181 ロミオのような男がいない世界
勇太は意外だ。
自分から間門との調停で負けた。すると、半年前までは最低人間だったと暴露する人間が出てきた。
だからヘイトの輪が広がっていくかと思った。
現にネットではディスられまくっている。
中学で勇太と同じクラスだったという匿名女子から、『中学時代の坂元勇太は、人に拒絶されて当たり前の人間だった』と暴露された。
それに対応するため、勇太は自分のアカウントを作った。
自分に関する悪い書き込みを見つけると、パラレル勇太の記憶を引き出した。
悪い書き込みで、当たっているもの、記憶不足だけど黒寄りのグレーなものは、自分のSNSで肯定した。
だからといって、間違っているものも否定しなかった。
すると、悪い噂は減っていった。そして、女子から質問を受けるようになった。
なぜ、女なんかのために大変な目にあうのかと。
だから答えた。
パラレル勇太とは書かないが、間違いなく過去の自分は最低人間だったと白状した。
それを見捨てなかったり、それを知っても構わないと言ってくれたのがファミリーの女の子達。
だから恩返しでもあると書き込んだ。
それだけで称賛の声も多く、勇太は不思議だ。理由もよく分からない。
これは単純に珍しいから。
なんだかんだいって、男女比1対12の世界。
勇太が間門家からかけられた権利ロックは、ほとんどは女子にかけられる。
夫と同居する妻達の中で、危ない親戚などから妻仲間や夫を守るために申請する。
近年は人工授精の普及で、男子の価値が少し落ちた。
ダメすぎて欲深い男子が婚姻相手の親族などにいた場合に、財産や家族を守るためにロックをかける。
ただ、その男子は基本的に腐っている。何もしないか、男子という優位を利用するために、違う場所に移ってよからぬことを考える。
例外で権利復活を申請する男子は、そうしなけば訴えられるとか、ネガティブな理由ばかりだ。
つまり、勇太のように真っ向から問題に立ち向かう男子はいない。
だから、今回の話はロミオとジュリエットに例えられている。
そのロミオ~は、すごく人気なのだ。
それは、貴族でハンサムな男子が『たかが女子との愛』のために命をかけたから。
ウイルスのようなもので男女比が狂ったのは、シェイクスピアが戯曲を作ったあと。
1650年以降、家と家の対立は、女性同士の争いになっていた。
だから生産力も持たなそうな『たかだかジュリエット』のために命をかけるロミオは。ファンタジー寄りのヒーローなのだ。
勇太の前世よりも評価が高いキャラなのだ。
現代パラレル日本においては一人の女にしか興味がない変人、すなわちヒトアナフェチと呼ぶ、けしからん女の子もいる。
ロミオみたく、女のために自分が傷ついた勇太は驚かれている。
調停の場にいた『男子絡みの調停マニア』のネットワークで、一部始終がさらされている。
勇太の前世と同じ感じで調停風景も撮影禁止。薄着の勇太の絵が描かれ、紙芝居風に編集されている。
そして、流れが間門側の不利に働きそうだったことを暴いた。好意的に。
この件の各家の代表は間門側が彩奈、坂元側が葉子。
家の対立。本当はこの場合は単なる女同士の相性なのだが、ここでは置いておく。
いがみ合う家の勇太と嘉菜だったが、最終的に勇太が自分の腹を切って嘉菜を傷つけず助けた。
そういう話が定番になっている。
そしてまたも、伊集院君だ。ドヤ顔で「大筋は、それで間違いないね」と肯定してしまった。
ここで吉田真子の存在だが、真子の母親は社長・間門彩奈の秘書。
つまり、勇太の更正に一役買ったと言われる吉田真子も、勇太の家とは敵対する側の人間。
愛する2人の女。
一途な愛を描いた原作的には浮気者でアウト。だけれど、読み手が重婚世界の住人。何の違和感も唱えられない。
勇太がすべてを守るため、ロミオのように毒を飲んだと完結させてしまった。
なんと辻褄が合わないのだろうか。
だけど、この世界でも夢見る乙女が多いからこそ、ロミオとジュリエットは人気がある。
本当に、それっぽいことをやった勇太、黙って後ろを付いていく勇太ファミリーの女性にまで称賛の声が上がっている。




