俺、フードバトラーじゃねえし!
勇太は初戦を勝った。
だけど今までと違って、相手がまともに試合できなかった。
「これがあるから、公式戦の辞退を考えたのに・・」
女神印の響く声とフェロモンには多少の自覚はあったけれど、それがパワーアップするのは計算していなかった。
ルナはじめ嫁ズには言われたし、体育の時間にペアストレッチをした吉田真子が目を回した。
自分とのスキンシップに慣れてきた真子の惨状を見てヤバいと思った。
しかし不動のパラ高先鋒は仕方ない。
ルナでさえ、『同性から恨まれて死にたくない』。大人げないほど先鋒の座を断ってきた。
「どうしたの勇太」
「なんでもない。2回戦に備えよう」
トーナメントだから、1回戦の試合数が多い。2回戦までの間は長い。
この競技場も廊下スペースを広くして、大会の控え室に使えるようにしてある。
昼休みなんてないから、みんな自分達の試合時間を考えて軽食などを摂る。
だから勇太が、ものすごく注目されている。
きちんと隅に寄っているのに、人が集まる。
女神印は、声、フェロモンだけではない。
回復力、その原動力となる食欲にも作用する。
午前10時。
パラ高メンバーと嫁ズで最初のおやつの時間。部員のリクエストで勇太がお握りを作ってきた。
手軽なエネルギー源だ。みんなにお握りを1個ずつ配った。
パラ高柔道部、嫁ズの嘉菜&真子、そしてメイ&ゲンジの構成。
麗子は、純子&風花の控え室にいる。
梓は茶薔薇学園のカオルのところ。相変わらず、自由に動くファミリーだ。
嫁ズにはクッキーのあ~ん、ぱくだ。
「嘉菜さん、あ~ん、委員長もルナも」
3人並んでぱくっ、ぱくっ、ぱくっ。
「メイちゃん、俺からクッキー・・」
「お、お願いゲンジ君。あ~ん」
ぱくっ、とゲンジの指までくわえたメイちゃん。
ふたりして顔を赤くしている。けれどギャラリーから、応援の後輩がこんなところでラブコメすんなと、やっかみの声が上がっている。
確かに正論だ。
勇太がラップで包んだお握りを手に取ると・・
ざわっとしている。
お握り大を3個、ルナが用意してくれた唐揚げ6つ。そしてデザートに部員が持ってきたおはぎ3つが、勇太の前に置かれている。
「あれ、勇太君のひとり分?」
「まさか、3人分くらいだよ」
「軽食タイムだよね・・」
「けど、嫁ズのお弁当も差し入れも、すべて食べ尽くすって・・」
「見てようよ」
「私も食べられた~い」
久々に不純物が混じるが、勇太のセクシーな口元をみんな見ている。
おはぎを食べて「うまい! おにぎり食ったら残り食べよっと」
次はお握り、そして唐揚げ。
高カロリーを取り入れまくり。
勇太の手が止まらず、あっという間に食べ物が消えていった。
「うわあ、あれなら嫁ズの人達もご飯の作りがいあるよね」
「うちの彼氏、週に1回しかお弁当食べてくれないのに」
「すごいよ~」
これも、かなり歓声が上がっている。
真横で見たゲンジは、次の課題が生まれたと思った。異母兄妹だから結ばれなくても、勇太はメイちゃんの初恋の相手。
まずは真似から入っている。歌の特訓は秘かにしている。体力を作るために走っている。
「走るからご飯の量が増えたけど、これは・・」
「どうしたのゲンジ君」
ゲンジは勇太に頼んで、おはぎ3つ、お握り3つをもらった。
「勇太さん、勝負です」
「お、おう、いいぞ?」
よく分からないけど勇太は受けた。
おおっ!と声が上がった。ここは男が少なくて、男同士の勝負など、めったに起こらない世界。
ゲンジはまず、お握りを3つ食べた。すでに限界だ。
しかし勇太はリニアの中でも肉まん3つを食べていた。なのに、今はゲンジを見ながらおはぎまで食べ終わった。
ゲンジはすでにお腹が苦しい。けれど、無理におはぎを食べようとしたら・・
「甘いの苦手なんだなら、無理して食べ物を粗末にしないの」
メイちゃんに怒られてしまった。
「ほら、私が食べるから」
「じゃあ、あ~ん」
「あーん? 無理だよ。こんな大きなの、口に入らないよ~」
「あっ、ごめん」
「ぷぷっ、勝負は負けちゃったね」
「うん、勇太さんにかなわないなー」
ふたりで、目を見合わせて笑っている。
またもラブコメが始まった。
さすがのルナも突っ込んだ。
「こいつら、何しにきたんや」
今は柔道の会場ですよ、キミたち。




