321 冬の選手権準決勝◇茶薔薇VSシベリア体大
さて、選手権も残すは3試合。
勇太、純子&風花、中戸明日香の歌目当てで武道館に入ってきた女子もいるが、ムードはガチ。
肝心の勇太が真剣に試合会場を見ている。
勇太は決勝の選手紹介で仕事が入っているが、ここでは純粋に嫁ズナンバー3カオル擁する茶薔薇学園の応援だ。
茶薔薇の先鋒ツバキ部長に気合が入っている。
シベリア体大付は不知火マイコが抜けたとはいえ、求道者マイコが育てた猛者ぞろい。
残ったメンバーがみんなマイコのスタイルを引き継いだ美少年系の美女ばかり。だから軟派集団と間違えられるが、中身はバリバリの硬派なのだ。
評価は茶薔薇とほぼ同じ。新潟エチゴニシキ高校と合わせて今回の3強と評される。
ツバキ部長は、副将ハラダヨシノ、大将今川カオルは勝てると思っている。だから、中堅までの3人で最低でも白星1個を挙げたい。
次鋒、中堅のシベリアの選手は、72キロ級と57キロ級の全国区な選手。ここで自分が勝たねば茶薔薇敗戦の可能性大だと思っている。
相手の名前はセツザンアキコ。1年生でツバキと同じ60キロ級。身長は168センチでツバキより少し小さいけれど、パワーにプラスして不知火マイコ直伝の投げ技がある。
中学時代の個人戦で全国制覇しており、評価は現時点で2年生のツバキ部長より少し上。
「ツバキ部長がんばれー!」
最大限に集中したツバキはカオルどころか、勇太の声にも反応しない。
「セツザンアキコさんも頑張ってー」
「あ、はい。ありがとうございます」
こちらの方が余裕はある。
勇太は今日は仕事で来ているから、可能な限り登場選手の名前を呼んで応援している。このあたりは律儀だ。
「始め!」
相手はツバキを研究している。大ざっぱに言えば、その日の相手の動きのキレを見て、立ち技か寝技が判断できる。その当たりの頭の回転の早さが大きな武器だと思っている。
自分には投げ技がある。だから、早めに組んだ。投げに行くと、ツバキの前評判通りに緻密な動き。
担げそうで担げない。片膝を付かされひっくり返されそうになる。
体を丸めて防いだが危うかった。
階級別の評価で63キロ1位今川カオル、69キロ1位のハラダヨシノ。立ち技では勝てないふたりのチームメイトに負けたくないから、寝技を磨いた人。
組んでみてアキコは分かった。立ち技だけなら、ほんの少しだけ自分が強い。けれど、それをツバキは承知している。自分の方が研究されている。
一瞬、考えた隙を突かれてアキコは足払いをかけられた。倒されてもポイントなしだが、相手有利な寝技だ。
思わず防戦態勢に入ろうとしたら、襟を掴まれた。
絞め技だ。
この世界でも勇太前世と同じく絞め技は高校から。
アキコは油断していた訳ではないけど、ツバキの技術の方が上だった。慌てて首を守ると、今度は足を絡められた。
結果、押さえ込みに持ち込まれなかったが、防戦一方で体力を奪われた。開始2分で汗だくだ。
開始線に戻りアキコは勝負をかけるしかないと思った。
いきなり組んで内股を仕掛けた。
「あなたの技に破壊力はあるけど、経験値が足りない。カオルの内股を受けてきた私には悪手よ」
アキコが跳ね上げた右足をかわし、ツバキは内股すかしの形に持ち込んだ。
無抵抗のアキコが横に倒された。
「1本!」
「おおお!さすがツバキ部長」
勇太もチームメイトも大絶賛。
開始線に戻ったツバキとアキコは握手しながら会話した。
「完敗です」
「いえ、あなたには世界を目指せる才能を感じる。夏のインターハイまでは敵だけど、そのあとアドバイスできることあれば応じる」
「え」
「あとで連絡先、交換しようか」
にっか~と笑う歌劇団系女子のツバキに、美少年系アキコは頬を赤くした。
5人目の彼女候補ができてしまったツバキ。
こうやって女でなく『男』を磨き、彼女は増えるが男子と縁遠くなっている。
予想通り、次鋒戦、中堅戦はシベリアに取られた。副将戦は余裕でハラダヨシノが勝って2対2。
大将戦は茶薔薇がカオル、シベリアは66キロ級の有力選手シノヒスイ。
油断できない相手だけど、ツバキ部長は余裕の表情で送り出した。
「分かってるよねカオル」
「ああ、お前らの頑張りを無駄にしねえよ」
期待通り、カオルが開始2分で内股を炸裂させた。
これで決勝進出。
もう一方の準決も、新潟エチゴニシキ高校が5連勝で決めた。
茶薔薇学園は、インターハイの準決で勝てなかったエチゴニシキ高校にリベンジマッチを挑むことになった。
梓、ルナは茶薔薇を激励に行った。勇太も行きたかったが、お仕事の敗戦校ねぎらい。
ハンサム女子ばかりのシベリア体大付属のメンバーをハグしていたら、普段以上にスマホを向けられた。
男子同士の抱擁に見える光景を映そうとする、腐った女子は熊本にもいた。
これに対し、けしからんという意見はない。
高校柔道だけ男子からの特典だらけってどういうことなの?という文句が殺到している。
腐った女子の動向なんぞ、大した話題にならない。




