307 式場の下見に行こう
1月も終わりに近付いた25日。
2月の勇太は柔道連盟絡みの大きな仕事だけでもふたつある。
まずは高校柔道・冬の選手権が14日から熊本県で始まる。
その翌週には、隣県で開催される世界柔道があり、こちらは外国のテレビ局も絡んでいる。
もちろん純子&風花とのセット。
そして世界柔道から10日ほどで3月3日がやってくる。カオルの誕生日に結婚式と入籍の日だ。
勇太が生まれた海辺の街の教会に行って、ルナ、カオル、梓と4人で結婚式をやる。
8月に梓に言われたときは驚いたが、3人以上で婚礼をやるのは普通らしい。やっぱり異世界だと思った。
既に籍が入っている勇太と梓以外も、その街で籍を入れる。
ただ、学校、柔道、バイト、パン屋、曲作り、嫁ズとの交流で超多忙な勇太だけでなく、みんな忙しい。
カオルは柔道漬けで、2月は特に忙しくなる。
梓と、ルナのお母さん、カオルの家からお母さんと姉がひとりずつ出て、計4人で準備をしてくれている。
なのでカオルのオフとなる本日、1月のうちに4人で教会を見に行くことにした。
結婚式のあとは、教会近くのレストランを貸し切って食事会をやる。
参加希望者が多すぎて、昨年末に当時の嫁ズと勇太の8人で話して『近い身内枠』だけとなった。
今後のこともあるから勇太の挙式は形を固定する。
これは伊集院君のアドバイスでもある。
ちなみに伊集院君は勇太の『親友枠』で式に参列する。身内のようなもの?だそうだ。
拒否したら、伊集院君は身内になるため勇太と男性同士で籍を入れる気だった。
伊集院君も勇太と同じく性癖はノーマル。勇太とセッ●スなんてする気はないが、縁を繋ぐためならそこまでやる気だ。
伊集院君は言った。
『勇太君、これが僕らの友情パワーだね』
勇太は心の中で、違うやろと叫んだ。
3月3日に呼ぶ人数を数えた。勇太と梓のところは義母葉子と、梓の別居父である陽介。ルナは両親と妹で嫁ズの純子。
勇太のパラレル父・風花はパラレル母・葉子のパートナーとして呼んだ。
実は葉子の誕生日の3月29日に、ふたりは籍を入れる。だから堂々と呼べる。
伊集院君を入れて、これで7人。
カオルの家は母4人と姉妹6人で計10人。
それに勇太ファミリーは新たなメンバーも加えて麗子、真子、嘉菜、不知火マイコ、マルミ、タマミ、キヨミ。
ここまで絞っても24人。
ここが限界。少し枠を広げると3桁にいってしまう。
柔道部の後輩、引退した先輩ふたりも呼びたい。
しかし彼女らを呼ぶと、カオル繋がりで茶薔薇柔道部員、梓のバドミントン部員、いずれ親族になる嫁ズの家族も呼ばなければならない。
梓の異母姉である嫁ズナンバー6の間門嘉菜なんて、同居家族に絞っても父陽介、母10人、姉妹が19人もいる。
勇太は数年後になるが、真子&嘉菜にも同じ教会で3人結婚式を望まれている。
真子はカオルと同じ11人家族。
すでに、その頃には純子&麗子とも籍を入れているだろう。
不知火マイコは5人家族。長谷川三姉妹は11人家族。
勇太がぱっと思いつくだけで、真子&嘉菜と結婚式をやる時には近い親戚だけで80人を越えてしまう。
プラス伊集院君。
こうやって倍々ゲームで招待客が増えていくから、この重婚世界では由緒ある家くらいしか大々的に披露宴なんてやらない。
ちなみに伊集院君は5回の結婚式をやる予定。
パラ高婚約者3人とは一緒に式を挙げる。政略婚約者4人とは個々に式を挙げるそうだ。
伊集院君の努力により、婚約者7人が仲良くなったから全員の希望は8人一緒の挙式。
けれどパラレル世界の現実を見ると、これは無理。
伊集院君と、政略婚約者4人で話した結果だ。
なにせ、各政略婚約者の親がみんな大物と呼ばれる女性ばかり。政治、経済、文化、メディアの各部門に太いパイプを持つ。
各個の披露宴で招待客を絞りに絞っても1回の招待客が各500人。
同時となると、各界のマウント合戦が起こるそうだ。各界から参加者を送り込むことが予想される。
ぱっと、リストを考えただけで1万人くらいになってしまいそうだと、伊集院君が苦笑いしていた。
勇太は、やっぱり伊集院君は桁が違う。この世界の主役だと思った。
◆
今、教会がある海辺の街に向かっているが、勇太ら4人だけじゃない。同行者がいる。
メイちゃんとゲンジも呼んだ。
勇太達と同じ電車にふたりが乗って合流した。
スマホで思い切り撮影されている。けれどふたりは最近の平常運転。今日も指を絡めて登場した。
こいつらは、まだ付き合っていない。
メイちゃんは勇太の、法律的には名乗れない異母妹。今のところ誰よりも勇太に近い血縁関係者。
勇太だけでなくルナ達も、メイちゃんを結婚式に呼びたい。けれど身内だけの式に呼べるだけの理由がない。
去年の8月、メイちゃんと勇太に血の繋がりがあると教えに行ったとき、同行したのがルナ、カオル、梓。
メイちゃんが勇太に失恋して泣いて、ゲンジのおかげで立ち直るところも見てきた。
今回、式を挙げる4人みんなの妹のような存在なのだ。
ルナ、カオル、梓も『勇太の本当の妹』に結婚式当日祝福してもらいたい。だけど常識で考えると不可能。
その話になったとき、サプライズを勇太が思いついた。
今は電車を降りて教会の前。6人だけになった。
「勇太お兄さん、お誘いありがとうございます。けどなんで、私達も皆さんが式を挙げる教会に?」
「俺達、公式には他人だから、身内でやる結婚式には妹でもメイちゃんを呼べない。だから今日、俺達の晴れ姿を見てもらおうと思ってね」
「あ、それ嬉しい。お兄ちゃん」
「ははは」
メイちゃんと一緒に来たゲンジが驚いている。
勇太がはっきり、メイちゃんのことを妹と言った。
慌ててルナ、カオル、梓を見ると3人とも笑顔だ。当然、ふたりに血縁関係があることは知っているだろう。
メイちゃんも動じず、自分の前で勇太に普通に応えた。
だけど、なぜ自分に聞かせた?
ゲンジが困惑していると、みんなに教会に入ろうと促された。




