150 ナチュラルハーレム野郎
原山良作さん72歳の話を一旦は聞き終わった。
勇太は思った。こんなに笑ってるけど、原山さんは子供時代から大変な目にあったんだと。
お母さんを亡くした直後に逃亡。
そしてパラレル市に来て心を許せる依子さんと出会えた。だから、悲しみを抱えた上に、大変なことがあっても笑えたんだろうなと。
すべてを笑い飛ばせる力はすごいと思った。
「ん?」そして疑問が沸いた。
話を聞くと、この人は女性を拒んだ訳ではない。パラレル勇太に悪影響を与えた、あの一言はなんなのだと。
優しい反面、何かを思い出して女を冷酷に拒絶する目。あれにパラレル勇太があこがれた。
「原山さん、ひとつ聞いていいですか」
「何でも聞いてくれ」
「すごく前に『女にガツンと言うときは言うんだ』って原山さんに言われたんですけど。あれは?」
「ああ、勇太が誤解したのは、そのへんか、説明が足らんかったか・・」
◇再び原山老人の回顧
パラレル市では俺の周囲に、俺を狙う怖い女もいたけど、基本的にはみんな優しかった。
俺がパラレル市に来て4年。15歳になった。結婚できる年齢だ。
俺を助けてくれた依子達5人に、何か礼をしたいって言った。そしたら同じ日に嫁にしてくれってさ。
こっちも願ったりかなったり。
俺が16歳になったら6人で籍入れようって約束した。
婚約者の家族も一同に集まって、内々のお祝いをしてくれた。
とりあえず、嫁5人が高校を出るまでは別居とか、高校に出す結婚証明書の取り方。先に子供ができたときの休学手続きの話しとかしてた。
婚約者のひとり春美は、お袋さんが市役所勤め。すげえ制度に詳しかった。俺の本籍地移転の手続きも、この人がやってくれた。
俺が故郷の人間に直接なんもされてねえから訴えたりできねえけど、親戚筋とも絶縁できた。
これからの話題で和気あいあいとしてた。
そんな話しで盛り上がってたら、依子に言われたんだ。
「良作のお母さんに、きちんと報告したい。遺骨があったら引き取りたい。お墓も作りたい」
俺が避けてたけど、無視しちゃいけねえもの。
俺はトラウマでもある故郷の村を避けてきた。
やっぱ故郷が怖かった。
それ、依子達も分かってくれてて下準備はできてた。
なんと完全武装で故郷に行ったよ。
役所のマイクロバスが出て、保護されながら故郷に向かうことになった。
俺、婚約者5人。そんで厚生省の役人さんと、まさかの銃を持った機動隊の男性救出部隊の人が3人付いてきてくれた。
婚約者春美のお袋さんが、厚生省の支局に行って、俺の生い立ちを明かして打ち合わせてくれた。
反応が早くてびっくりだ。
銃なんて物々しいと思うだろうが、俺個人の問題だけではなくなってた。
すでに俺の故郷は男子に対する性行動強要の疑いがあって、機動隊の人は偵察係の人も紛れてた。
村長が極悪人なのかって? ・・
歴史とか学んでいったら、そんな風には思えなくなってきてた。村長の一族だって、ただでさえ男が減った村で人を減らさないことが先祖代々の命題だ。
本人からしたら、江戸時代には合法でもあった、長く続く風習を守ってただけなんだろう。
自衛でもあるんだよな。
故郷から4つ山を越えた村で起こった事件があるんだ。発覚は18年後だ。
そこの村長は、昭和24年の段階で男子解放を村人に呼び掛けた。
先が、きちんと見えてたんだな。
なのに古い人間だらけの村人に殺されて、行方不明扱いにされてた。俺の故郷の村長はそれ知ったこともあって、風習継続を決めたらしい。
俺個人の気持ちは、亡くなったお袋の思いがある。だから、男子レンタルはマイナスな制度。
だからって、男が減り始めた当時の人達がどうすりゃ良かったんかね。
どう忘れたくたって、俺はあの村で生まれた人間。何度も考えたね。
ま、彼女5人に懇切丁寧に勉強教えられて、足し算、引き算、かけ算九九で止まってる俺だ。
江戸時代の高名な学者、明治時代を作った人達も答えを出せんかったことに、俺が名案なんで出せねえ。
故郷に向かうバスの中で眠ったら、うなされてたらしい。起きたら婚約者の1人が抱いてくれてた。
高速道路から山道に入って、車で4時間。
俺の逃亡劇に3日近くかけたけど、ぐるっと電車で日本半周しただけで、意外と故郷の近くに居着いちまってたんだよ。
あはは。
村に入ると、一直線に寺に行った。




