241 シャッフルタイム◇勇太&麗子◇
パラレル世界の令和6年も残すところ1日となった。
勇太には、前の日まで色々とあった。
ゲンジ、伊集院君が訪ねてきてのミニライブ。
嫁ズとご飯を作ったら、吉田真子のうっかりミスで、キスシーンがリアルタイムで流れたり・・
早くも大晦日の営業終了。普通に忙しく平和な1日だった。
現在午後10時。
今年は勇太に嫁ズができて最初の年。
現在のファミリー確定8人で日付が変わると同時に、この辺で1番大きな原礼留神社でお参りすることにした。比較的勇太の家から近い。
勇太は年明けから予約が満杯。
長谷川三姉妹、ルナらパラ高柔道部とは、元旦午後に初詣。時子前部長、田町先輩も来る。
2日は伊集院君、吉田真子らクラスメイトと参る。
3日はオフで梓とまったり。
4日がリーフカフェの休みだから、カフェの希望者と行く。ちなみにアルバイトは全員参加する。そしてゲンジ&メイちゃんも加わる。
1月5日。仕事絡みの正月を終えた間門嘉菜と初の1対1デートだ。
さて、今。神社近くに8人で集合した。
ところが、カオルが屋台の焼き鳥を買いに行き、トイレ、飲み物などなど、みんなが動いた時に、見事にはぐれてしまった。人混みもすごい。
LIMEをやり取りすると、幸いにもぼっちなし。
代わりに4カップルに別れた。女性の方は、見事に普段のパートナーではない形だった。
勇太&麗子。
ルナ&カオル。
梓&嘉菜
真子&純子。
勇太『それじゃ11時45分に鳥居前で合流。それまでふたり行動』
みんなOKした。
◇勇太&麗子◇
神社近くの国道沿い。
きゃーきゃー、と黄色い歓声。
麗子が勇太に、いきなりちゅっとしたからだ。
「正式に恋人になるまで、あと半年だね」
パンのウスヤなどでも気軽にちゅっとしてくる。周囲にも認知されているのに、まだ麗子は勇太の告白にこだわる。
「う~ん、そこは乙女の憧れよ。来年6月に自分の教室で、みんなの前で勇太君に告白されるの」
「まさか、そこで断らないよね、麗子」
ふふふ、と笑顔の麗子。ええ~と声が漏れる勇太。
普通は断らない。だけど爆弾発言連発の麗子だ。勇太はいまだに警戒している。
人混みの中に、ひとりだけ男子がいる。
勇太はクリスマスの時と同じ感覚で来てみたら、他の男子が少ない。
麗子に聞くと、男子同伴ゾーンがある。大半のハーレム軍団はそちらでお参りするそうだ。
勇太がいるから、女の子が周りに増えてきた。はぐれないように勇太は麗子の手をしっかりと握った。
うらやまし~の声が上がった。
中学生の女子3人組が近付いてきた。
勇太目当てかと思って周囲が警戒したが、違った。
「麗子さん、こんばんは。この前は助けてもらってありがとうございました」
3人の中のひとりが先月、パラ横商店街のパンのウスヤの近くでパスケースを落として困っていたそうだ。
麗子が声をかけ、周りの店の人に呼び掛けて無事に探し物が見つかった。
やはり普段の麗子は優しい。
そして麗子だ。
「わざわざお礼を言ってくれるなんていい子ね」
「い、いえ、当然です」
「寒さが吹き飛ぶように、頬ふにふにしてあげる」
「ふにふにですか?」
「勇太君が」
「へ?」
「まじ?」
「いいんですか」
「暖めて下さい」
麗子は、やはり麗子だ。勇太の意思を汲んでるようで汲んでない。
勇太は期待を込めた目をした中学生の頬に手を当てて、頬をこすった。
3人は、にゃんこのように目を細めている。
そして行列ができた。
「30人限定ですよ~」麗子は勝手に人数制限までしている。
人いっぱいの国道の歩道に30人並んだ。
麗子は親切で悪気はない。
♩♪♪♪♩
勇太はふにふに、麗子は横で歌う。
麗子はパンの歌のアルバムに収録された歌を口ずさんでいる。
子供向けの歌の中では人気がない。『おもいだそうよ』という曲。
「小さなこ~ろ~を、思い出してみようよ♪♩♩」
パラ横商店街活性化のために、子供の前で純子と共に歌う曲の中には入っていない。
それは、みんなのためだから。
だけど麗子ひとりのとき必ず歌う。自分のテーマソングにしたいと言われている。
「よ~んさい、ご~さい、な~にし~てた~♪♩♩」
麗子は人目を気にしない。そしてファミリーの中でも純子と並ぶ美貌だ。
自分のペースに人を楽しく引き込む力がある。
勇太もコーラスだけ入ってみた。すると中学生も混じった。
小さな声で歌っていたが、かなり人が集まってきた。
麗子は羨望、ヘイトと色々な眼差しを気にせず、目が合う女の子に小さく手を振っている。
「ふふふ、今日も楽しいね~」
パラレル勇太は、この気さくさを、自分に麗子が惚れていると勘違いした。
麗子は見た目は美人でも生活の感覚はノーマル。家庭的で母親ふたりを支えている。
「勇太君」
「ん」
「タイミングはいつでもいいから、純子と同時に妊娠させてね」
「あ・・うん」
これさえなければと、勇太は思う。




