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モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました   作者: #とみっしぇる


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231 勇太が去って8ヶ月後の世界◇梓と薫◇

勇太が5年間の闘病生活の末、5月10日に去った世界。


パラレル世界と同じく令和6年の12月30日になった。


元の男女比1対1世界の坂元家には、今日は来客がある。


横浜に住んでモデルをやっている山根純子、大学で県外に出ていた伊集院光輝が帰省した。


そのタイミングで坂元家に集まった。そして仏壇の前で手を合わせた。


「みんな、ありがとう。勇太も喜んでいると思うよ」

「ホントによく来てくれたわね」


風太と葉子夫妻が柔らかな笑顔を見せた。


勇太がパラレル世界で出会えた7人が久しぶりに揃った。


勇太の妹の坂元梓。

親友で梓の彼氏の今川薫。

彼女だった花木ルナ。

幼馴染みの山根純子。

ルナと勇太の共通の友人だった伊集院光輝。


そして両親。


みんな、悲しい思いを抱えながらも、日々の生活を頑張っている。


勇太の両親は、梓と薫、たまにルナに励まされながら少しずつ元気を取り戻しつつある。


◇梓と薫◇


梓は高1。兄の勇太と同じ高校を選んだ。


パラレル梓と同様に、とても美しく成長した。


部活には入っていない。早くも、5歳年上で大学3年の薫と結婚する気で、時間を薫のために空けている。


家も近いし、通っている高校と薫の大学は徒歩で30分。柔道を続けている薫のところに足繁く通って、お弁当も持っていっている。


中2から薫の大学へ通っている。薫の仲間の妹的立ち位置。


小学時代から自分のことを彼女と紹介していた。


高校では、いきなり自分には薫がいることを周知させた。


4月、いきなり知らない男子から教室の前で告白された。はっきり断った。


『私には自分から告白した大学生の彼氏がいます。兄の大親友です』


薫が柔道三段であること。薫の高2の弟が柔道部に在籍して守ってくれることも言った。


告白を断ると同時に、余計なことをするなら覚悟しろということだ。薫に誤解されたくないし、勇太の状態も悪かった。


そしてその翌月、勇太が逝った。覚悟はしていたけれどショックは大きかった。


梓も悲しいけれど、薫も悲しんでいた。


優しい薫が、なおさら優しくなった。


ふたりで少しずつ勇太がいなくなった悲しみを乗り越えようとしていた。


梓は夏休み中に薫に迫って関係を持った。薫はためらっていた。


「勇太に梓を守るって言った・・。お前16歳にもなってない。まだ早い」

そう梓に断った。


けれど梓は迫るのをやめなかった。


「逆だよ。薫ちゃんと結ばれることで、私の気持ちが守られるんだよ。このまま抱いて」


体重差は43キロ。だけど薫は梓の拘束を解けなかった。


避妊はした。



梓も少しずつ日常を取り戻した。学校行事も大切と言われている。


2学期になった。


梓は美人な上に落ち着いた雰囲気を醸し出し、なおさら噂になった。けれど校内では誰も余計なことはしなかった。


気がある男子が話しかけても、放課後は薫のところに行くから忙しいと答えた。


ついでに栄養学の勉強もしていて余力はないと断言した。


墓参りのことは言っていない。


一度、事情を知らない別クラスの男子が勇太の話題を出した。

梓の彼氏の親友である兄とは、どんな人かと聞いた。


とても離れたところに行ってしまった。けれど妹思いの優しい兄だと答えた。


とがめる訳でもない、優しい目をして梓は笑った。


横にいた親友の渋谷カリン、中学からの同級生が泣いてしまった。



多少のトラブルは起こった。


文化祭ではクラスで喫茶室をやった。エプロン姿の梓を見た他校の男子生徒ふたりが、梓に言い寄った。


梓は断った。チャラ男な相手はしつこかった。コーヒーをお代わりして居座り、時には席を立って梓に付きまとった。


けれど梓は慌てなかった。時計をチラリと見た。


そしてクラスメイトや、駆けつけた柔道部員を止めた。


すると薫がやってきた。約束通りの時間だ。


「よう梓!」


「いらっしゃい薫ちゃん。ちょうど休憩に入るとこ」


2人の間にいるのに、シカトされたチャラ男は大声を出した。


「じゃ、邪魔すんな、なんだアンタ」


梓と薫は視線を合わせた。

「私のダンナ様」「嫁」


チャラ男ふたりだけではない。クラスメイト、柔道部員も呆気に取られた。


そしてカフェになっている教室を出ると、後ろから歓声が上がった。



「梓、腹へった」


「ふふっ。相変わらずだね。色々と回ろっか」


もう勇太の代わりに梓を守るなんて言わない。


微塵にも梓に、勇太への義理で付き合っているとか誤解されたくない。


けれど、やっぱり薫は親友を思い出す。そして梓は兄を思い出す。


ある教室の前でふたりとも立ち止まった。


「ユウ兄ちゃんも、1度だけど・・文化祭に参加してたよね・・」


「うん。この教室で楽しそうにしてた。うん・・」


「だよね。接客はあんまりできなかったけど、ずっと笑顔だった」


「あ・・うん、笑顔だ・・た」


声が震えている。


涙もろい薫は、母校の廊下で涙をこぼしながら、梓に背中をさすられていた。




つづく。




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