絡み。柔道連盟の正式依頼として4日間とも来る。
残りのメンバーは今日だけ。
勇太&ルナ、純子&麗子は連盟事務所に行った。
カオル&梓は、カオルが腹を減らしたからコンビニ直行。
残りの5人は、柔道ファンでない女の子に囲まれた。
今回、試合場に入るのは有料だし、例年でも観覧席の7~8割は席が埋まる大会。
そこに勇太効果が加わり、4日間とも満席になってしまった。
なのでファミリーがそろうという今日、中に入れなくても来てみた子も多い。
真子&嘉菜は、誕生日の子に頼まれて『マコソング』ことハッピーバースデーを歌っている。
「いくよ嘉菜さん」
「オッケーです真子ちゃん」
「ユリちゃん、ハスミちゃん、キララさん、誕生日おめでとー」
「アイコちゃん、マリアさんも、みなさん、おめでとうございます。それっ」
♩♬♩♪♪♩♩♬♪
長谷川三姉妹はというと、小さな子供に囲まれている。
勇太から三姉妹に贈られた「ダンゴな三姉妹」が早くも有名になり、おねだりされて歌うことになった。
戸惑いながらも長女マルミは思う。勇太ファミリーは外から見ていたら、みんなブレず自分らしく動いていた。
そうやって勇太に愛されている。
控えめだった吉田真子だって『マコソング』を堂々と歌っている。
そういうことが分かっていて、嫁ズ入りを望んだ。ある意味で隣県に来た今日が、注目される勇太ファミリーに加わった自分達のお披露目の場。
人のために頑張る勇太のように、朝早くから来てくれた子供達のため声を張り上げた。
◇
柔道連盟会長の鬼塚一子は、今回も勇太に感謝している。
会場が東京ではなく、地方大会になったのは、新しく造られた武道館を活用するため。県の要請もあり決まった。
東京新橋武道館は柔道の大会なら8000席。ここは設備を大きくした分、1万席もある。
観覧席は良くて6割しか埋まらないと踏んでいたが、勇太、純子&風花、中戸明日香が来ると告知してから、前売り段階で全席が完売した。
スポンサー企業まで増えた。お陰で、黒字幅が上方修正できた。
今回は、最終日に伊集院光輝まで仕事でやってくる。
鬼塚は警備の面で面倒ごとが多そうだから断ったが、伊集院君側から凄腕の男性警護員を出して、低価格ギャラで仕事に来させてくれと頼まれた。
完全に、勇太大好きな伊集院君のお願いである。
ネットを見ると『柔道ばっかりいいとこ取りして!』と別のスポーツ関連とみられる人間から批判殺到。
それでも鬼塚の笑いが止まらない。




