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モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました   作者: #とみっしぇる


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211/307

211 男を守る女、守られる男

◇ヤマモトタロウ◇


俺は、俺に興味なさげなメイに少し腹を立ててた。


・・4人目の彼女にしてもいいと思ったのに。


そんなとき、俺の彼女がメイと坂元勇太が付き合ってないって話を聞いてきた。


俺は何を焦ってたんだろう。あまり考えずに、メイに坂元勇太の話を振った。


10月の放課後、教室には何人か残ってた。


メイと冬木は2人だけで喋ってた。


「メイちゃん、坂元さんってさ・・」

「冬木君、勇太さんのこと?」


一瞬、冬木の沈んだ顔。


クラスの女子が親しみを込めてゲンジ君って呼ぶようになった。


けどメイだけは『冬木君』から変えない。


逆に、坂元勇太のことは本人に『勇太お兄さん』って呼ぶそうだ。


へへん、距離感あるよな。


あ・・、俺も最近はタロウ君って呼ぶクラスメイトが増えたのに・・


まあいい。


椅子に座ってた2人の前に、俺は彼女3人と立った。


「どうしたのヤマモト君」


「最近、パラレル市のカフェには行ってるのか?」

「うん・・」


冬木と話すときとは逆に、俺の質問には最低限しか返事しねえ。


そのくせに言葉が丁寧。そして笑顔も絶やさない。


あまりにも期待した反応と違いすぎる。俺に関心がねえ。


「・・余裕だな~」

「そんなことない。ヤマモト君が話しかけてくれたし嬉しい」


「ちっ、坂元勇太と仲間に可愛がられて鼻高々かよ」


「・・それはない」


「どうせ坂元に相手にされてないんだろ。いい気になるな」

そう言った。


メイの肩が一瞬、震えた気がした。


メイは座ったまま手を膝に置いて、俺の方を見上げた。


「そうだね。いい気になってた」


腹立ちは感じない。メイの瞳から目が離せない。


そしてメイは区切るように、自分に言い聞かせるように、言葉が出てきた。


「勇太さんの彼女になれることはないよ、絶対・・絶対に・・ない」


真っ直ぐ、メイは俺を見てる。


潤んだ左目から、つぅーと、涙が頬を伝った。


こいつ坂元に嫌われてない。嫌われてないのに、なんか事情があるんだ。


初めて女に言ったことで後悔した・・


「あ・・すま・・」

「ヤ、ヤマモト君!」


「んだよ、冬木・・」

「・・いや、その・・」


俺の声に被せて、中腰の冬木が大きな声を出した。けど、睨んだらびびってる。陰キャが何様だ。


女の前だし冬木の胸ぐらでも掴んでやろうかと思った。



けど、俺のターンにならなかった。


メイが立ち上がった。冬木を背に庇い、俺ら4人の前に立った。


「ごめんなさい。ヤマモト君」


頭を下げた。


いや、冬木を守るために、自分は悪くないのに俺に謝った。


離れたとこでダベってたクラスメイト4人が気付いた。こっちに来た。


メイは、自分が失言したと言った。


その場は、それで収まった。


また2人になって、冬木はメイに謝った。少し離れて俺は見てた。


そんで、俺の前に立ち塞がったとき少し震えてたメイを思い出した。


ヘタレ冬木のヤロウが情けない顔だ。


「ごめん、メイちゃん」


「謝る必要ないよ。男子の冬木君を守るのは女子の義務。それに私は冬木君の護衛係だし」


「お、俺・・」


「冬木君は男子なのに、頑張ってヤマモト君に大声出してくれたね」


「けと俺、ヤマモト君に・・」


「格好良かった。嬉しかった」


「・・メイちゃん」



「冬木君、ありがとう」


・・あんな笑顔。なんで冬木のヤロウに。


冬木も希少な男子だけど、坂元勇太の影が見えるからメイに何も言えない。けど、彼女になれない発言で希望は持ったみたいだ。


同じ高校に追いかけて行く。


他の女を選べば、今のアイツなら最低でも3人は付いてくる。他のクラスからアピールしに来た女子にも、可愛い子はいる。


モブ顔女子にこだわる馬鹿なやつ。

◇◇


今日は12月23日。


メイと坂元勇太の会瀬に今、出くわしたばかり。


イルミネーションの中、あいつらのとこだけキラキラしてるように感じた。


俺の女3人も、結局は2人の世界に見とれていた。



あれから話しかけてもメイは怒ってる風でもない。笑ってもくれる。


だけど、あんな自然な笑顔は俺には向けない。



なんか悔しい。




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