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モブ顔の俺が男女比1対12のパラレルワールドに転生。またも同じ女の子を好きになりました   作者: #とみっしぇる


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176 『愛』しか理由が思い浮かばない

勇太は、パラレル勇太の責任を取るために、不名誉な称号が付く覚悟で行動をした。


梓、ルナ、カオルは勇太に惚れ直した。


過去の自分の過ちの精算、梓と異母姉妹達を傷付けないためとはいえ、危険な賭けに出た。


そうする前に、きちんと自分達に相談して謝ってくれた。


自分の未来ではなく、自分の未来の家族を心配してくれた。


それで十分だった。



十分と思っていない人が沢山いる。


いや、勇太のことが理解できないと言った方がいい。


焦点になっているのは『動機』だ。


勇太の非公式ファンクラブ員などが、早くも情報を仕入れている。


『男子絡みの調停マニア』という、前世の裁判の傍聴マニアの仲間みたいのがいる。


マニア仲間の情報網で、正確な情報をつかんでいた。調停で勝つと思っていた勇太が、優位性を捨てて負けを選んだ。


なぜ捨てた。


ここは男女比1対12の世界。


『マカド』相手に今回の案件。勇太は慰謝料を請求すれば三桁万円の後半は軽くもらえた。


人気男子を弾いたことへのマイナスイメージを回復せねばならない。

その誠意も示したことを金銭で上乗せすれば、四桁万円も楽勝だっただろう。


それを捨て、勇太は不名誉な調停の負け履歴まで付けた。


何かを守ったはずだ。


妻の梓と間門家の異母姉妹達との絆?


人気の男子が、あえてリスクを背負うには動機として弱い。


得られるものがなさすぎる。



勇太はパラレル勇太のけじめを付けた。彼の中では重いものだが、誰もそんなことは知らない。


すると、ひとつの可能性が浮かび上がった。


この世界の女子からしたら、まさかの理由すぎた。


◆◆

11月11日、月曜日。


◇以下、吉田真子主観◇


調停の前の日、勇太君には電話をもらっていました。


「調停の場で少し予定になかったことをやる。驚いて嘉菜さんが何か言おうとしたら、止めてほしいんだ」


「何をやるの?」


好きになった男子の真剣な声。息を飲みました。


「内容は言えない」

「それって・・」



「しっかり自分の責任を取って、ただ委員長や嘉菜さんを守りたい」


ドキッとしました。せ、責任?


私を守るって・・いや、嘉菜さんもだけど、どういう意味で・・


混乱したけど承諾しました。もちろん嘉菜さんには内緒にしました。


調停当日、勇太君が何を言い出しても大丈夫なように身構えていました。


けれど結果として、私の読みは甘かったです。


予想では、間門側から解除申請されたあと、勇太君が何かを提示すると思っていました。


例えば人気が出そうな歌を無償提供するとか。そうやって遺恨がないことを示すかと思っていました。


社長・彩奈さんの秘書をやってるミユキ母さんとも話しました。


『マカド』の企業ダメージは瞬間的に大きいけど、勇太君が敵意がないことを示してくれれば、回復も早い。


そこが限界かと思っていました。


けれど、ふたを開けてみたら、彼は自分だけが傷を負うことを選びました。


本当に驚きました。事前に何かすると聞いていたから、ギリギリで対応できました。



今朝も学校で理由を聞きましたが、過去の清算としか言ってくれませんでした。


嘉菜さんとも話しました。


意見が一致しました。


やっぱり、私達には理由がひとつだけしか思い浮かびません。


調停の前から、嘉菜さんと2人で勇太君に会いに行くと、以前より柔らかな笑顔を見せてくれるようになっていました。


そして、責任とは・・何に対しての・・。まさかの・・


けれど、あの捨て身の行動から理解しろと、いうことだとしたら・・


それが、あまりにもおこがましいというか、私ごときが口に出していい言葉ではありません。


期待と、それを勘違いだと否定する心。


気持ちが高揚したまま、きょうもパラ高2年3組で授業を受けています。


月曜日なのに、伊集院君が登校しています。勇太君が心配で来ました。


放課後、勇太君がルナさんと部活に行きました。


伊集院君のところにクラスメイトと一緒に集まりました。


嘉菜さんも自分の学校を早めに出て、2年3組に入ってきました。



伊集院君から笑顔が消え真剣な面持ち。


「真子君、嘉菜君、経緯を聞かせて欲しい」


そうです、彼も勇太君の行動が理解できないのです。


彼も勇太君に電話をしたけど、私と同じことを言われたそうです。


やっとできた、普通に話せる同性の友達。大切にしているのです。


・・・・


「そうなんだ真子君、嘉菜君。間門さんの方からは、勇太君に対して誠意を見せようとしたんだね」


「はい。慰謝料も用意していました」


「そうなの伊集院君。大っぴらには言えないけど、勇太君に迷惑をかけないことになってたの」


「・・そこをあえて、勇太君が負けを選んだか」


伊集院君の表情が、ふいに緩みました。そして私と目を合わせました。


私はドキッとしました。いえ、伊集院君に対してときめいた訳でなく、考えを読まれた気がしたのです。


「今回の結果で勇太君と彼のファミリーは何かしら損する。間門家の大人たちは心に傷を残した。それでも勇太君は守るべきものを守ったよね」


ドキドキしています。


「ふふ、真子君、もう答えは出ているんだね」



「け、けど、そんなことのために・・」


「それしか思い付かない。今回のポイントは、真子君と嘉菜君も付き合い始めたこと。勇太君に取って大切な2人が間門側にいた。そこから導き出される結論は・・」


心の中で、伊集院君やめて~~と叫ぶ自分。むっちゃ期待してる自分がいます。



「真子君と嘉菜君への『愛』しか思い付かない」


あ、伊集院がドヤ顔だ。


嘉菜さんが、口を手で押さえて涙ぐんでいます。


きゃ~、きゃ~、きゃ~とクラスメイトが声を上げて、気が早い祝福をくれました。


伊集院君が肯定してくれた。


私の勘違いじゃなかったんだ。


◇◇


思い切り勘違いである。


しかし勇太の外堀は埋まっていくし、勇太も嘉菜からの好意を自覚した。



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