287 女王様の相手はだ~れだ
伊集院君が招待してくれたスペイン料理の店に行った。
なんせ大人数。伊集院ハーレム5人、パラ高柔道部10人、茶薔薇柔道部20人もいる。
そこに梓、麗子、真子、嘉菜、純子の勇太嫁ズが5人。歌関連で風花、中戸明日香、そしてメイ&ゲンジ。
なんと44人。
かなりデカい店が会場となっている。
「かんぱーい」
たちまち大騒ぎだ。
勇太、ルナ、真子、嘉菜の4人は、喧噪にまぎれようとしたが、麗子が許さなかった。
パラ高VS茶薔薇学園の試合前、麗子が言い出した。勇太ファミリー4対4の賭け。茶薔薇軍が勝った。
勝ち組はカオル、梓、麗子、純子。負け組が勇太、ルナ、真子、嘉菜。
「本当は、勝ち組から負け組の誰かを指名して、ワンナイトの蹂躙の予定だったんだけど、純子に止められたのよね」
それで、麗子が準備したくじを引いてパートナーを決め、1対1でデートとなった。
麗子はやっぱりぶっ飛んだ提案をしていた。勇太達は心の中で、止めてくれた純子にありがとうと言った。
勇太は思った。これって変則的な王様ゲームみたいだと。
けれどこっちの世界、男女の合コンなんて数が合わない。自動的に王様ゲームは発展しなかった。
ギャラリーも興味津々。
男子ひとりハーレムだと普通、女の子は男子に嫌われないように一致団結をアピールする。
なのに勇太ファミリーは勇太も遊びのメンバーとして同等に扱い、今まさに罰ゲームのようなことをやらせようとしている。
このあたりが、勇太ハーレムと呼ばれず、勇太ファミリーで浸透した所以のようだ。
麗子が大きな声でリズム付けて言い出した。「カオル女王の相手はだーれだ」
王様ゲームはないが、女王様ゲームが出来上がった瞬間だ。
勇太、ルナ、真子、嘉菜は考えている。
麗子にだけは指名されたくない、と。
とてもいい子で悪気はないけど、何を言い出すか分からないから。
みんなが息をのんでみている。カオルがくじを引いた。
「お、アタイの相手は間門嘉菜さんだ」
なんか分からないが、ほううーと声が上がった。
次は梓で、吉田真子を引いた。
残りくじはふたつ。勝ち組は純子と麗子。負け組は勇太とルナが残っている。
「じゃあ純子、同時にくじ引こうよ」
「オッケー麗子」
純子が引いた紙には勇太、麗子が引いた紙にはルナと書いてあった。
「勇太君とのデート券みたいなものは純子が引いたね」
後日、今決まったペアで時間を合わせてお出かけ。勝ち組から負け組に、ひとつだけお願いするというもの。
カオル&嘉菜。
梓&真子。
純子&勇太。
麗子&ルナ。
初詣の前に8人がはぐれたときもペアが4つ出来上がったが、今回はその時とひと組も被らなかった。
「ルナに何してもらおっかなー」「無茶言わないでよ、麗子」
「うふふふ、それは保証できない」
麗子は楽しそうである。
他の3組も、なんだかんたと楽しそうに計画を立てている。
これもまた、麗子の結果オーライだ。
そもそも、転生勇太と麗子は接点がなくなるはずだった。
だけど麗子の暴走に次ぐ暴走により、みんなが幸せになれそうな形が出来上がった。
それを伊集院君の政略結婚の婚約者が感心している。彼女は四代続く大きな企業の創業者家族の次女。
「光輝さん、あなたが麗子さんを見せたいと言った訳が理解できたわ」
「でしょ、華子さん」
「確かに彼女の不思議な段取りと纏う空気は、本人を見ないと分からないわね」
彼女の名前は南条華子。麗子が、実際は稼業のパン屋が傾いたりしてピンチだったと伊集院君から聞いている。
そういうものを感じさせない明るさに目を見張った。
伊集院君が勇太だけでなく、全員をほめる勇太ファミリーに興味を持った。




