184 梓に異変?
11月17日の日曜日。チャリティーコンサートの収録である。
勇太達は今回はゲスト。場所はパラレル南公会堂ホール。
人気番組『集まれお姉さん』の公開録画も兼ねているから、そちらの本職の方々が回してくれる。
「みんなー、こんにちはー」
こんにちはー。ちびっ子1000人、同伴のお母さん1000人で満員だ。
「きょうは、お姉さん達の素敵なお友達が来ていまーす!」
パンの歌の純子が最初に紹介されて大歓声が起きた。ちびっ子から。
順番に勇太ファミリー、麗子、風花、伊集院君の婚約者が紹介されて拍手をもらった。
ラストは伊集院君。
明かにちびっ子よりも、付き添いのお母さんから大歓声が上がった。
「伊集院君って、やっぱすげえな」
「カオルちゃんは、その伊集院君のお気に入りでしょ」
「へっ、いじられ役だろ」
勇太ファミリーは本番中なのに、意外とリラックスしている。
まずは番組のテーマソングから入った。
早速、風花がギターを弾いて、純子がワンフレーズを歌わせてもらった。この当たりが伊集院君の婚約者からの配慮だ。
番組収録も終盤に入り、ちびっ子達30人がステージに上がってきた。
男の子が2人だけいて、どちらも歌のお姉さんに駆け寄っていた。
むっちゃモテているが、この職業、12歳以上の男子にモテない悲しい側面を持つそうだ。
女の子は安定して伊集院君に殺到した。
「お兄ちゃんカッコいいー」
「結婚してー」
「お母さんのおむこさんになって下さーい」
勇太のところにも2人ほど寄ってきて、母親も嫁にしてくれと頼まれた。
具体的すぎる。
すでに4~6歳で肉食女子の匂いがすると思った勇太だった。
収録の最後に、純子&風花もきっちりと1曲歌わせてもらった。完全に伊集院君の配慮だ。
勇太は伊集院君によく感謝されるけど、勇太も伊集院君に感謝している。
特に純子&風花の異例のスピードデビューは、裏で彼が手を回してくれているから。
男子の勇太が作詞作曲という珍しさでも3割程度。大きく前倒しになったのは伊集院君の力が7割だ。
8月にパンの歌を出せたお陰で、思わぬところからパラレル父さんの風花と出会うことが出来た。
そう考えると、感謝の量も倍増する。
早くお金を作る算段ができたから、純子が妻・麗子のハル義母さんを助けることができる。
そしてパラレル父さん風花と出会い、パラレル母さん葉子と会わせることができた。
そして風花と梓を会わせることもできた。前世では父と娘だったけど、今世でも仲は良くなっている。
今のところ勇太とルナしか知らないけれど、風花と梓は名乗れない異母姉妹にある。
今、収録後の打ち上げが行われている。
せっかく場を設けてくれたので、みんなで参加している。
伊集院君のところに女性が殺到。勇太のところには前日に助けた体操のお姉さん1がべったりくっついている。
普段なら、こういう場を楽しむ勇太だけど、今日は気になることがある。
梓が、疲れた顔をして椅子に座っている。
梓自身は笑って、みんなに楽しんでくれと言っているが、それは無理。
勇太と梓だけ、中座するとこにした。
他のみんなも帰ると言ったけど、ここには純子と風花の今後のため、顔つなぎをしておいた方がいい人が沢山いる。
なので2人だけタクシーを呼んで、こっそり抜け出した。
◆
自宅に帰り、ソファーの上。勇太は梓の頭を膝の上に乗せて、休ませている。微熱がある感じだ。
ここ4日ほど、体調がすぐれなかった。
「ごめんねユウ兄ちゃん、楽しむ前に帰ることになって・・」
「気にするな。こういう日もあるんだよ」
「・・けど」
「ほら、うちのファミリーの最初の嫁だからって気負うなうよ。もっと俺らを頼れ」
「うん・・ありあと、ユウ兄たん」
うとうとして、ちょっと噛んだ梓だけど、これが勇太には懐かしい。
梓は10歳くらいまで体が弱かった。何度か具合を悪くしていた。
だけど、いつも今のパラレル梓みたく強がって、我慢していた。
いつも勇太や母葉子が気付いて、こうやって横にならせていた。
今のあどけない表情が、前世と今世で重なった。
「眠れるか、梓」
「うん、ちょっとお腹痛いけど、生理も近いし、そのせいかも」
「痛くなったら呼べよ。おやすみ」
「おやすみ」
何かが気になったが、眠った梓を抱えて寝室に寝かせた。




