182 勇太を好きぎる伊集院君
勇太の嫁が何人に増えるかとか、ネットで言われてるけど勇太には次の仕事がある。
12月12日の純子&風花のデビューを前に、PR活動が活性化してきた。
レコーディングは終わり、商品化を待つだけ。
今日11月16日の土曜日は、リーフカフェを午後1時で切り上げた。
同じくバイトを切り上げた梓とタクシーを飛ばしてパラ南公会堂ホールへ。そこにルナ、カオル、麗子、そして純子と風花が待っていた。
なんと伊集院君、彼のパラ高婚約者の3人もいる。
明日の日曜日、チャリティーコンサートが行われる。
伊集院君の2人目の婚約者の実家がスポンサーになって、公開録画も行われる。
いきなりの伊集院君からのお誘い。
どうやら勇太と間門の問題で意見を出してから、ネット上や周囲でただ『ハンサム、格好良い』というだけでない称賛が増えている。
伊集院君は勇太&真子&嘉菜のキューピッド? をしたということで、勇太との友情も物語られている。
嫁のいる男友達と他の女の橋渡しをするなんて・・とは、この世界では言われない。友情なのだ。
そういう評価が嬉しくて仕方ないらしい。
今回は、東京明治放送『集まれお姉さん』の公開録画も兼ねている。お姉さん達も集結する。
毎週月~木曜日の朝8時から放送される長寿人気番組。
歌のお姉さん、お絵描きのお姉さん、体操のお姉さん、各2人ずつが参加する。
みんな知名度は高い。
ゲームキャラのコラボもあり、ゴブリンパンの歌で、CDジャケットに写っている全員がやってきた。
風花&純子は、特別枠でカオルのテーマソングも演奏する。
ホールの正面から入ると、色んなスタッフが足早に動き回っている。
「お疲れ、光輝さん」
「セッティングありがとう、夢さん」
今回のスポンサーになっている企業の社長の娘・猪俣夢。要するに伊集院君の年上婚約者だ。
「どうも、坂元勇太です。今回はよろしくお願いします」
「ご丁寧に、ありがとうございます」
調停の件は勇太から言ってみたが、伊集院君が信頼しているなら問題ないということ。
信望も厚い。
やっぱりパラレル世界の主役キャラは伊集院君だと思った。
◇
勇太は、ここでも風花が気にかかる。そしてPR活動の手伝いで熱心に話している。
ファミリーのみんなも、勇太と風花の甘さゼロの空気感が不思議たけど、そこが勇太の人の良さだと納得している。
純子は子供向けのパンの歌を始めとした曲で人気が出まくっている。
純子本人は、契約が終わる1年後以降も風花とのユニットを続けるつもり。
だけどすでに、契約満了後、ソロになったときは子供向け番組で本格的にやってみないかとオファーが3件もきている。
学業はギリでパラ高を卒業できるところをキープするので精一杯。だけどパートナーの麗子と籍も入っているし、仕事がなくなればパンのウスヤで働くそうだ。
対して風花は、来月のデビューからが勝負。
勇太としてもDカップで梓と瓜二つの美形でも、やっぱり向ける気持ちはパラレル父さん100パーセント。
自分の入院費などを稼ぐため、前世で働き続けてくれた父親の代わりに、できなかった親孝行をする気分なのだ。
「勇太君、今回も伊集院君と勇太君のおかげで大きい仕事ができるよ」
「これで知名度を上げてね」
「・・本当に感謝しきれないな」
今回の仕事やデビューの細かなやり取りがあり、ここ数日の風花は坂元家に来ていない。
最近は義母葉子と仲がいいが、風花はそれも我慢して目の前のことに集中している。
「風花さん、葉子義母さんが頑張れって」
「最近、葉子さんにも会ってないし、見捨てられないかな」
「いや、疲れたらカフェに来てコーヒーくらい飲んでけってさ。そんで、一段落ついたら、ご飯作ってまっているって」
「ふふ、そう言ってもらえると心強いね」
勇太は、パラレル父さんとパラレル母さんが仲良くなっていて、やっぱり嬉しい。
風花は産みの母親が亡くなり、法律的な血縁関係者はいない。梓とは生物学上の異母姉妹だが、それはまだ勇太とルナしか知らない。
前世葉子が、前世の風太をゆっくり支えたように、この世界でも葉子が風花の気持ちを支えていると思った。
リハーサルは進んでいった。




